第14話
「では、行きます…ッ」
掌で両手を叩く。
ぱしんッ、と音を鳴らして神経を研ぎ澄ませる両角切。
息を整えて、自身の力を制御する。
両角切は体内に停留する流力を外部に向けて放出。
肉体から放たれる流力が地を這い出し、浸食していくと地面が赤黒く変貌する。
「
人形傀は両角切の術式に対して聞いた。
両角切は周辺の地面の変異に対して首を縦に振る。
「えぇ、最近修得しました…俺も、傀さんと同じ殿號術師ですよ」
惚れ惚れとした様子で目を柔らかく細める人形傀。
「では、その能力は、空間掌握による術理圏域と言う事か」
基本的に、祓々師は階級に応じて使役出来る能力に格と言うものが存在する。
術理に対して通常起動による使用が『士號』。
術理に対して解釈と応用によって術式を広げる『騎號』
術理を使役し更に拡張を行い式神を作り上げる『将號』
術理を拡大させ、世界そのものを己の術中に嵌める『殿號』
十邪祅との戦いの最中で、将號であった両角切は、戦いの最中で成長し、遂には『殿號』にまで上り詰めた猛者だ。
「名は?」
人形傀の質問に、両角切は合掌していた両手を離す。
それが合図になったのか、赤黒い血脈の様な地面から、複数の武器が突き刺さっているかの様に出現する。
「『
それが、両角切の術式の名前だった。
両角切の骨角術理は詳細を省いて大別的に言えば、生命から武器を作る術理である。
流力は生命から万物の源である流力を生成する。
つまり、彼の流力もまた生命であり、自らの流力を武器に変えている。
半径五メートル圏内に多量に生み出された武器は、両角切の生命によって彩られた鋼の道。
多用に使用すれば、無論、生命力の枯渇により自身も死に至る諸刃の剣でもある。
己が死に屍と化した、あらゆる敵を殺し戮し屍の山と化すか。
故に、術式名は
尤も、既に両角切は自らの術式に改良を加えている。
鞘景は、半径五メートルと言う制限を加える事で、流力の大幅消費を抑える。
更に、地面に浸透させた流力を発散させずに循環させる事で、自らが生命を落とす危険性を消した。
「では、行きます」
両角切が近くに突き刺さる刀と槍を抜き放ち、向かい出す。
彼の移動に応じ、周囲の赤黒い空間はまるで蛇の行軍の様に、彼の移動先に蠢いている。
循環させる事で、移動先に流力の空間を生み出し続けているのだ。
両角切の殿號として発動する事が可能となった異能。
両角切の接近に対して、人形傀は鞭の様にしなり、伸びる腕を両角切に向けて射出する。
人形傀の指先が刃物の様に鋭利となると、迷わず両角切の胸部を狙った。
だが当然と言った様子で、両角切は刀の峰で軽く払う。
更に地面を蹴って、接近する両角切に、腕を元に戻す両角切は後退すると共に指先から破裂する火花種を飛ばす。
「ッ!」
爆破する火種。
周囲が爆破の煙で包まれる。
「兄、これで終わりか?上位の術理が使えるからと言って、慢心する事は許されぬ、そんな事では…」
妹はやれない、と言い掛けたその時。
黒煙を割く鋭い刃が飛び出す。
それは、鎖付きの杭であり、人形傀の肉体、主に腕の部分に絡まると、強く引っ張られる。
「これで終わるワケがない、失望させませんよ、傀さん」
煙が晴れる。
両角切の手には鎖が握られていて、人形傀を引っ張っている。
その光景を目にした人形傀は微笑みを浮かべると、五指の股先から刃物を生やした。
「良し、兄よ」
戦闘続行の意思を見せつけた両角切にそう告げると、人形傀は鎖に寄せられる様に走り出した。
二人が戦闘を楽しんでいる間、何時の間にかギャラリーが増えている。
「…なーにしてんの、あの二人」
其処には、人形傀の妹も来ていた。
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