第22話 最悪の目覚め
「おきて……ねぇ起きて」
目を開けると、美少女。これは夢だな。窓から差す光が眩しい。再び目を瞑ると、ゆさゆさと体を揺さぶられるような感覚。
「おっきろー!」
「のわっ!」
身体に重い衝撃を感じて飛び起きると俺のお腹の上に楓花ちゃんが飛び乗っていたのだった。
「何してんだよ」
申し訳無さそうな表情の楓花と目が合う。
その瞬間ーーー勢い良く部屋の扉が開いた。
「あなた達、起きなさい! って、そこで何してるのよ!」
「いや、魔子さんこれは誤解……」
「ほんっと、馬っ鹿じゃないの!」
そう言って、魔子さんは扉を力強く締めたのだった。
「魔子さんどっか行っちゃったね……」
朝から最悪の展開である。
「風花ちゃん。とりあえずそこをどいてほしい。今すぐ。早急に」
「うん」
風花に悪気はなさそうだ。前途多難である。
「俺は頭が痛いよ」
「おくすり……必要?」
「いや、薬は必要ないよ」
風花は心配そうな瞳で俺を見つめている。そしてコクリと頷くと、タタタタと走って部屋を出ていくのだった。
「おいおい。薬探しに行ったんじゃないだろうな」
変な薬飲まされたら溜まったもんじゃないぞ。
「おくすり……」
おー。滅茶苦茶速い。最初から薬飲むの想定してたみたいに。流石、盗賊。突如、緑の液体の入ったコップを持った楓花が目の前に姿を現した。
「いや、俺は、大丈夫……ほらこの通り!」
俺はガッツポーズをして元気さをアピールする。
「いいから、飲んで」
風花はそう言うと、謎のコップに入れられた飲み薬を俺に差し出す。
「ええっと飲まなきゃダメ?」
そう言うと、風花ちゃんはコクリと頷いて、コップを差しだした。
「……ええい。ままよっ!」
覚悟を決めて飲みはじめたが、草のような味がする上に、とんでもなく苦い。お世辞にも美味しいとは言えない。というか飲みきれる気がしない。
「美味しい?」
「すごく独特な味がするよ。大草原を感じる。目が覚めたよ。ありがとう」
お世辞にも美味しいとは言えないが、目が冷めたのは事実だった。
「よかった……」
何が良かったのかわからないが、問題は山積みである。
「さて、魔子さんにどう説明しようか」
俺はそう言うと、魔子さんと合流するべく、宿屋の主人の元へと向かう。風花は俺と付かず離れずの距離で後ろからついてくるのだった。
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