文武両道の硬骨漢、平安の闇を斬る!

平安の京とはいいながら、治安も万全とまではいえず、その闇夜には夜盗も怪異も跋扈していたという、平安時代初期。本作は、冥府にて閻魔大王の片腕を務めていたと噂された男・小野篁の活劇を描いた、和風伝奇アクションだ。
平安時代が舞台といっても、情景や用語がくどくどしくないので、「この時代のことは知識が追いつかないからわからない…」という人も安心して読めると思う。一方、アクションの場面も豪快でありながらさっぱりとした描写で、さくさく読み進めることができる。逆に、何気ない文章の中にそっとただよう穏やかな情緒も、絶妙なバランスとなっている。そんな文体の中から浮かび上がってくる篁の人物描写は、剛直にして繊細、誠実であり、ときにちょっとグチをこぼし…閻魔大王に気に入られるのも無理はない、好人物なのだ。そして篁を囲む人物たちも、それぞれにクセがあって魅力的。誰もが驚くあの人物も、知られていないけれど実在したあの人物も、しっかり登場して篁の活躍を彩ってくれる。
京の悪を、闇の怪異を、篁が愛用の太刀で斬りさばく、必見の剣劇アクション。
続編も執筆中、要注目だ。

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