第26話
その思考は、ある意味祓々師と同じ様なものである。
ただ、術師としての適性があったから、彼女は術師になったに等しい。
「(単に才能があったからその道を進んだだけ、だって簡単に出来る道があるのなら、そっちに進んだ方が楽でしょ?)」
幼少期の頃。
東洲斎白黒は放任主義の両親の元で生まれた。
かと言って、虐待では無く、それなりの食事や移住、衣服を与えられた。
お小遣いは月額制で、歳を重ねる毎に増えていく。
誕生日にはきちんとお祝いをされたし、プレゼントも誕生日以外にはクリスマスですら用意された。
放任と言えども、それは実際の所、子供の成長の為に敢えて見逃している様な節は、成長する度に東洲斎白黒は感じていた。
それが、親なりの愛なのだと、東洲斎白黒は自然と察していた。
両親は祓々師でありながら、子供にその役目を押し付ける真似はしなかった。
だから、東洲斎白黒は自由奔放に育ったのかも知れないが、その分、楽な道に進みがちだった。
八歳の日に高熱を出して、器官が覚醒し、術理を得た時も、彼女は才能があるならばと術師の道を選んだ。
全ては楽に、楽になる為に、その為に彼女は、楽以外のものを犠牲にした。
努力も屈辱も、後の楽に至る為に進んで選んだ。
十二歳になる頃には術理を完璧に理解し、彼女は最短で将號術師となったのだ。
自分が楽になる為に、しかし。
その生き方にも限界と言うものがあった。
両親が仕事中に死んだ、今までは楽に生きて来た彼女は、知らずうちに両親が支えていてくれた事に気が付き、支えを失った事に気が付いた。
楽に生きる道が閉ざされた、歩く度に不安を抱き続けた。
道は、両親が与えてくれた、安心と言う楽は、両親が居たからこその賜物。
楽を喪った彼女は、廃人に成り掛けた。
成り掛けた、と言うのは、彼女は暴挙の権化であり、命を喪う事に頓着が無かった。
死ぬ事すら考えていた彼女の姿は、まさに暴挙と言わずしてその状態を形容する事など出来はしなかったのだ。
このまま、彼女は命を粗末にして簡単に死ぬ。
それは、彼女自身もそう納得する程までに、むしろ、そうである事を望む末路だった。
だが、高校に上がった時、其処で再び支えを得た。
両角切と、謝花蜜璃。
二人は東洲斎白黒と任務を共にし、絆を深め、二人を認めた。
両親に変わる依存先、今では自分の命を喪うよりも、二人を喪う事を恐れる。
両角切と謝花蜜璃こそが、彼女にとっての楽であるからだ。
だから、此処で立ち止まるわけにはいかなかった。
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