第8話 未知の地

「これからどこを目指せばいいんだ?」


 俺は照道に尋ねる。


「ここから東に村がある。そこで情報を集めると良い」


「なるほどな。じゃあ東に向かうか」


 俺がそう言うと、魔子さんが口をはさむ。


「東にある村って……確か、ウォッカ村だったわね」


「ああ。道案内するよ」


 照道はそう言って、東に向かって歩き始めた。暫く歩くと、スライムの群れが見えた。


「魔物の群れか……肩慣らしにちょうど良い」


 照道は少し先に見えた魔物の群れがこちらに向かってくるのを確認し、照道は鞘から剣を抜き、臨戦態勢に入った。俺もそれを見て剣を鞘から抜いた。


「風よ――あれ?」


 魔子さんは杖をまじまじと見つめている。


「魔法……使えなくなっちゃった……ど、どうしよう?」


 魔子さんは明らかに動揺している。


「お嬢さん。あれだけの上位魔法を使っていたら魔力切れを起こすのは必然だ」


 昭道はスライムに素早く斬りつけた。


「はッ!」


ピ、ピギーッ!


 俺は両断されたスライムを見て言った。


「天才の名は伊達じゃないな」


 残りの二体にスライムの内一体はぴょこぴょこと魔子さんの方へと向かい、もう一体はこちらに飛びかかってきた。


ブンッ!


 反射的に飛びかかってきたスライムに斬りつけると、スライムは真っ二つになった。


ピ、ピギーッ!


「ど、どうしよう。ちょっとあんた達みてないでたすけなさ…‥」


 スライムは狼狽えている魔子さんへと飛びかかった。魔子さんはスライムの攻撃を腹部に受けた。


「きゃっ!」


 魔子さんはスライムの攻撃を受け、転倒した。


「っちょっと、なんかベトベトするし、最悪〜」


 魔子さんとベトベドになったスライム。うん。このシュチュエーション悪くないな。ちょっと放置しとくか。


「ちょっと〜。たすけなさいよ〜きゃっ!」


 スライムは執拗に魔子さんに襲いかかる。


「魔子さんっ!」


 流石に放ってはおけないと俺はスライム向かって駆け出した。


「彼女は魔力管理の重要性を理解していないみたいだ。少し痛い目を見たほうが良いかもしれない」


 昭道はそう言って、俺を引き止め、刀を鞘に収めた。


「あなたたち〜後で覚えておきな…‥んっ……あぁ〜もうっ! きもちわるい!」


 魔子さんは杖を取り出してスライムにガンガン叩きつけている。


「あの杖の使い方、絶対間違ってるよな昭道?」


「ああ。だが、それも正しい判断だ」


 昭道は冷静に魔子さんの状況対応力を分析しているのだった。


「あぁ! もうっ……はやく、やられなさい!」


 杖を全力でスライムに叩きつけるその姿はもはや魔法使いのものとは考えられなかった。そこには狂気があった。狂戦士魔子と言ったところだろうか。というか、またパンツ見えてるなこれ。


「なんで魔法使えなくなっちゃったのよ〜!」


 杖をガンガンとスライムに叩きつけながら魔子さんは嘆いていた。


ピギーッ……


 長い戦いの末、スライムを倒した後、


「あなたたち、なんで助けてくれなかったのよ‼」


 魔子さんはぬるぬるだらけの姿になりながら、こちらへ怒りの矛先を向けにきたのだった。


「助けようと思ったんだけど……」


「思ったのなら行動に移しなさいよ!」


「お嬢さん。魔法使いが魔力切れを起こすってのは死ぬという事だ。魔力管理の重要性。わかったかい?」


「あなた何様のつもり? ほんっと最悪。覚えときなさいよっ!」


 魔子さんはそう言って、昭道をギロリと睨みつけてから、村へとすたすたと足をすすめるのだった。


道中、昭道は血の気が引いた顔をしてずっと、押し黙っていた。何か悪い未来が見えたのだろうか。村へと足を進める途中、何度か魔物と出くわしたが、昭道の剣術と俺の勇者の剣で撃退し、難なく村に辿り着いた。

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