第2話 学校

全力を出して走る。

もう間に合わないと理解してはいる。

電車で1時間の距離を通学している為、どう足掻いても無駄だと、電車に乗ってやっと分かった。

バカとしか言いようがない。

普段、通勤ラッシュの時間帯に乗っているせいか、椅子が全て埋まっているのに、空いていると勘違いしてしまいそうになる。

がたんごとんと揺れる電車。


(そういや、外の景色あんまり見た事ねえな)


そんなことを考えながら、変化していく景色を見る。

と言っても、殆どが畑な為、面白いかと聞かれたら首を横に振る。

腕時計で時間を確認する。

後30分。

景色を見るのも飽きた。

ふと、さっき見た夢の事を思い出した。

殺気とも狂気とも言える黒。

夢の事を思い出すだけで頭痛がする。


(何度目だよ……これ)


電車が停まる。

どうやら着いたようだ。

はぁ……

説教が確定しているせいでため息が出る。

高校までは駅から徒歩10分程度。

どんな言い訳にしようか考えながら歩く。

走れよと思うかもしれないが、もう、そんな気力もない。


学校に着いた。

着いてしまった。

職員室によって、自分の教室へと向かう。

担任がいた。

どうやら今は休み時間らしい。

長引くかなぁ。

遅刻したのに珍しく怒られなかった。

「早く行け」の一言だけ。

冷たすぎないか?


「あ、あと兄貴に感謝しろよー」


どうやら織が連絡を入れていたらしい。

高2にもなってコレとは、先が思いやられる。

階段を登り、教室の扉を開ける。

いつも通り、教室はがやがやしていてうるさい。

自分の席に荷物を置き、次の授業の準備をする。


「やあ、悠遅かったな。また寝坊か?それともサボりか?」


ガタイ良いのに細身。

隣の席に座りながら、話しかけてくる。


「開口一番煽りはやめろ。ストレスが溜まる。喧嘩したいなら他所でやってくれ」


「なんだよ、せっかく一番の友人である名木様が話しかけてきてるってのによー。いや、その感じ寝坊で確定だな」


見透かされていた。

ナギ様はうざい。

きーんこーんかーんこーん

チャイムが鳴った。


「んじゃ、また後で」


名木は手を振って自分の席へ戻って行った。


18時

ホームルームも終わり、下校の準備をする。

部活動には所属していない。

帰宅部ってやつ。

名木も帰宅部だが、クラブチームに所属している。

電車が来るまであと小1時間はある。

あそこにでもいくか……

学校を出て近くの、少し古びた商店街へと向かう。

少し前の時代、バブルによる好景気。

好景気によって田舎であるここも、商店街やマンションなどが建てられた。

しかし、それも過去の栄光。

バブルの崩壊と共に、マンションは不動産が倒産して管理が行き届かなくなり今では廃墟。

商店街は2年前ぐらいまでは持ち堪えていたが、大型のショッピングモールなどによって潰された。

商店街の中を進んで行く。

殆どの店がシャッターをしめている。

目的の店に着いた。

旅人店と書いてある看板は今にも崩れ落ちそうだ。

そんな事を気にしながら店に入る。

中には、古びたモノ達が沢山ある。

年代を感じる物、使用済みの物、

ここはいわゆるジャンクショップ。

俺の唯一の楽しみだ。

お宝がないか物色をする。

すると、アンティークといえる古びた腕時計があった。

レジへ持って行きく。

金髪の店主。

本人曰くイタリア人らしい。

古びた腕時計を購入し、駅へと向かう。


電車を降りて家に帰る。

丘上にあるため、足腰が悲鳴を上げる。

玄関を開け、リビングに荷物を置く。

織と暁人がいた。

両親が亡くなってかれこれ7年。

原因は事故。

なんとかやっていけている。


「う……」


溜まっていた疲れがどっぷりと襲いかかる。


「悪い……先に寝る」


そう言って部屋に入る。

ベッドの暖かみと、疲れのダブルパンチ。

俺は気絶するように眠った。

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