第19話
(いててて…。助かったのか?確か地面に着く寸前、人が見えたような気がするんだが…?)
「ご主人様…」
「あれ?サフィーラ?なんでこんな所に?」
「そちらをご覧ください」
「ん?」
サフィーラに言われ、後ろを振り向くと、そこには血だらけで倒れたザギと知らないおっさんが倒れていた。
(え?もしかして事故…?一般人を巻き込んじゃった?マジで?…ど、ど、どうしよ!捕まるよ!これ見つかったら捕まるよ!)
「サ、サフィーラ…どうしよう。俺、捕まっちゃう…」
「何を言っているのですか?」
「だって、知らないおっさんが倒れて…」
「あれが盗賊王ですよ」
「……え?」
「盗賊王ヴィスタです。」
(盗賊王?あのおっさんが?最強の十人の一人?)
「サフィーラが倒したのか?」
「いえ、ご主人様の落下に巻き込まれて」
「あ、そう…。そうですか…。」
あまりの出来事に呆然としていると、先程の音を聞きヴィスタの手下が様子を見に来た。
「そ、そんな…ヴィスタ様がやられた…」
「う、嘘だ…そんなバカな!」
「う、うあああぁぁ!!」
「お前だけ逃げるなんてずるいぞ!」
盗賊の一人が逃げ出すと一人、また一人と声を上げながら逃げて行っく。
「ご主人様」
「どうしたサフィーラ?」
「そこの小さい男は私が頂いてもよろしいでしょうか」
「お、おう…ちなみにそいつをどうするんだ?」
「少し、お話をして来ます。」
「…」
サフィーラは圧のある笑顔を浮かべると男を引きずって部屋を出て行った。
(何故だろう…何故かサフィーラさんに逆らっちゃいけない気がしたんだが。……それにしても、どうしよう。血だらけで倒れている知らないおっさんと、二人っきりになってしまった……)
俺はサフィーラを見送った後、後ろで倒れているおっさんを見てため息を吐いた。
————————————
「ご主人様、ご主人様」
「う…うぅ…」
「ご主人様起きてください」
「う…サフィーラ?」
「おはようございます。朝食が出来ております。」
「分かった、ありがとう」
俺はサフィーラに起こしてもらい、ベッドから起き上がると朝食を取るために寝室を後にした。
あの後、逃げ出した盗賊と街に居た盗賊はヴィスタが倒されたと聞きつけた市民によってほとんど倒されたらしい。俺たちが攻めた時は市民なんていなかったが、どうやらヴィスタを恐れ街の地下に隠れていたそうだ。
盗賊を倒している時の市民は今までの怨みもあるのか、もの凄い気迫で、どちらが盗賊かわからない程だったと、血だらけになって帰って来たサフィーラが言っていた。
(いや、サフィーラ…話し合いじゃなかったのか?)
また、ヴィスタについては、倒された所を多くの市民が見に来た後、倒された盗賊と一緒に炎で焼かれ埋葬された。埋葬されるまでずっと市民に暴言を吐かれていたところを見ると、余程嫌われてたのだと思う。
そして、俺たちはと言うと…
「「「「おはようございます、リキ様」」」」
「お、おはよう」
「こちら、朝食でございます」
「ありがとう」
「は、はい!」
盗賊王を倒した救世主として市民達から崇められ、この城に住むことになった。
そう、城に住む…そこまではよかった。そこまでならまだよかったのだ。しかし、あれよあれよと話しが進み。何故か俺が盗賊王の代わりに、ここら一帯の領主となってしまった。
(領主とか何をすればいいか分からないから、サフィーラに諸々を任せたんだが…。数日後、何故かメイド軍団が出来て一緒に城で住むことになった…そして一番まずいのが。)
「どうしよう!わ、私さっきリキ様にありがとうって、お礼言われちゃった!」
「いいなぁ!私もリキ様に褒めて貰いたい!」
「リキ様と言えばあの盗賊王を一撃で倒したらしいわよ!」
「私は、苦しむ村の人を見て盗賊王を倒す為に、サフィーラ様と二人で乗り込んで来て下さったと聞いたわ!」
「本当に!?あぁ…強くて、優しいなんて。本当に素敵よねぇ…」
俺が盗賊王をワンパンで倒すほど強いって勘違いされている事だ。
(俺、これからどうなっちゃうんだろ…)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます