第19話 盗賊少女と盗まれた杖

「これいくらで買い取ってもらえるかな?」


 俺たちが酒場に戻ると、ちょうど、青髪の盗賊少女が杖を査定してもらっていた。


「あーー! あの盗賊女ー!」


 冒険者ギルドに入ると、間違いなく盗賊少女がそこにいた。


「ここに来て正解だったわね。ここであったが百年目よ。もう許さないんだから!」


 そういうと、彼女は盗賊少女に駆け寄ると少女の首根っこを掴んだ。


「あなた、私の杖を盗んだでしょ! 返しなさい!」


「ひっ!」


 青髪の少女は怯えた表情をしている。


「ご、ごめんなさい~!」


「お嬢ちゃん。そこらへんにしといてやってくれ。この娘はちょっとワケアリでね」


 酒屋の主人はそう言って、続ける。


「この娘、私の大事な杖を盗んだのよ。許せるわけないでしょ」


「すまないね。お詫びにと言っちゃなんだが……今日の飲み食い代チャラにしとくよ」


 主人がそういうと、魔子さんは目を輝かせて


「飲み食い代チャラですって!? 」


 鬼のような形相だった魔子さんの表情は笑顔となり、この騒動は幕を閉じたのだった。


「そうだ。自己紹介まだだったよね。俺は小鳥遊遊人。勇者をやってるんだ」


 俺達は酒場の席に着くと、俺は盗人の少女に声をかけた。


「え、お兄さん勇者なの?」


 訝しげな表情をして少女は言った。


「うん。そうだよ」


「とても勇者のようには見えないんだけど……」


「俺自身もまだ実感がないんだけど……勇者だよ。ほら、勇者の剣もあるし」


「ホンモノ?」


「本物だよ」


 少女はまじまじと剣を見つめている。


「龍滅刻印!? 本物の勇者さんっ!?」


 少女は目を点にして驚いている。


「まあ、そうなるのかなぁ。魔子さんも自己紹介してよ」


「はいはい。私は破魔魔子。魔法使いよ」


 魔子さんはそう言うと、少女はまじまじと魔子さんを眺めている。


「これは賢者の杖。魔法使いしか使えない代物よ」


 魔子さんはそう言うと、少女はまじまじとこちらを見て言った。


「へぇ~珍しいね。私はハッピーエアー風花。盗賊だよ」


「で、あなた、どうしてこんなことをしたの?」


「義賊が、悪人から金品を奪うのは当たり前だ」


先程とは打ってかわり、ふてぶてしい態度で風花は言った。


「私達が悪人に見えたっていうの!?」


「ひゃっ!」


 魔子さんがドンとテーブルを叩くと少女は驚いて、俺の方へと身を寄せてきた。


「よ、よそから来た人は悪人と相場が決まってるぅ……」


「誰が悪人ですって!?」


「遊人さん……この人こわい……」


「誰のせいで怒ってるのか分かる?」


 さらに少女は俺に身を寄せてくる。


「魔子さん。落ちついて。彼女のおかげでこうして食事にもありつけたわけだし……」


「あら、あなた。風花ちゃんのお知り合いだったのね」


「あ、亜美!」


 後ろを振り返ると、そこには以前、酒場で色々とアドバイスをくれたお姉さんが立っていた。

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