第20話 原因と結果


「……ぁあ」

「起きろ、オルゲイ」


オルゲイと呼ばれた青年。

辺りを見渡した彼は、目の前に立つ少年をジロリと見た。


「貴様が寝坊だとはな。なんだ?傷が止まんのか?」

「多少は……いえ、申し訳ない」


少年は左目に眼帯をかけており、腰には銅の剣を帯刀している。


「そう畏るな。俺はあくまでも部外者だ。メインは俺では無い。だから、敬語はやめろ」

「そう……か。それよりも何処いずこだ?」


シングルサイズのベッドから、上半身を起こす。

彼自身の体に、40を超える包帯が巻かれていた。


「知らん。生憎と、は1人で何かをしているようだ」

「なら、ボスに言っておいてくれないか?ありがとう、と」

「了解だ」


立ち上がり、部屋を出ようとする少年。


「あと一つ」

「なんだ?」

藤波がきはどうなった?」

「……あー。詳しいことは俺の口からは言えんが、まあ、お前は知る権利があるしな。。それ以上でもそれ以下でも無い」

「……解った。ありがとう契約者」


背を向けて、右手を挙げる少年。

今度こそ、少年は部屋から出ていった。

1人、部屋に残されたオルゲイ。

ヴォーティガーンにやられた傷は、未だ痛む。


「もう一眠りするか……」


小さく呟いて、また、床につく。

単純な出力だけなら最強の魔力『黒』

それを、正面から乗り切ったのだ。

魔力が回復しようと、傷が癒えようと、治らないモノを、押し付けられた。




「大丈夫でしたか?」

「あぁ。未だ傷は治ってはいないが、意識は問題無い」

「そうですか。それなら良かった」

「て言うか、わざわざ俺に行かせるのではなく、お前自ら赴けば良いものを」

「む……本当は私もそうしたかったのですが……」

「荷が重すぎるってか?お前、自分がボスであることを忘れているのか?」

「いえ、そういうわけでは無いのです。ただ……」

「ただ?」

「申し訳ない、その一心が彼と会うのを拒むのです」

「はぁ?意味が分からん」

「分からなくて良いです。いずれ、貴方も解ると思いますが」

「お前より何千年長く生きて一度も無いんだ。多分一生ねぇよ」

「そうですか……残念です」


悲しそうに、ボスと呼ばれた男は微笑う。

えらく豪華な椅子に座り、巨大なテーブルに肘をつけていた。


「本題に入りましょう。今後の方針についてです」

「ナインズの所有者は把握した。後、未発見なのはヤクモとナムヤだけか」

「はい。フォーサー、ファブラーそして、ニブラーはこちらが回収しています」

「残る残滓はファスター、スリード、ミロク、ナムヤ、ヤクモ、ナインズ、そして」

「今回のイレギュラー、

「面倒だな。軍神相手にした時みたいな怠さを感じる」

「それだけで済むのなら、マシというもの。貴方には頑張ってもらわないといけないですから」

「はいはい」


少年は感情を表さず、ずらりと並べてあった資料をじろりと見ていた。

何処か気になる点があるのか、小さく唸り声を上げている。


「ナインズと零事に関しては、後回しで良いだろう。ファスターは研究所を潰されて、力をつけることはまずないだろ。ナムヤ、ヤクモは論外として……どうするか」

「スリードの所有者はナインズと零事の二つと繋がっている……」

「となれば、消去法でミロクか」

「ですね」

「方針は決まったな」


ふと、少年は立ち上がり、ニィと笑った。


「善は急げだ。速攻で終わらせてやる」

「ええ。期待していますよ。我が契約者」









「くくく……あっはっはっはっは!!」

「よもや、我を見逃すとは、舐められたものよ!」

「いや、だが好都合だ。なぁ、?」


「はい。我がマスター。必ずや、貴方の目的は果たされるでしょう」


「そうか。そうか。くくく」


「あっははははは!!」


狂気に塗れた少年は、密かに嗤う。

高らかに、復讐の鐘を鳴らす。

それは、誰も知らぬ終焉。


「さぁ、世界よ。刻は近いぞ!!」

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