第30話

両角切は花に寄生された人間との戦闘を終えた後に前方を見据える。

黄色い花を咲かせた、大根程の大きさをする根っこを生やした花があった。

その花の根っこはまるで手足の様に枝分かれしていて、地面に立っている。

二足歩行を行っているその花は、両角切の方を見て喋り出す。


「みつけた、みつけた、ころした、ころした」


少女の様な声を出しながら、根っこが両角切の方に近づいて来る。

両角切は太刀童子を出した状態で鞭を構えた。


「ともだち、ころした、それ、ともだち、ゆるせない、ゆるせない」


友達。

草で出来た指を両角切の方に向けている。

いや違う、その指は両角切を指しているワケではない。

具体的には、両角切が所持している武器…。

『金剛天禁鞭』を指差していた。


「…ともだち?知性があるのか、喋り方は稚拙だが…十邪祅の一体か、だとすると」


両角切が名を口にしようとした瞬間。

即座、両角切の腹部、肩、首元に向けて小さな槍が飛んできた。

針の様に細い枝が、弾丸の様に射出されて両角切の体を貫く。


「がッ!」


両角切は勢いによって後退して、地面に倒れる。

反射する様に立ち上がろうとすると、途端に手足の痺れによって足腰に力が入らず膝を突いてしまった。


「(体に力が入らない、…神経を狂わす麻痺毒ッ)」


体に突き刺さる小枝を見ながらそう確信した。

当然、その攻撃は小さな妖精、黄色い花を咲かせる大根の様な祅による攻撃である。

しかし、黄色い花を咲かせる祅の花弁が、途端に枯れ果てていく。

ほろほろと、茶色く変色した花が枯れ落ちると、即座に蕾が生えて来て、花弁が開かれる。

今度は赤色をした花弁が生えていた。

それと同時に、両角切に向けて強力な怒りを表す表情を浮かべている花の妖精の姿が其処にあった。


「花弁の色は、怒ってるってワケか?」


体の自由が効かない両角切。

小枝から流れ込まれる麻痺毒の流力が神経を狂わせている。

だが、両角切は冷静だった。


ゆっくりと、体の自由が効かない腕を伸ばして小枝を握り締める。

そして、両角切は自らの流力を発生させる。


「(骨角術理…『創』)」


骨角術理は生命力である流力を武器に変える。

小枝から流れる麻痺毒の流力もまた、両角切の術式対象に該当される。

小枝を引き抜くと共に、小枝の先端はアイスピックの様に細長い針が付着していた。

それを投げ捨てると共に、更に一本、もう一本と小枝を抜くと共に麻痺毒の流力を武器化する。


「この程度じゃあ、俺は倒せないぞ?」


両角切はそう言いながら立ち上がると、太刀童子に武器を渡して式神術を解く。

そして、即座に両角切は流力を垂れ流し、大地に浸透させると共に別の術理を発動させる。


「『荒刃金屍道あらはがねかばねみち』」


鞘景ではない。

確実に相手を捉え、逃さない様にする為に、結界術理を発動させた。


結界術理。

殿號が使用する奥義。


自らの術理の効果を空間に作用させる事で、その空間そのものを自らの術理として使役する事が出来る。

両角切の術理『荒刃金屍道あらはがねかばねみち』は屍から武器を作り出す術理。

それに関連するものが、両角切の空間に広がる。

そして、当然。


この術中では相手が不利になる。

戦闘をする以上は、常に相手側にアドバンテージを取られる事となる。

ではどうするか、決まっている。


「『黒枯葉刃之郷くろかれはばのさと』」


対象の術理に飲み込まれぬ様に。

自身も術理を発動し、優勢を消す他無い。

殿祅級『草凪』が発動させる術理は、植物に関連する世界を強制展開させる。

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歴代最強の術師が当主になる条件が嫁を探す事だった、それを聞いた好感度高めなヒロインたちは様々なアプローチをしてくる。和風バトル、ヤンデレ、ハーレム、現代、和風、学校、現代ファンタジー 三流木青二斎無一門 @itisyou

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