第13話

「改めて村に向かうとしますか」

「くくく、俺たちにこんなことしてただで済むと思うなよ…」


(うわ、なんかいきなり話始めたよこのおっさん…異世界にも厨二の病気とかあるんだ…)


「聞いて驚け!俺たちはあの盗賊王の一味だ!」

「盗賊王?サフィーラ知ってる?」

「申し訳ありませんが、存じ上げないですね。」

「てめえら盗賊王を知らねーのか?とんだ田舎もんだぜ。まさか、魔帝も知らねーのか?」


(マテイ?何だそれ…それにしてもこのおっさんよく喋るな。チュートリアルおじさんか?)


「いいぜ、教えてやる。魔帝ってのはバルザ帝国の中で最強の十人のことだ。そして———」



(おっさんの話が長いからまとめると、魔帝は最強の十人で強くなるほど数字が小さくなる。で、今の魔帝は


第一席

女帝メリス


第二席

勇者アルバ


第三席

剣聖メア


第四席

滅拳ガナ


第五席

賢者バーン


第六席

機械神ヤク


第七席

聖獣コノエ


第八席

聖女レア


第九席

盗賊王ヴィスタ


第十席

破壊王ゼノゲ


そして、魔帝は一人ひとり領地を持っているらしい…。なんでこいつら二つ名が厨二なやつばっかなんだよ。)


「これで分かっただろ!お前たちは盗賊王ヴィスタ様に喧嘩を売ったんだぞ!今謝ってその女を渡せば、半殺しで許してやる!」

「へぇーお城とか持ってるのかな?いいなぁ〜」

「ご主人様はお城が欲しいのですか?」

「まぁね、なんか偉い気分になれそうだし」

「……そうですか」

「おい!無視してんじゃねぇ!」


(このおっさんうるさいな…一発殴って黙らせるか。いや、俺にダメージが来そうだな。)


「うるさいですよ、ゴミムシ。次喋ったら二度と歩けないようにしますよ」

「へぇ、お前たちはあの村に行こうとしているようだが、あの村は盗賊王の領地だ!つまり俺たちのmぐぅああぁぁあ!!」

「さ、行きましょうご主人様」

「う、うん…」


—————————


どうしてだろう。村に着くといきなり村人に武器を向けられた。


「か、帰れ!もうお前たちに渡す物など何一つない!」

「そうだ!もうお前たちの言いなりになんかなるか!」

「村の女をどこに連れて行った!返せ!」


(うわぁ…完全に俺たちのこと盗賊の仲間だと思ってるよ、どうしよう。。)


「ちょ、ちょっと話を聞いてください!俺たちは…」

「黙れー!」


話をしようと前に出ると村人が槍を俺に向けて投げて来た。


(あ、これ…俺じゃ避けられないやつだ。)


バキッ!!ズドーン!!


「ご主人様に槍を投げるとは無礼な。蹴り飛ばしますよ?」

「いや、もう蹴ってる!!おじいちゃん吹き飛んでるから!!何やってんの!?」

「…あ」

「…あ、じゃねーよ!槍を落とすだけでよかっただろ!おじいちゃん三途の川渡ってないよね?まだ大丈夫だよね?」


(マズいぞ、本当に村の敵になっちまう…どうにかしないと。)


「皆様、聞いてください、ご主人様と私は盗賊の仲間ではありません。確かにご主人様は盗賊顔です。」

「おい、なんか俺の悪口入ってるんだけど?」

「ですが、私たちは盗賊王を倒しに来た者です。」


(え?)

「え?」


「皆様は今まで盗賊王の横暴に苦しんだのではありませんか?それでも生きていくために、必死に我慢して従っていたのではありませんか?もう大丈夫です。ここにいるご主人様が盗賊王を撃ち倒し、皆様を解放します!」


「そ、それは…本当ですか?本当に盗賊王を倒し私達を救って下さるのですか?」

「し、信じられるか、そんな言葉!」

「でも、さっきの女の人の強さは凄かったぞ…」

「でも、私達を嵌める為の罠かも」


(え?何言ってんのこのエルフ?何勝手に話を進めてるの!?)


「待つのじゃ、皆の衆。」

「おじいちゃん大丈夫か!?」

「生きてたかおじいちゃん!」

「まだまだ若いもんには負けんわ!それで、嬢ちゃん達が言っていたことは本当か?」

「はい、必ず倒すとご主人様が。」

「いや、言ってないよ?一言も言ってないよ?」

「そうか。必ず…か。」


(このじじいダメだ、歳で耳がとおくなっていやがる。)


「ならば儂は信じよう。」

「おじいちゃん!?」

「信じて大丈夫かよ!?」

「どちらにせよ、このままでは儂等はどうせ死ぬじゃろう。ならば儂等より強いこの者たちに託そうではないか!」

「そうだな、このまま死ぬよりはマシか!」

「俺も信じるぜ!」

「俺も!」

「私も!!」

「と言うことじゃ。…儂の、儂等の未来をよろしくお願いします。」


(俺、何も言ってないのに…)



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