第16話

(で、でけぇ〜…)


城の前まで着き、改めてその大きさに驚いた。日本のお城の2倍はありそうな高さに、端が見えないほどの広さ。王を名乗っているだけはある。


「貴様ら何者だ?見ない顔だな…?ここは盗賊王の城だぞ!」


(あんだけ騒いだのにここまでは届いて無かったか。まだ誤魔化せぞ!)


「盗賊王を倒しに来ました」

「なんで言っちゃうの!?」

「倒しに来た。…だと?」

「あ、いや、今のは違いまして…」

「【切り裂く風スラッシュ】」

「「ぐはぁ!!」」

「て、敵だ!援軍を呼べ!!」

「敵だー!!」


(こいつ結構脳筋だよな…喧嘩とかしたら話し合いの前に拳が飛んできそう。)


門番の声を聞きつけた盗賊が城から続々とやってくる。


「おい、これどうするだよ。全員相手にしてたら日が暮れるぞ?」

「そうですね、でしたらショートカットいたしましょう」

「ショートカット?」

「【舞い上がれ風フライ】」

「え?…うわぁ!」


サフィーラが魔法を唱えると俺とサフィーラが浮き上がり空を飛んだ。


「待ってサフィーラさん!なんか俺だけクルクル回ってる!どうやって安定させるの!?」

「ふふ。行きますよ、ご主人様」

「お前わざと回してるだろ!!止めて!気持ち悪い!…うっぷ。」


城の前に集まった盗賊を飛び越える。そのまま空を飛び、2階へ突っ込んだ。


ズドンッ!!


「ぶへ!」

「どうして壁とキスしているのですか?」

「お前のせいだろ!!」

「なんのことですか?」


(っく!落ち着け、落ち着くんだリキ。ここは敵のど真ん中、冷静さを無くしてはだめだ…)


「これくらいで疲れるとは、流石ゴブリン以下のご主人様」

「よし買った!その喧嘩買ってやるよ!!」

「おい君たち、僕を無視して喧嘩とはいい度胸だね」

「ん?」


そこには髪を弄りながら片手に鏡を持ち、自分の顔を見てニヤけている変態がいた。


その変態がこちらへ歩み寄って来る。


「そこの美しいお嬢さん。そんなイモ顔の男なんか放っておいて、僕と楽しいことでもどうだい?」

「申し訳ありませんが、私はあなたに興味がありませんので」

「よし、よく言ったサフィーラ。ついでにアイツの顔面ぐちゃぐちゃにして来い」


変態は立ち止まると腰に携えた剣を抜き、剣先をこちらに向けて来た。


「そうか、残念だよ。ならば侵入者の君たちを倒してからお嬢さんで楽しませてもらうとしよう」

「返り討ちにしてやるよ、変態!」

「変態?…ああ、僕の自己紹介がまだだったね。僕の名はルド。盗賊王の幹部、神速のルドだよ」


(この変態が幹部だと?あの大男といい盗賊王は結構趣味が悪いな…)


「まぁ、これから死ぬ君には関係ないけどね!」


キンッ!


ルドの体がブレた瞬間、剣がリキの目の前に迫っていた。


(危な!サフィーラがいなかったら確実に死んでたな…ありがとうサフィーラ!その調子で頼む!)


「へぇ〜、僕の速さについて来れるとは君、なかなかやるね。ますます欲しくなった」

「さっさと終わらせましょう」

「ふん、出来れば怪我はさせたくなかったけど、本気を出すしかないようだね」


ルドが先程と違う構えをすると全身から青色のオーラが溢れ出す。


「後悔してももう遅いよ、【加速アクセル】」


ルドとサフィーラの姿が同時に消え剣が合わさる音だけが聞こえてくる。そして瞬きをすると2人位置が入れ替わるようにして立ってた。


「まさか僕より速い奴がいるなんてな…」


ルドは最後にそうい言うと力無く崩れ落ちた。


(流石サフィーラさん!その調子で盗賊王もやっちゃってください!)


リキが心の中でサフィーラを褒めていると、慌てた表情で手を伸ばし、こちらに向かってくるサフィーラの姿が目に入る。


(ん?どうしたんだサフィーラのやつ?…うぉ!)

「【転移ワープ】」


背後から誰かに掴まれたと思った瞬間、魔法を唱える声が聞こえ、目の前が真っ暗になった。


———————






「う、うぅ…ここは…」

「ケケケ、ここは城の地下だぜ。あの女と一緒じゃ倒せないと思ったんでな、分断させてもらったぜ。」

「お前は?」

「俺っちはザギ。盗賊王の幹部、暗殺者ザキだぜ」








—————————————


(しまった!油断しました…)


私が後ろの男に気づくのが遅れ、ご主人様が何処かへ連れ去られてしまった。私は急いで城を探し回る。


「いたぞー!侵入者だ!」

「捕えろ!!」

「【切り裂く風邪魔だ!!】」

「「ぐはあぁ!!」」


(ご主人様!ご主人様!ご主人様!!)


ご主人様が怪我をしているかもしれない、酷い目に遭っているかもしれない。そう思うと胸が張り裂けそうな程に辛い。そして、油断してこんな状況を作り出してしまった自分が許せない。


(殺す…私のご主人様に勝手に触れたあの男を…私からご主人様を奪ったあの男を…私を邪魔してくるこいつらも…殺す!)


邪魔をしてくる盗賊を薙ぎ払いつつ城を探し回っていると、特別豪華で大きい扉を見つけた。その扉の奥から肌を刺すような鋭いオーラを感じ、あの男かもしれないと思い扉を開ける。


そこはとても広く、王座の間という名が相応しい場所だった。その一番奥の王座に座る男が一人。


「おいおい、さっきから城が騒がしいと思えば、俺の城にネズミがいるじゃねーか」

「…あなたは?」

「あん?俺を知らねーのか?とんだ田舎娘だな。」


男は王座から立ち上がると不敵に笑う。


「この俺様こそが盗賊王ヴィスタ様だ!」









ヴィスタ「やっと俺の出番だ!」

作者「お待たせしました盗賊王!」


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