第2話 魔物との遭遇

はぁ……こいつは前途多難ってやつだな……


 俺は大きなため息を付いて西の洞窟へと向かうのだった。


「西の洞窟に何があるんだろうな」


 村を出て西の草原へと足を進めると、草原から何が緑の物体が飛び出した。


「うわっ」


 目の前には緑のゲル状の物体に目が2つつけたおぞましい生物。


「スライムよっ!」


 おぞましい生物に対して杖を向ける魔子さん。


「何か武器は……武器はないのか……くそっ棒切れしか無い!」


 右手に棒切れを構えて俺は臨戦態勢をとった。


 その刹那……


ピギーッ!


「うわっ!」


 スライムは甲高い声を上げて飛びかかってきた。


ブンッ!


 反射的に剣を振るとぐにゃりとした感覚を右手に感じた。と、同時に


ピギャァアアアアア!


 声にならない声を上げてスライムがぽてりと垂直に地面に落下した。


「やったのか?」


 警戒しつつ、地面に落ちたスライムを倒したのかどうかを棒きれで確認すると、グニャリとした感触があるだけで動くことも声を上げることもしなかった。


「みたいね。さすがね。遊人くん」


 魔子さんは杖の構えを解いて続ける。


「どうやら私、今の戦いで魔法を覚えたみたい」


 そういえば倒した時に何か不思議な感覚があった。戦闘によって身体能力が上がったのだろうか。


「魔法?」


「そう。魔法よ。試しに唱えてみるわね」


「そうだな。魔法は心強……」


と、俺が言い終わる前に彼女の口が素早く動いた。同時に目の前数センチ先の空間がぐにゃりと歪んだ。


バサリッ


 気がづくと、目の前約二メートル範囲の全ての草が鋭く刈り取られ、草の束が地面に散乱してた。


「えっ……」


「はぁ……風の呪文かぁ。もっと派手な呪文がよかったなぁ……」


 魔子さんはがっかりした表情で装飾物のついた杖を見つめて呟いた。


「数センチ前にいたら、この草と同じ……」


いやいやいやいやいや。ちょっとまて。まて。まて。この呪文はやばい。威力やばい。


「ちょっとまって。これ、数センチ先にいたら俺この草と同じようにバサリときれてたんですけど、村から出て数分でもう屍だったんですけど、十分派手なんですけど! 対して俺は棒きれなんですけど!」


「驚かせちゃってごめんね。でも、遊人くんを殺すつもりはないから安心して」


「今さらっと物騒なこと言った気がしたんですど! 勇者より魔法使いのほうが圧倒的に強いんですけど!」


 俺。もう勇者やめていいかな。魔子さん勇者やってくれないかな

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