第23話
樹海には入り口が無い。
周囲は道路で舗装されており、時折樹海の枝や草が道路に飛び出さない様に整備が施されている。
枯れた草や葉が道路に飛び散っている、その上に車を停車させる。
「此処か」
柵で覆われた樹海。
看板が柵に括りつけられている。
その内容はシンプルに『柵から先に入らないで下さい』と書かれている。
それ以外にも手書きで『自殺の名所』と書かれていたり、行方不明者の家族が張り付けたであろう『探しています』の文字に写真が貼られている。
「では、此処で待機しています」
車を運転していた運転手が告げると、車の中に戻っていく。
両角切たちは樹海前に立ち尽くしている。
「さて、どうするか…」
両角切は考える、どうやって入るか考えている様子だったが。
「別に、考えるまでも無いでしょ」
流力を体内に循環させ、東洲斎白黒がスカートであるにも関わらず、大して気にしてない様子で跳躍する。
簡単に柵の奥へと超えた東洲斎白黒は、両角切たちの方に振り向いて言った。
「早く見つけて、倒して帰ろう」
彼女の言葉に、両角切は同感した。
地面を蹴ると共に高く跳躍し、柵を超える。
「だな、こんな所で躓くワケにもいかないしな」
両角切の後を追う様に、謝花蜜璃も飛び、柵のてっぺんで一度手を突いて樹海へと侵入する。
「あわっ」
着地と同時にスカートを抑える謝花蜜璃。
顔を仄かに赤くして両角切の方を見て言う。
「せ、セッくん、今の見た?」
恥ずかしそうに、スカートの中を見られたのではないのかと聞く謝花蜜璃。
両角切は彼女の方に顔を向けて、片手を左右に振って冷たく言い放つ。
「いや全然見てない」
それよりも両角切は前を向いて歩き出す。
地面は根が其処ら中に張っており、歩く事がままならない。
必然的に、周囲の木を支えにしながら歩かなければならない為、両角切は面倒臭そうに前進する。
「取り敢えずは真っすぐ進んでみて、異変が無いかを確かめるか」
歩き出して数時間。
二歩、三歩程、歩いた感覚である両角切は、二人の声が聞こえない為に後ろを振り向く。
「なんだ、俺の声、聞こえて無かったか?」
反応が無かった東洲斎白黒と、謝花蜜璃が居るであろう後ろに顔を向ける。
だが、両角切は思わず面食らってしまった。
「は?」
彼が移動して数メートル所か三歩くらいしか歩いていない。
であるのに、後ろには、何百以上の樹木が生え揃っており、その奥は何処までも樹木が続いている。
先程まで、両角切は柵の前に居た筈なのに。
急に、自分が意味の分からない場所へと転移された様な感覚に見舞われた。
「おい、おおおおおおッい!!」
大きく声を荒げる。
だが、その声に反応する声が聞こえてこない。
「(どうなってんだ、はぐれた?、この短時間で…テレポートの様な能力でも使われたのか!?)」
混乱しつつある両角切。
だが、何時までも疑問を浮かべ続けるわけにはいかなかった。
「ッなんだ、あんたら」
両角切の前に立ち塞がる複数の人間たち。
彼らの頭から花が咲いていた。
眼球の部分からは根が生えている。
その根っこが口元へと入り込んでいる。
まるで猿轡されているかのように口は大きく開きっぱなしだった。
意識がないのだろうか、彼らは一言も喋ることはしなかった。
面に加えて彼らの皮膚はとても白い。
血の通わない死人のようだ。
実際そうなのだろう。
彼らは脈などはない、既に死んでいる存在であった。
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