第3話

両角切の術式名は骨角こっかく術理じゅつり

古来より、人類は武器を使用して来た。

その武器は石器時代からであり、人類は進化を続け、そうして現代の武装へと至る。

その際に、人類は動物の死骸から武器を作り出した。

それが骨角器、石器よりも後であり精鍛された鋼よりも前の武器である。


動物の骨や角、牙と言ったものを加工し生成される道具は、多くの狩猟や人間同士の戦に役立ったと聞く。

両角切の術式は古来より続く伝承術式。


自らの流力を生物に流し込む事で、その生物の肉体から武器を生成する。

それが、両角切の能力であり、祅は彼にとって格好の武器倉庫であった。


「先ず一体、次はどいつだ?」


両角切の能力は五段階存在する。

その内、最上級の術式は未だ未開発である為に、実質的に四段階の術式が使用可能。


第一段階である士號能力、『骨角術理・きず』。

対象に致命傷を与える事で、肉体に致命傷分の流力を流し込み肉体に循環させる。

その対象の情報を流力に移した状態で流力自体を凝縮すると、固形と化す。

その固形の形状は術者本人の思考によって変化する。


武器は一般的には簡素なものが良い。

緻密な流力操作によって銃火器等の生成も理論上は可能であるが、それが出来る程に両角切の技量は足りていない。

だが、技量不足を補う程の火力を発揮させる、武器を分解し、流力を拡散させ爆発を発生させる『ざん』が使用出来る。


この骨角術理を使役し、両角切は十邪祅の六体を討伐する事に成功した。


刃毀れを起こした刀で鬼の首を断つ。

瞬間、両角切は鬼の首の切断面に向けて手を突っ込んで引っ張り出す。

四つん這いになって迫る獣型の鬼に向けて刀を投げる。

頭部に突き刺さり、鬼は地面に擦れながら死滅する。

切断した胴体から両角切は血と共に赤と黒が混ざる色合いの弓を取り出す。

更に、地面に横たわる鬼の背中に腕を突っ込み脊髄を引き摺り出す様に引っ張り出す。

獣の背から出てくるのは細長い槍だ。穂先の柄が獣の毛が纏い角が生えた蒲公英の様に見えた。


地面を蹴り加速、他の鬼に槍を使い薙ぎ倒し、空を飛ぶ鳥の様な鬼が両角切に接近する。

両角切は鳥の鬼の顔面を掴み、喉奥に指を突っ込むと、其処から一本の矢を生み出す。

巨大な鬼が接近してくるのを確認すると、両角切は弓に矢を掛けて巨大な鬼に向けて矢を放つと、弓の弦が弾けて弓自体が壊れる。

それ程に強大な力を得た矢が、巨大な鬼の頭部を破壊し、絶命する。

残された槍を、両角切は他の鬼に向けて投げると、胸部に突き刺さり地面に背中から倒れる鬼。

巨大な鬼が完全に滅されるまでに、両角切は巨大な鬼の方に近づくと、吹き飛んだ頭部の胴体に手を突っ込んだ。


「骨角術理・『きず』」


術式を発動し、引き摺り出すのは分厚い鉄柱を加工した様な大剣だった。

巨大な武器を、両角切は流力で肉体を循環させる事で肉体強化を行い、武器を振るい鬼たちを一網打尽にしていく。


鬼は無惨にも殺され、そうして残るのは両角切のみ。

周辺には、多くの鬼たちが、刀剣類によって心臓部位を突き刺されている。

消滅していく鬼たちを見つめながら、両角切は巨大な武器を投げると、流力へと変換されて消えていく。


「(どれもこれも、武器としての性能はイマイチだったな、これじゃあ、使えそうにも無い)」


両角切は消えゆく鬼の残骸を見つめていた。

そうして、ふと、校舎の方へと視線を向けると、爆発音が響いた。

爆発によって、校舎の一部が破壊される。

硝子や壁の破片が校庭に向けて飛び出していき、それを両角切は地面に転がる鬼を足で踏み付けると鬼の体から傘の様な道具が出てくる。

それを使い、両角切は傘を開いて破片の雨を回避した。


破壊した校舎から跳んでくる、女性の姿。

彼女は、両角切のチームの一人であった。

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