第17話 討伐依頼とアドバイザー

 そんな事を考えていると、店主は続けて、


「これらのユニークを狩れば、ここに書かれている金額の懸賞金が与えられる。ユニークの魔物にはコアがあるからそれを持ってこい。個人の依頼もたくさんあるぜ」


 店主は棚の下から紙切れを何枚か取り出してテーブルに置いた。


「ここまで辿り着けたんならここらの依頼なら楽にこなせると思うぜ」


 俺は、テーブルの上の依頼書をまじまじと見つめていると、魔子さんは紙切れを手に取り吟味し始めた。


「なにか良さそうな依頼あるかな?」


「そうね……」


 いくつかの依頼書に目を通し、悩んでいると


「面白そうな話してるじゃない? 旅の人?」


 隣でワインを嗜んでいた赤毛でロングヘアな巨乳なお姉さんが身を乗り出して、俺に顔を近づけて言った。


「ここ、初めてならお姉さんが教えてあげよっか?」


「え? あ……えっと……」


 美人なお姉さんの大きな胸が目に入り、俺は戸惑いを隠せなかった。お姉さんはニコっと笑って、続けた。


「この酒場の依頼を受けるなら最初は討伐が良いわよ。ほら、これとか」


 お姉さんは俺の耳元に口を近づけてそう言うと、依頼書を覗き込んで手にとって差し出した。


「あ、ありがとう」


 ふっくらとした感触を肩に感じる。まずい。落ち着くんだ……素数を数えて落ち着くんだ。素数は一と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……今度は確かに、ふっくらとした感触を肩にむにゅりとあった。二・・・三・・・六・・・。いや、違う五だ。


「あ……」


 俺は声にならない声を出しながらそれを受け取ると、魔子さんが割り込んで言った。


「あなたアドバイスはありがたいんだけど、距離が近いわよ。離れなさいっ!」


 魔子さんは腕を伸ばしてお姉さんを隣の席に押し戻した。


「あら、あなた。このお兄さんとどういう関係?」


「私は破魔魔子。彼と一緒に旅をしてるのっ。あなたは?」


 魔子さんが声を荒げてそう言うと、


「そうなのね。私はサニーレイン愛魅。この酒場で依頼主をやってるの。よろしくね」


「俺は小鳥遊遊人です。よ、よろしくおねがいします」


 俺がかしこまって返事をすると、お姉さんはフフッと笑って言った。


「この酒場ね沢山の依頼があるけど、割りに合わない依頼もたくさんあるわ。例えば、依頼の中でも凶悪なモンスターの討伐の依頼。ユニークの討伐は報酬が高いけど、とっても強いの。最初はかんたんな依頼からこなすべきね」


「あ、色々と有難うございます」


「当然のことをしただけよ。またここで会えると良いわね」


 ニコっと笑い、続けて、


「あなたに精霊の加護がありますように」


 と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る