第20話 女帝メリス
バルザ帝国の都市ラフィー。その街の中央にある豪華な城の書斎で、女は書類仕事をしていた。
そこへ慌てた様子の男が部屋へ入って来る。
「た、大変です!メリス様!」
「どうした?そんなに慌てて」
「じ、実は…」
「ん?言いづらいことなのか?」
「そ、それが…ヴァーゼで密偵をしている者から、盗賊王ヴィスタが倒されたと報告が入りました…」
「な、なんだと!?」
女は驚きのあまり持っていた書類を机に叩きつけ、勢いよく立ち上がった。
「す、すまない…しかし、それは何かの間違いではないのか?確かにヴィスタの素行は悪いが実力は確かだぞ。そこらの奴に負けるとは思えん。」
「ほ、報告では盗賊王の一味を壊滅させたのは、サフィーラというエルフの女が一人とリキという人間の男の二人だそうです。」
「二人だと!?たった二人で盗賊王の一味を…本当なのか?」
「はい…」
(リキという名の男など聞いたことがない…盗賊王を倒す程の実力ならば知らないはずが無いのだが。それにエルフの女か…エルフが人間と共に居るなど聞いたことがない。)
女は椅子に倒れ込むように座ると盗賊王を倒した二人について考える。
「して、その後その二人はどうしている?」
「それが、ヴァーゼの城を根城にし、そこら一帯の村や街を従えたそうです。」
「そうか、ヴィスタの領地を従えたか…」
「はい、今までの悪政を嘆いていた民衆から救世主と呼ばれ、慕われているとのことです。」
「それで、ヴィスタを倒したのはやはりエルフの女か?」
「い、いえ…盗賊王を倒したのはリキという男の方だと報告が。そして、この情報は定かではありませんが、リキという男は盗賊王を一撃で倒したと…」
「一撃…いや、それはないだろう。あんな奴でも魔帝第九席だ、一撃で倒される程弱くはない。あらかた強さをアピールする為に話を盛ったのだろう。」
(まぁ、一撃は無くとも圧倒した可能性はあるな。となると一度会議を開く必要がある…)
「報告ご苦労、下がっていいぞ。密偵に引き続き任務に当たれと伝えてくれ」
「承知しました。」
バタン。
「さて、リーベ居るか?」
「姫、ここに」
「姫はやめろといつも言っているだろ」
男が部屋を出ると女は部下の名前を呼ぶ。すると誰も居ないはずの場所から黒服に身を包んだ女が現れた。
「今すぐ各魔帝へ会議を開くと伝えてくれ。……ヴァーゼに居るリキという男にもだ」
「…承知いたしました」
「無理はするな。自身の命を一番に考えてくれ。」
「姫は心配性ですね」
「お前がいなくなると困るだけだ。……頼んだぞ。」
「はい」
返事をすると黒服に身を包んだ女は姿を消した。
「リキ、か…味方であればいいが…」
———————————
「ご主人様、今日の仕事はこれで終わりです。お疲れ様でした。」
「ふぅ〜サフィーラもお疲れ様」
(まぁ、俺は書類に判子を押していただけだが…)
「もう夜遅いし、後はお風呂入って寝るよ」
「かしこまりました。入浴の用意は出来ております。」
「ありがとう」
(この城に住んで良かったこと、それはお風呂がすごくデカいこと!憧れてたんだよなぁ〜デカいお風呂!日本人としてはこんなに嬉しいことはないだろう。)
サバァーン
「はぁ〜。極楽極楽…しかし、いつも一人って寂しいよな。みんな遠慮して俺が入る時は使わないし」
(まぁ、一緒に入っても気を遣わせちゃうしな)
「夜遅いし、もう上がって寝るか…」
リキはお風呂から上がり体を拭くと、寝室へ向う。
(あれ?いつもサフィーラが挨拶しに来るんだが、今日は来ないな?まぁ、もう寝たのかな)
寝室に着きドアを開けると、いつもと違う甘い香りに襲われる。
(あれ?誰かがアロマとか焚いてくれたのかな?それにベッドが温かい。…なんで?)
いつもとの違いに戸惑いつつ布団を上げると、そこにはレースで仕立てた黒い下着を付けたサフィーラがいた。
「え?な、何してるのサフィーラ?」
「見て分かりませんか?夜這いです」
「いや、うん…。なんで夜這いしてるのか聞いてるんだけど…うわぁ!」
ドサッ
リキがサフィーラの行動に驚いているとサフィーラがリキの腕を引っ張り、上に跨るようにして押し倒した。
「い、いや…サフィーラさんあの…」
「ご主人様が悪いんですよ。ずっと我慢してきたのに他のメイドにデレデレするから…」
「待って!デレデレしてない、誤解です!それに俺のスキルの対象になっちゃうから!俺が早死しちゃうから!」
「大丈夫です。天井のシミを数えていれば終わります。」
「いや、それ男のセリフじゃ…じゃなくて!話し聞いてくれサフィーラ!あ…やめ、そこは…ちょ…あぁ」
満天の星が宝石のように煌めく異世界の夜空。そこに、男の声が響き渡った。
「ああああぁぁ〜!!ダメェ〜〜!!」
あぁ〜やっと盗賊王編が終わりました。(自分の所為)まだまだ続きますので、これからもよろしくお願い致します!
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