第10話
食事を済ませ、サフィーラとドラゴンのブレスで開いた道を歩いていた。
「サフィーラ、どこに街があるか分からないのか?」
「残念ながら、存じ上げません。ここ近辺の土地勘は私にはありませんので」
「やっぱり地道に歩いていくしかないか…」
(サフィーラがなんであそこで倒れていたか気になるが、嫌な事かも知れないし聞けないよな…てか近い。近すぎて歩きずらいわ!)
「あ、あの〜サフィーラさん?近いですよ」
「すいません、ご主人様がゴブリン並の強さなので嫌々ながら護衛の為に…」
「誰がゴブリン並だ!ドラゴン倒したって言ってるだろ!」
(俺の強さをバカにしてくるからドラゴンの死体見せたのに、全然信じてくれないんだよな…)
「だいたい、ご主人様はわがままが過ぎます。守って差し上げているのに近寄り過ぎだなどと、私の苦労を労って宝石をプレゼントしてもバチはあたりませんよ。」
「おい、ふざけんな。なんでプレゼントが宝石限定なんだ!ちゃっかり高価なもんねだるな!」
(こいつ、日に日に俺に遠慮がなくなって来てる。しかもやたらと押しが強いし…)
最近のサフィーラに悩みながら歩いているとついに森を抜けた。
「おぉ〜!!やっと森を抜けたぞ!長かった〜。しかも遠くに村みたいなの見えるし早く行こうぜ!」
遠くに見える村へ向かおうとした俺をサフィーラが手で制御する。
「残念ながらご主人様。囲まれています。」
サフィーラがそう言うと茂みから5人のことが現れた。
「えへへへ、鋭いな嬢ちゃん」
「完全に気配を遮断していたのだがな」
「おいおい、上玉だぞ!これは当たりだな」
(黒い服に身を包んだ男が5人。こ、これは盗賊ってやつじゃないか?しかも序盤に遭遇する系の…序盤の盗賊は雑魚キャラと相場は決まっている!よし!)
「おいサフィーラ、ここは俺がやる。いつも俺のことバカにしてるからな、しっかりと俺の強さを見ておけ!」
「男は邪魔だな、まずはこいつを始末するか。」
(ついに覚醒した俺の力を見せる時がきた!行くぜ!)
盗賊の方へと走り出したと同時に盗賊もこちら側へ走り出した。
お互いに拳を強く握り、相手の顔面へと拳が届く直前。盗賊の体がぶれ、後ろに吹き飛んだ。
「え?」
(俺のパンチが強すぎて当たる前に吹っ飛んだか?いや、それにしては手応えがまるでなかったような…。そして何故だか知らないが、俺の隣で同じポージングのサフィーラがいる…)
「何やってんの?」
「失礼しました。あまりにもご主人様のパンチ(笑)がお粗末だったので手を出してしまいました。」
「いや!本当に何してくれちゃってんの!?ここは俺が盗賊ボコボコにしてかっこよくキメるとこだったじゃん!何で邪魔するの!!」
「私が間に入らなかったら、あぁなっていたのはご主人様の方でしたよ。ステータス2倍以上違うので。」
「……」
改めて飛ばされた盗賊を見ると顔に拳の跡がしっかりついて倒れていた。
(なるほど、あぁなっていたのは俺か…なるほど、なるほど……)
「よくやったなサフィーラ!流石は俺の相棒だ!」
「清々しいほどの手のひら返しですね」
サフィーラの言葉を無視し、残りの4人の盗賊を倒そうと後ろを向くと、同じように拳の形がハッキリと浮かんで全員倒れていた。
「サフィーラさんや、あれは?」
「面倒だったので先に片付けておきました」
「なるほど……」
この日、この女だけは絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます