第21話


今回も任務が行われる。

基本的に単独任務は滅多に無い。

予め、教師より選定された三名で行動を遵守しなければならない。

両角切の部隊は東洲斎白黒と謝花蜜璃が同じ部隊である。

今回もまた、任務が発令された為に、両角切たちは県外へと移動していた。


「今回の任務、内容なんだっけ?」


気怠そうな顔をして、携帯端末を弄りながらSNSで情報を確認する東洲斎白黒。

如何にも不真面目な雰囲気を醸している彼女を尻目に、両角切はデータで送られた資料を携帯端末で確認していた。


「何時も通り討伐任務だ、内容は祅の討伐になるな」


両角切の背後の座席に座る謝花蜜璃は、後ろから両角切の画面を確認しながら言う。


「確かあれだよね、自殺の名所の樹海」


あぁ、と東洲斎白黒は頷いた。

携帯端末でネットに接続すると、検索サイトにて樹海を調べる。

様々な掲示板などを確認し、その中でも良く見る、オカルト掲示板を見た。

『Q県の夜泣村へ行こう!』『有名宗教の壊滅事件スレ』『お洒落な程に怖い話』と、昔馴染みの雰囲気を醸す多くのスレッドが建てられている中、その中で今回の任務と関連性の高いものを、東洲斎白黒は選択した。


「…自殺の名所、『A県の不死川樹海』か。一度入ったら二度とは出て来れない、三日過ごしたら発狂して、四日目に自殺するって言う話の」


掲示板では、樹海を取り扱ったスレッドがあり、それを確認して情報を集める東洲斎白黒。


「如何にも眉唾、さっきの話も、一度入ったら出て来れないのなら、どうやってそれを知ったのかって話だし」


両角切は自分の所持する携帯端末の内容を確認する。


「…年間二百名が行方不明になっていて、捜索隊も便宜上は樹海内部が入り組んでいるから、プロでも出るのが難しいから、二次被害が起こらない様に捜索自体をしていないらしい」


視線を携帯端末に落としたまま、東洲斎白黒は掲示板のレスを読み上げた。


「スレにも樹海に行った被害者の親族が、警察に行方不明届を出したのに、探さない所か死亡届を渡されたんだって」


公式の機関が機能しないのは、法律の外にある外法である為だ。

通常の人間では祅に立ち向かう事は出来ない、流力を操る為に必要な器官を所持していない為だ。

祅は触れる事が出来ない。人間の手では祅の体を擦り抜けてしまう。

単純に次元が違うのだ、同じ場所に居るが、薄皮一枚程の別次元に立っている。

だが、祅は人間に触れる事が出来る、それは、祅が次元を超えた存在である以上に、次元を飛び越える術を得ている為だ。

祅は万物の源である流力を使う、次元と言う壁も、言ってしまえば万物の源から始まっている。

流力は、その壁を擦り抜ける事が出来る波紋であり、祅は流力を纏う事で実体化する。


そして祓々師が祅に触れる事が出来るのは、その流力を使用する事が出来るからだ。

流力を使役すれば、次元の壁を越えて祅に物理的攻撃を行う事が出来る。

超常現象の擬体化である祅には命と呼べる概念が無い。

だからこそ、流力による攻撃は祅に仮初の命を与え、その上で命を奪う攻撃を行う事で、強引に祓うのだ。


「難にしても祅が関係しているから、こうして祓々師おれたちが呼ばれたんだ、なら、俺たちが出来る事をするだけだ」


「まあ、当たり前な事、…?」


東洲斎白黒は隣に居る友人の方を見た。

後部座席に座り、俯いている謝花蜜璃は目を大きく開きながらメモ用紙にペンを走らせている。

一体何を書いているのかと、東洲斎白黒は不思議そうにしながら彼女のメモ用紙を確認した。


「何してんの?」


東洲斎白黒が謝花蜜璃に聞くと、彼女は友人の質問を無視してペンを走らせた。


「あのタブ、タイトル、巨乳幼馴染って書いてあった、其処から察するにセッくんの性的趣向はむかしと変わらずお胸が大きい女の子、それでいて属性が幼馴染系のえっちな動画を見てた可能性が大きい、セッくんがおっきい方が好きなのは知ってるけど、お母さん属性の開花はまだしてないのかな?、それよりも文字入力の際に出た予測変換、『イタズラ』って文字は新しい、別の趣向に目覚めた…?セッくんがお母さん系のえっちな動画を見る他にも、SMプレイに関する方面にシフトチェンジしたとか?…だとすると縛る方と縛られる方どっちがセッくんが好きなのかな…」


メモ用紙には様々な文字が書かれていた。

彼女の思考回路を纏めようとしているのだろうが、文字は読めない程にグチャグチャとしていた。

いや、例え読んだところで、読めた所で、理解出来る筈が無い、いや、理解してはいけない。

まだ、友達でいたいのならば、東洲斎白黒はそっと目を伏せて謝花蜜璃から目を離す事にした。

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