第28話
◆寝室
あれから1週間、賭けの対価として毎晩エシルを抱き枕にして眠った。最初の次の日は「ケダモノ!こ、こんな事して…絶対に許さんからな!殺してやる!」と、すごい勢いで罵倒を受けたが日を追うごとに段々と柔化していき、今では俺のことを主と呼んでくれるようになった。
なぜ俺が1週間前の事を思い出しているかと言うと…。
「この獣が…どちらがご主人様に相応しいか、どうやら身体に叩き込まないと分からないようですね。」
「上等だ、やってみろクソエルフ!」
目の前で起きていることの現実逃避のためだ。
今から1時間前…
いつもはメイドが起こしに来るまで絶対に寝ているのに今日は謎の悪寒がして目が覚めた。全身に汗をかいており、ベトっとした気持ち悪さが身体を覆っている。
不思議に思いつつサッパリするため風呂に入ろうとベッドから立ち上がった瞬間、部屋の扉が目の前を横切り凄まじい音と共にそのまま壁にめり込んだ。
「あぁ…やっぱり。嫌な予感がすると思って来てみれば」
「サ、サフィーラさん…?」
「ご主人様、これはどういう事ですか?」
サフィーラはお手本のような笑みを顔に貼り付け、謎の圧力すら感じさせる冷たい声でリキに迫っていく。
「い、いや…これは〜その…。」
「何を怖がっているのですか?怒らないので正直に話してください。」
「そ、そう?じゃあ、これは賭けの対価としてエシルに抱き枕に…。」
ズドンッ!
言葉を言い切る前に顔の横を何かが通り過ぎる。震える身体を抑えながら後ろを振り向くとそこにはナイフが5本、壁に深く突き刺さっていた。
「あぁ、でも気を付けてください。怒りはしませんが変な事を言うと手が滑ってしまうかもしれません。」
「ハハっ…いやだな、じ、冗談に決まってるだろ?」
「そうですよね…それで?どういうことですか?」
「こ、これはその…」
(ど、どうする?なぜか、サフィーラがめちゃくちゃ怒ってる!あの目はダメだ!光が全くない…ここは土下座でなんとか!)
「なんだ、うるさいと思えば捨てられた女が何の用だ?」
「捨て、られた…?それはどういう意味ですか」
「そのまんまの意味だよ。自室謹慎中に私を毎晩寝室に呼ぶとはそういうことだろ」
騒ぎで起きたエシルの一言にサフィーラから何が切れる音がした。笑顔だったはずの顔は無表情になり謎のオーラ吹き出す。
「毎晩呼ばれていた割には手を出されていないようですが?そちらこそ恥ずかしい勘違いを辞めるべきでは?」
「な!?そ、それは私が途中で意識を失っていたからだ!」
「だったらなおさらですね。期待に応えられないのでは貴方は失格です。」
「貴様!言わせておけば!」
………
……
…
そして冒頭に戻る。もうかれこれ30分は言い合いを続けており、終わる気配が全く無い。一度止めようと試みたが殺気がこもった瞳で睨まれ何も言えなくなってしまった。
(どうしよう、窓ガラスは全部割れて壁や床にヒビが入り始めたんだが…このままだと部屋が壊れる。なんとかして止めないと。)
コンコン
「失礼します。」
「おおマイ!助かった!この二人を止めてくれ!」
「サフィーラ様とエシル様もお揃いなのですね。ちょうどよかったです。実は相談したい要件が」
「うん?」
◆地下牢獄
どうやら魔帝の使者だという者を捕まえたがその者が魔帝から手紙を預かっていると言っているらしい。何故魔帝の使者が捕まっているのかというと銀狼族と戦っていた時にこちらを探るようにコソコソ動いていたのでマイが捕まえたとのこと。
「お疲れ様です!お姉様!」
「頑張っているようですね」
「は、はい!なので今日もご褒美をください!」
(ルイだっけ?大分キャラが変わったな…)
「こちらです。」
「おい、領主様がいらっしゃったぞ!」
そこにいたのはどこかボロボロの黒い服を全身に纏い忍者のような格好をした女性
「貴方が領主様ですか?」
「そうだが俺に渡したい手紙があるそうだな?」
「はい、こちらになります。」
女はどこからともなく一枚の手紙を出しこちらに渡す。
そこに書かれた内容は帝国ので行われる会議の招待状だった。
「マイ、この紋章って本物?」
「はい、魔帝第一席、女帝の紋章で間違いありません。」
(マジか…多分盗賊王を倒したからだよな…報復か?だとしたマジで行きたくねぇ…。)
「これなかったことにならない?受け取ってないとか」
「流石に無理があるかと。」
「だよなぁ…はぁ、行くしか無いか。同行者一名までって書いてあるしマ…」
「なるほど、一名ということは私がご主人様に着いて行きます。」
「寝言は寝て言え、主について行くのは私に決まっているだろ」
「クソ犬は黙っていてください」
「なんだと?」
(うわ…。マイに来てもらおうと思ってたのにこの雰囲気じゃ言ねぇ。まぁ、今回はあくまで戦闘じゃなく会議だからなサフィーラを連れて行くか。)
「今回はサフィーラと一緒に行くよ戦闘しに行くわけじゃないし」
「な!?」
「フン、当然です」
勝ち誇ったサフィーラを見てこれからのことに不安を感じるリキであった。。
第九席になってしまったんですが、誰か説明してください 丸出し @marudashi7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。第九席になってしまったんですが、誰か説明してくださいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます