第17話 1000回やって出直してこい


「はっや」


取り残された3人はただ、立ち尽くしてした。

一度、ソラは悠の方向を見て無言で、走り出した。

数秒経って風が巻き起こる。

置いて行かれてしまった。


「お前、その髪は……」


ふと、マルクが口を開いた。

それは、悠本人ですら気づくことのなかった変化。


「……なんだ、これ」


一部だけではあったが、髪が

銀による弊害では無い。

一本だけ抜け落ちて、悠の手のひらへ。


『魔力の弊害』


「……ッ!」


頭痛がして、頭の中に文字が浮かぶ。

言葉じゃ無い何か。


「大丈夫か?」


「あぁ」


頭を抑えて、心配したのかマルクが声をかけた。


「?」


身体が軽い。

あの時よりもずっと、早く動けそうだ。

最低限、体を伸ばして低い姿勢をとった。

それは、クラウチングスタートの体制だった。


「あ」


「?」


走ろうとした瞬間、マルクが思い出したかのように言葉をこぼした。


「……思い出した」


「なにが」


悠の言葉と共に、彼は自身のポケットをごそごそと漁り出した。


「あった。ほら」


言いながらほいっと小さな長方形を投げた。

悠がキャッチして、深く凝視する。

それは、注射器のようなものだった。


「なんこれ」


最もな疑問を、悠は彼にぶつける。


「アンプルだ。あれだ、よくゲームとかであるだろ、ああいうのと大方同じ」


「刺すってこと?」


「そう。ただ勿論デメリットもある」


歩きながら、マルクの説明を受ける。


「これは陳謝をに上昇させ、肉体を回復させる。

ただ、それはあくまでも一時的なものだ。それが終わればフィードバックとして、全身に激痛が走る。

そりゃもう、のたうち回るぐらいにな」


ポケットにしまって、片腕をブンブン振りながら、悠は走り出した。

数秒で地平線から消失してしまった。


(ヴォーティガーンを顕現させた反動にしては小さ過ぎる。それも2度だぞ?一度ですら人1人の人生全て使って数秒とかのはず。

40年前のアレは例外としても。

それこそ、反対の力が無いとアレで済むなんて不可能だ)


そんなことを、1人になったマルクは考えながら、何処からともなく小さな機械を取り出した。

それは、模型。

小さな部品まで完璧に再現されたバイクの形をした物。

それを、マルクは丁寧に地面に設置した。


「荒事は、あんま好きじゃ無いんだけどなぁ」


言って、彼は手のひらをバイクの模型に向けた。


「ビアス・フォーサー」


最低限、唇を振るわせた。

刹那、バイクが巨大化した。

人1人乗せれるぐらい大きくなったソレに彼はまたがった。

ハンドルを握り、エンジンを吹かせる。


「行くか」


言葉と共に、彼を乗せたバイクは追いかけるように走り出した。

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