第6話

ドラゴンは人間だった肉片を見つめていた。

ドラゴンがこの森に来たのはこの人間の気配を感じたったからだった。

何故だか気配を感じた時から無視してはならない存在な気がした。無視をすれば取り返しのつかないことになる。そんな気が……


しかし、実際に来てみればゴブリンに負けるほど弱く、脆い…こんなものに自分は恐怖していたと思うと腹が立ってくる。


(人間の分際で私を振り回した罰だ、せいぜい無様な様を晒すのだな。)


背を向けて飛び立とうとした時、肉片が震え始めた。震えは徐々に強さを増し……


「タイショウシャノ、シボウヲカクニン、スキルハツドウ」

【身代わりの死】


弾け飛んでいた肉片が凄まじい勢いで一つに集まっていく…たとえ木や岩があろうとその全てを貫いて。

たとえ、ドラゴンが遮ろうとも……


ドラゴンは混乱していた、今まで誰にも傷つけられなかった己の肉体が人間の肉片に貫通されていく…今まで感じたことのない痛みが己を支配していく…


(何が起きているのだ?なぜ肉片が動き出したのだ…なぜ肉片が我の肉体を貫通していくのだ!?)


このままではマズイと思い、飛び立とうとするが肉片が翼を貫通し地面に倒れ込んでしまう。


(こんな…こんなことが…あってたまるか!)


力を振り絞り起き上がろうとした瞬間、一つの肉片が飛んでくるのが見えた。


そして、それがドラゴンの最後の光景だった…



===


「う、うぅ…ここは」


知らない緑の太陽と青空だ。


(あれ?僕はどうしてここに…確か、いきなりドラゴンが来て逃げようとしたら、何かにぶつかったような……ドラゴン!!ドラゴンはどうなったんだ!?)


慌てて周囲を見渡すと、すぐ横に血だらけのドラゴンが倒れていた。


(え!?なんで!なんでドラゴンが死んでるんだ?しかもなんか穴だらけだし……まさか!意識の無い間に覚醒してドラゴンを倒したのでは!)


「ふふふ、ついにこの時が来てしまったか。僕が主人公の時代が!」


(まぁ…それはそれとして、このドラゴンどうしよう。アイテムボックスに入るかな?)


などと考えていると青いパネルが突然出現した。


「このドラゴンを収納しますか?」


(おぉ〜できるみたい。Yesっと。)


パネルのボタンを押すとドラゴンの巨体が徐々にブラックホールに飲み込まれていき、

すぐに全て飲み込まれた。


所持

黄金のリンゴ : 5個

黒竜(死体): 1体


(よし!ドラゴンを倒し、覚醒した僕を止められる奴はもういない!もうゴブリンなんかに負けないぞ!)


(まずは森を抜けるか、幸いドラゴンのお陰で先まで見えるようになったし。)




そして、しばらく歩いていると木に背を預け、倒れこんでいる女性を見つけた。











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