第21話 盗賊少女と長い夜
どれほどの時間が経っただろうか。ズシリと、布団越しに重い衝撃を感じた。
「うわっ!」
驚いて飛び起きると、そこにうるうると涙目になっている風花の姿があった。
「えっと……どうしたの?」
「出てけって言われたから……」
「え、魔子さんに?」
「……うん」
風花と魔子さんの気が合わないのに一緒の部屋にしたのは俺のミスだよなぁ。
「分かった。このベッド使っていいよ。俺が魔子さんの部屋に行くよ」
俺はそう言って、風花を残して部屋を出て魔子さんの部屋へと向かおうとすると、後ろから引っ張られるような感覚があった。
振り向くと、風花が俺の服の裾を掴んでいた。
「えっと……」
「ここにいて……ほしい」
そう言って、涙目で風花は言葉をたどたどしく紡ぐ。滅茶苦茶上目遣いで可愛いんですけど、いや雑念を振り払え。断るんだ。いや、これは断れない。無理。不可能だ。
「分かった。じゃあ、俺は床で寝るからそのベッド好きに使っていいよ」
「……一緒がいい」
「い、いっしょ?」
「うん。二人でも寝れるよ?」
「それはわかるよ。うん。でも、男女が同じベッドで寝るというのは、なんというか魔子さんにバレたらただ事じゃないというか」
俺らあって初日だよ。初日。何この展開。なんてエロゲ? 俺、今日寝不足確定。これ、夢だな。おかしいなぁ。疲れてるのかな。よし、ほっぺたをつねろう。痛い。うん現実。
「ダメ?」
「寝れるけど、ダメなんだ。俺ベッド二人寝恐怖症だから?」
「ベッド二人寝恐怖症?」
断る理由思いつかなくて変な病気作っちまったよ。もう、おしまいだよ。そんな病気ねえよ。モルダーばりに疲れてるよ。俺。
「で、魔子さんと何があったのさ」
「あのね……」
話を聞くと、深夜に武器類の手入れをしていたら、手が滑って武器類を床にぶちまけたらしい。で、魔子さん起きて、大激怒したと。うん。過失割合ジューゼロで風花が悪い。
「なるほどね。武器の手入れ大事だもんね」
俺はうんうんと頷いて言った。
「風花ね。明日の討伐依頼に備えて武器手入れしてたんだよ。でも出てけって……」
風花は涙目でことばをたどたどしく紡ぐ。うん。やっぱり風花悪くない。
「風花ちゃんは悪くないよ。魔子さんに俺から、怒鳴っちゃだめだよって言っとくからさ」
とは言ったものの、過失割合ジューゼロだし、難しいだろうなぁ。
「うん……ありがと」
風花はそう言うと、疲れたのか目を閉じて眠りへ着いた。俺は結局床で寝ることにした。今日は寝不足確定だな。俺はそんな事を考えながら眠りへつくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます