概要
時は平安時代初期。小野篁という若者がいた。身長は六尺二寸(約188センチ)と偉丈夫であり、武芸に優れていた。十五歳から二十歳までの間は、父に従い陸奥国で過ごした。当時の陸奥は蝦夷との最前線であり、絶えず武力衝突が起きていた地である。そんな環境の中で篁は武芸の腕を磨いていった。二十歳となった時、篁は平安京へと戻った。文章生となり勉学に励み、二年で弾正台の下級役人である少忠に就いた。
篁は武芸や教養が優れているだけではなかった。人には見えぬモノ、あやかしの存在を視ることができたのだ。
ある晩、女に救いを求められる。羅生門に住み着いた鬼を追い払ってほしいというのだ。篁はその願いを引き受け、その鬼を退治する。
鬼退治を依頼してきた女――花――は礼をしたいと、ある場所へ篁を案内する。六道
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!平安=安倍晴明を覆す、ニューヒーロー見参!
平安初期に活躍した実在の人物である、小野篁を主人公とした作品です。三部作の内の第一部となり、私は第二部から拝読しておりますがとても楽しめました。
平安時代といえば安倍晴明と思いがちですが、何故この方はそんなに知られていないのか……そんな疑問を抱くほど、我々を魅了する小野篁が「これでもか!」と詰まっております。
ファンタジー作品では取り入れがちである〝呪術の豪快なぶつかり合い〟の描写は少ないにもかかわらず、刀の戦いだけでもこんなに迫力ある描写ができるのか! と度肝を抜かれました。お馴染みの最強妖怪である両面宿儺や大嶽丸などとの戦いは圧巻で、その合間に描かれる美しい女性たちとの絡みは胸を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!太刀で戦う偉丈夫・篁の平安奇譚オムニバス
面白かったです!!
あやかし奇譚でありながら本格的な歴史小説の骨太さもあり、読んでいる間中、平安時代の空気のようなものを感じていました。
歴史アマチュアである自分には平安時代ものというと、恋愛ものかイケメン陰陽師の話かというようなイメージがあったのですが、本作は東征の武将でもあった篁が主人公であり、迫力あるアクションシーンも剣戟が中心です。今まで平安時代には何となく食指が動かなかったという方にも、絶大におすすめできる作品かと思います。(自分は恋愛ものも安倍晴明も好きですが…)
宮中で噂になっている怪談から盗賊や鬼神、篁は色々なものを相手に戦ったり、ちょっとした人助けをしたりします。勇猛な…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文武両道の硬骨漢、平安の闇を斬る!
平安の京とはいいながら、治安も万全とまではいえず、その闇夜には夜盗も怪異も跋扈していたという、平安時代初期。本作は、冥府にて閻魔大王の片腕を務めていたと噂された男・小野篁の活劇を描いた、和風伝奇アクションだ。
平安時代が舞台といっても、情景や用語がくどくどしくないので、「この時代のことは知識が追いつかないからわからない…」という人も安心して読めると思う。一方、アクションの場面も豪快でありながらさっぱりとした描写で、さくさく読み進めることができる。逆に、何気ない文章の中にそっとただよう穏やかな情緒も、絶妙なバランスとなっている。そんな文体の中から浮かび上がってくる篁の人物描写は、剛直にして繊細…続きを読む - ★★★ Excellent!!!歴史と伝説がおりなす大河ドラマ、TAKAMURA!!
小野篁(おのの たかむら)、平安期の歴史人物。朝廷に仕えた官僚である一方、閻魔大王の役人とも言われたいわくつきの男。昼は朝廷に出仕し、夜は閻魔庁につとめていたという伝説は有名です。
この作品は、そんなタカムラの物語。歴史と伝説の入り混じる、怪異ファンタジーです。
とにかくかっこいいタカムラ、どこかかわいげのある鬼たち、気さくな閻魔大王……。個性派揃いのキャラクターたちが、平安京で暴れ回ります。
安倍晴明ほど伝説に走りすぎず、かといって大河ドラマほど史実チックにもなりすぎない。本当に良い塩梅で、読んでいて胸が躍ります。
落ち着き払った沈着な文章は、しかし重くなりすぎず、読みごたえもアリ!何…続きを読む - ★★★ Excellent!!!SUMIO OSUMI
惚れ惚れする。
男性は闘う場面をどのように書いているのだろう。確かそんな動機で、男性の書く武闘ものをカクヨムであさっている時に大隅さんに行き着いた。
一読してその文体と漢の世界に惚れ込んでしまい、前のめりになって読み耽った。
読み耽るついでに、途中でうっかり、応援ハートを押してしまった。
その時は二度押しで取り消せるということを知らなかった。とにかく押してしまったのには違いない。
わたしは大慌てになり、読んでても読んでないことにして! そんな、無茶なことを大隅さんに頼んだことを憶えている。
女が読んでいることを作者が知ったなら、陰惨無惨な暴力シーンや、その先の展開である…続きを読む