番外編 脱獄囚


「……話せ」


青い服を着た男は椅子に座って、コーヒーを飲む。

資料を持って、男に呼ばれた者が口を開く。


「はい、脱獄者は3名。

普通囚人房から1人。厳重囚人房から2人。

普通囚人房からはソラ。

厳重囚人房からは暁斗、キングです」


椅子に座っている男の目が見開いた。


「やはり、か。

しかし、よりにもよってヤツとは。

オルゲイ所長がいなくなったタイミングで」


それは、驚愕からか。

男が立ちあがろうとした時、隣にいた男が、彼に話しかけた。


「なあ所長代理、キングってのは何者なんだ?」


「そうか、カルナお前は知らなかったな。ちょうど良い、教えてやる」


カルナと呼ばれた男は、疑問を上司にぶつけた。

すぅっと深呼吸をして、コーヒーを少し口に含んで、話を始めた。


「厳重注意の最恐。アレは所長が自ら捕まえたヤツだ。

世界転覆を図る、ろくでなし。

いや、そういう思想を持つヤツならここに腐るほどいるか。

とりわけその中でもヤツには実力があった。

本気を出せば、世界を変えることすら可能な力を持っていた」


それだけ言って、所長代理は男から資料を受け取った。

名簿には、ある戦いが載っていた。

あの戦いで、彼らの島は多大なダメージを受けた。

実力を持った神父が死に、

所長は今、どこかにいる。

今、この島でまともに戦える者はいない。


「藤波 悠とかいうやつと、キングの関係性は無しか……。やつが神の残滓を持っていないのなら、放置でも良いのだが」


顎に手を当て、思考を続ける。

唸り声を上げて、時間が過ぎ去る。


「一応、キングの捜索を続けろ。ボスの方には俺から話をつけておく」


それだけ言って、所長代理は部屋から出ていった。


(八雲と合流される前に、なんとしてでも捕獲しなければ)


長い廊下を、1人で歩く。

焦りを感じながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る