第12話 ニセモノ
「……」
絶句。
悠は何も喋ることができなかった。
藤波 悠を名乗る瓜二つの男。
「……初めましてだな、偽物。俺が眠っていた間、随分と有意義に過ごしたようだなぁ!!」
「!」
有無を言わさず剣を振るう悠。
死の刃を間一髪で躱し、地面を思いっきり蹴っ飛ばし、後ろに跳躍した。
10数メートルの距離。
困惑、動揺。
それらが、悠の頭を支配する。
そんなことお構いなしと言わんばかりに、地面を蹴っ飛ばし、海神叢雲を振るう悠。
「!」
力の流れを統一させ、指先に込める。
盾を作り、攻撃を防ぐ。
それだけを考えて、魔力をかき集める。
「……な!?」
なにも、起こらなかった。
黒が、これっぽっちも出ない。
悠の困惑。
剣が止まる。
黒が止まる。
(なぜ、魔力が出なかった!?)
自身の魔力が発動しなかったことに。
(なにが、狙いだ!?)
想定外の動作をされたことに。
あまりにも異常事態過ぎた。
だが、狙いを遂行される前に仕留めれば良いだけのこと。
悠が地面を蹴っ飛ばし、跳躍を開始。
魔力が使えない悠にとって防ぐのは不可能だと言っても良い。
仮に躱そうものなら稲妻の如き速さの海神叢雲よりも速く動かなければならない。
どちらも不可能だ。
死を覚悟して、時を待つ。
「!」
刃が悠の手前で止まった。
透明な何かが、二人の間に挟まっていた。
「
それは、二人にとって聞き馴染みのある声。
透明な盾は、声をスイッチとして、爆発を起こす。
「ッ!舐めるな!!」
悠の魔力が爆発した。
色は白。
周りに大きく飛び散ったコンクリートの破片が、もとあった場所に戻っていった。
爆発が無かったことになった。
いや、正確に言うのなら、爆発の前に戻った。
「……ソラか」
「ッ!」
二人は、乱入者を正確に認識した。
片方には救世主として。
片方には敵対者として。
現状の戦力を測る。
──敵は二人か。
速攻で、判断を下した。
「……今日のところは、良いだろう」
ふと、悠が口を開いた。
警戒を怠らない悠に、刃を突きつける。
「次はないぞ」
それだけ言って悠はどこかへと飛び去っていった。
「……何だったんだ、あれ」
まるで災害でも見たのかと、悠の身体の力が抜けて行くのを感じた。
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