第17話
「(と、言うことは、あれもっ?!)」
脳内で自分の行動を振り返る人形フェルト。
『いぇーい、なにしてんのキリリ、保健体育の勉強?』
図書室で勉強をしている両角切に後ろから抱き着いた。
その際に、両角切の後頭部に人形フェルトの胸が当たる。
『おい、邪魔するな、俺は忙しいんだ、お前も勉強をしろよ』
抱き着かれながら、両角切は人形フェルトに説教をしている。
それに対して人形フェルトはつんけんしながら内心。
『(私に胸押し付けられておきながら何説教してんだろ)』
そんな事を思いながら胸を押し当てる。
わざとしているが、両角切は気が付いていない。
と思っていたが、本当は理解した上で敢えて話さなかったのかも知れない。
「(あ、あれもあるっ!)」
夏頃。
合宿の一環で海水浴に行ったとき。
修行をしている両角切が休息と称して他の術師と混じって海水浴を楽しんでいた際。
『うわ、なんか飛んできた…ってこれ』
両角切の頭に向けて水着が飛んできた。
胸を抑えた人形フェルトがにやにやとしながらやってくる。
『あ、ごめんねーそれ私の』
水着を掴む両角切は、それを人形フェルトに返す。
『お前、気を付けろよ、色々と』
そう心配して言う両角切。
人形フェルトは海水に浸かりながら水着を結び直しながら言う。
『キリリも付けたかった?私の水着、きっと似合うと思うんだけどなぁ』
からかう人形フェルトに、両角切は本気に眉を顰めながら。
『俺はお前の頭の方が心配になって来たぞ』
そう言った事を人形フェルトは思い出した。
「(もしかしてあれ、あれも、キリリもバレてたやつ?!えあ、だ、ダメだ、心が傷むっ!こ、殺して、私を殺して誰かぁああ!!)」
「…なにしてんだ?フェルト」
両角切は、頭を抱えて悶えている人形フェルトに向けて聞く。
衣服が破けて、切り傷や打撲と言った生傷が絶えない両角切の姿に、人形フェルトは身を震わせる。
「な、あっ」
両角切の後ろには人形傀の姿があった。
人形フェルトは、人形傀の前では出来の良い妹を演じている。
なので、基本的に両角切の前ではいたずらっ子の様な真似は出来ない。
だが、今日は違う、今日の彼女は何時もよりも冷静さを失っている。
この場合、自分が何をすれば良いのかをあまり理解出来ていない。
頭の中は羞恥心でいっぱいで、今すぐにでもその場から逃げ出したい程だ。
彼女の冷静さを欠いている事で、彼女の体にしがみついているぬいぐるみたちが、首を傾げたり、人形フェルトの体を擦ったり、体調の心配をしていた。
ぬいぐるみが、優しくしているから、より一層、自分が冷静ではないと言う事が丸見えであり、それに対して人形フェルトは、更に熱を抱く。
「え、えぇえええッ」
人差し指を両角切の方に向ける。
何を言うのか、人形フェルトは、両角切を指差したままに叫んだ。
「キリリのえっちぃいい!!」
顔面を真っ赤にして、涙目になりながらその場から逃走する人形フェルト。
えっち、と言われた両角切は、それが一体なんであるのか不思議がっていた。
「なんだよ、人の顔を見るなり、変態みたいな言い方をしやがって…」
内心、両角切はやはり、彼女に嫌われているのではないのか、と。
その様な不安感を過らせつつあった。
近くに居た釣舩浄流が、咳をしながら近づき、ポケットに入れておいた冷えピタを額に張り付けると、両角切の肩を叩いて言う。
「ナイスファイト、結果は全然見てねぇけど、どっちが勝った?」
釣舩浄流の立会人としての立場を優先するよりも、人形フェルトの悶え苦しむ様の方を見ていたので、両角切と人形傀の戦いの結末を知らなかった。
「お前なんの為に来たんだよ」
両角切は極めて当たり前に、釣舩浄流の役割を問うていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます