TAKAMURA

作者 大隅 スミヲ

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★★★ Excellent!!!

平安時代初期の高官、小野篁。
「夜は冥府で閻魔大王の補佐をしていた」という伝説で知られますが、漢詩や書にすぐれ、弓馬も巧み、情に篤い一方で朝廷を厳しく批判することもあったなど、きわめて個性的な人物です。

そんな魅力的な人物を主人公とし、都に跳梁する怪異へと立ち向かうダークファンタジー。
当時の人物や情景もしっかりと描かれていて、平安京、そしてその夜へといざなってくれます。

★★★ Excellent!!!

「陰陽師」の安倍晴明を思い出します。
でも、篁は篁として、安倍晴明とは違うヒーロー!
とにかく、かっこいい!!
読んでいるときは、眼前に映像が浮かびます。
アニメではなくて、実写の映画化を希望します。
ぜったいにかっこよくておもしろいと思うんだけどなあ。

重みのある文章が、篁を引き立てます。
また、きちんと調べて書いているのも伝わってきて、
そういう部分も好きです。

★★★ Excellent!!!

小野篁(おのの たかむら)、平安期の歴史人物。朝廷に仕えた官僚である一方、閻魔大王の役人とも言われたいわくつきの男。昼は朝廷に出仕し、夜は閻魔庁につとめていたという伝説は有名です。

この作品は、そんなタカムラの物語。歴史と伝説の入り混じる、怪異ファンタジーです。
とにかくかっこいいタカムラ、どこかかわいげのある鬼たち、気さくな閻魔大王……。個性派揃いのキャラクターたちが、平安京で暴れ回ります。

安倍晴明ほど伝説に走りすぎず、かといって大河ドラマほど史実チックにもなりすぎない。本当に良い塩梅で、読んでいて胸が躍ります。
落ち着き払った沈着な文章は、しかし重くなりすぎず、読みごたえもアリ!何度読み返しても飽きない作品です。

ぜひ、ご一読くださいませ!

★★★ Excellent!!!

 惚れ惚れする。

 男性は闘う場面をどのように書いているのだろう。確かそんな動機で、男性の書く武闘ものをカクヨムであさっている時に大隅さんに行き着いた。
 一読してその文体と漢の世界に惚れ込んでしまい、前のめりになって読み耽った。
 読み耽るついでに、途中でうっかり、応援ハートを押してしまった。
 その時は二度押しで取り消せるということを知らなかった。とにかく押してしまったのには違いない。

 わたしは大慌てになり、読んでても読んでないことにして! そんな、無茶なことを大隅さんに頼んだことを憶えている。


 女が読んでいることを作者が知ったなら、陰惨無惨な暴力シーンや、その先の展開であるかもしれない艶場面で、躊躇されるのではないか。
 遠慮して、想うように書けないのではないか。
 そう想ったからだ。
 投稿サイトは作者と読者が近い。

 読んでても読んでないことにして!

 そんな願いを、大隅さんは多分苦笑しながら流してくれたのだろう、その後も暴力や殺人のある小説は遠慮なく次々と書きおろされ、そのうちに女性の読者も増えてきた。
 何の心配もいらなかった。

 大隅さんの作品の漢には色気はないのだが、一本の美学が通っており、誰もが謎を隠し、侵し難い硬質の気品がある。
 これといって登場人物が男の美学をご披露するわけではないのだが、浮ついておらず、沈思黙考型で、実行力に長けているのだ。
 そしてそこにほんの僅かの、ハードボイルド界からも駆逐されつつある煙草のけむりの尾のような、可愛げがのぞく。

 特筆すべきは、文章の巧さだ。
 ほとんど描写らしい描写がなくとも、平安京の天海に蒼褪めた月が過ぎ、妖しい女の顔が蛾をとめた燈明に浮かび、内裏に鬼火が吸い込まれていく様子が眼に浮かぶ。
 かぎられた一文で黴くさい風や闇の濃さを想像させている。
 端的にまとめ上げており無駄なものが… 続きを読む