【健一郎ひとりのせいで荒れてしまったあつことてつや】

また時は流れて…


5月8日の午前11時59分頃であった。


またところ変わって、今治新都市クリエイティブヒルズにある造船関連の製造工場にて…


健一郎は、工場内にある倉庫で出荷する荷物に大きめのラップで包んでしっかりと固定する作業に取り組んでいた。


(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)


構内に正午ひるやすみを告げるサイレンが鳴り響いた。


健一郎は、従業員さんたちと一緒に休憩室へ向かった。


休憩室にて…


従業員さんたちは、青色のキャリーの中に入っているお弁当箱を取っていた。


健一郎がキャリーの中からお弁当箱を取ろうとした時であった。


上の人がものすごくあわてた様子で休憩室にいる健一郎を呼び止めた。


「健一郎さん!!」

「主任、なんでしょうか?」

「そこでなんしよんで!?」

「これからお弁当を食べるのですよ。」

「きょう、健一郎さんが食べるお弁当は注文していないんだよ~」


健一郎は、ものすごく不満げな表情で上の人に言うた。


「それはあんまりですよ!!」


上の人は、困った声で健一郎に言うた。


「わしは、いじわるで止めたんじゃないんだよ…きょうの昼は、ワシと一緒に食べに行くと言うたのだよ。」


健一郎は、上の人に対してものすごく不満げな声で『どちらへ行くのですか?』と聞いた。


上の人は、ものすごく困った声で健一郎に言うた。


「どこへ行くって、健一郎さんのことを一番心配しているご夫婦の家だよ…ご夫婦は、健一郎さんとごはんを食べたいと言うてるんだよ。」


上の人からあつかましく言われた健一郎は、不満げな表情で『行けばいいんだろ行けば…』とつぶやいた。


またところ変わって、今治市延喜しないえんぎにある特大サイズの和風建築の家にて…


特大サイズの和風建築の家は、短大メータンの教授・榎戸えのきど夫婦の家である。


(健一郎とあつこ・てつやのきょうだいが私立高校メートクに進学する際に利用したコネと言うのは、榎戸夫婦のことである)


家の30じょうの和室に健一郎と上の人がいた。


テーブルの上には、1セット1万8000円相当のかっぽう重セットが並んでいた。


健一郎は、ひどくコンワクした表情で上の人に言うた。


「主任…」

「(あつかましい声で)なんぞぉ~」

「(ひどくコンワクした表情で)なんでここでお昼を食べるのですか?」

「(あつかましい声で)ドアホ!!ここはお前のことを心配しているご夫婦の家だぞ!!」


到着してから10分後であった。


榎戸夫婦きょうじゅふうふが大広間に入った。


健一郎と上の人は、ごあいさつをするために一度席を立った。


奥さまは、おだやかな声で上の人に言うた。


「主任さま、おまたせしました。」

「ああ、お忙しい中どうもすみません。」

「ああ、おすわりになって。」

「あっ、はい。」


4人は、あいさつを終えたあとそれぞれの席についた。


榎戸きょうじゅは、過度にやさしい声で健一郎に言うた。


「健一郎くん。」

「教授。」、

「忙しい中、来てくれてありがとう…ワシはうれしいよ。」

「あっ、はい。」


夫人おくさまは、過度にやさしい声で健一郎に言うた。


「健一郎くん、大きくなったね~」

「あっ…おかげさまで…ところで、本日は…」


夫人おくさまは、過度にやさしい声で健一郎が言うた言葉を一方的にさえぎった。


「きょうは、健一郎くんの人生設計のことを話し合いたいから、ここへ呼んだのよ。」

「(ものすごく困った声で)人生設計を話し合いって…」


榎戸きょうじゅは、ものすごくやさしい声で健一郎に言うた。


「健一郎くんがどう言った人生を望んでいるのかを知りたいんだよ。」

「(ものすごく困った声で)ぼくがどんな人生を望んでいるのかと言われても…ぼくが人生設計プランを立てていないと思っているのでしょうか?」


健一郎が言うた言葉に対して、榎戸夫婦きょうじゅふうふは過度にやさしい声で健一郎に言うた。


「そんなことはひとことも言うてないよ。」

「私たち夫婦は、健一郎くんの人生設計ライフプランを作るお手伝いがしたいと言うてるのよ。」

人生設計ライフプランを作る前に、お昼ごはんを食べようか。」

「そうね…そうしましょう。」


榎戸夫婦きょうじゅふうふのひとことでランチに入った。


夫人おくさまは、お重の中に入っている料理をお皿に盛り付けながら過度にやさしい声で言うた。


「健一郎くんが食べる分を入れてあげるわね…お肉とお野菜をバランスよく摂れるように盛りつけるわよ。」


健一郎は、ものすごくコンワクした表情で榎戸きょうじゅに言うた。


「教授…」


榎戸きょうじゅは、過度にやさしい声で健一郎に言うた。


「話は、お昼ごはんを食べてからにしよう。」


夫人おくさまも、過度にやさしい声で健一郎に言うた。


「そうね…お腹がすいていたらいい知恵は出ないわよ。」

「いい知恵は、ごはんを食べている間に浮かんでくるよ。」

「はい、できたわよ…たくさん食べてね。」


夫人おくさまは、健一郎が食べる料理が盛られているお皿を差し出した。


健一郎は、ものすごくコンワクした表情でつぶやいた。


教授はぼくに…


なにを求めているのだよ…


ぼくにはぼくの人生があるのだよ…


ぼくの人生を勝手にいじるな!!


榎戸夫婦きょうじゅふうふは、お昼ごはんを食べたあと健一郎の人生設計ライフプランを話し合おうと言うた。


しかし、言い出しっぺの榎戸きょうじゅは『満腹はらいっぱいになった…ねむい…』と言うてゴロ寝したあと、いびきかいて寝てしまった。


…ので、ただお昼ごはんを食べただけで終わった。


さて、その頃であった。


またところ変わって、今治市宮下町しないみやしたちょうにある豪邸いえにて…


(ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…)


志桜里しおりは、浴室の掃除そうじをしていた。


この時であった。


家出していたあつこが家にふらりと戻ってきた。


あつこは、顔が泥の色に染まっていた。


服装がグチョグチョに汚れていた上に、髪の毛がひどく乱れていた。


あつこは、自分がはいていたくつを勝手口に移したあと自分の部屋へ移動した。


またところ変わって、あつこが使っている4畳半じょうはんの部屋にて…


あつこは、グチョグチョに汚れた衣服とちぎれたブラジャーとびちょびちょに濡れたショーツを脱いだあと、白のバスタオルで身体を包んだ。


その後、鏡台かがみの前に座った。


あつこは、鏡台かがみの台に置かれている花王ビオレのふくだけコットンを1枚取り出したあと、泥の色に染まった顔をふき取った。


あつこの顔は、きれいな顔に変わった。


次に、ほがその髪の毛をくしできれいに整えた。


その後、また顔のメイクを整えた。


それからまた60分後であった。


(ピンポーン…)


玄関の呼鈴ベルが鳴った。


お風呂掃除をしていた志桜里しおりが応対に出た。


玄関にて…


志桜里しおりは、玄関にいる人をきちんと確認してからドアをあけた。


ドアの向こうに、家の右ななめ向かいの家の奥さまが立っていた。


「あら、島内さん方の奥さま。」

「あっ、お手伝いさんね。」

「ご用件は、なんでしょうか?」


志桜里しおりの問いに対して、右ななめ向かいの奥さまは声をひそめながら言うた。


「ちょっと。」

「えっ?」

「あんた、波佐見おとなりの奥さまからなんか言われたの?」

「(おびえた声で)えっ?」


右ななめ向かいの奥さまは、周囲をみわたしたあと家の中に入った。


(パタン)


その後、ドアがしまった。


ところ変わって、大広間にて…


大広間には、志桜里しおりと右ななめ向かいの奥さまがいた。


この時、サックスバーの大きめのスーツケースとランスルーのハンドバッグを持っているあつこが部屋から出たあと、勝手口から外へ出た。


その時、志桜里しおりは大広間で右ななめ向かいの奥さまと一緒にいた。


右ななめ向かいの奥さまは、志桜里しおりに対して変な声で言うた。


「あんた。」

「えっ?」

「あんた、波佐見はさみさん方の奥さまからなにを聞いたの?」

「(ものすごくコンワクした表情で)なんの話でしょうか?」

雑賀さいかの家の子息バカぼっちゃまのことよ。」


右ななめ向かいの奥さまから変な声で言われた志桜里しおりは、首を横にふって『聞いてない…』と答えた。


右ななめ向かいの奥さまは、変な声で志桜里しおりに言うた。


「あっそう…聞いてないのね…」


その後、右ななめ向かいの奥さまは、志桜里しおりの横に座ったあと耳もとでささやきながら言うた。


「あのね…ここだけの話だけど…人には言われんよ。」

「(ものすごくおびえた声で)奥さま…近すぎます…」

「(変な声で言う)あのね…先週の木曜日のことだけど…うち…えげつない場面を見たのよ…」

「(ものすごくおびえた声で)えげつない場面って…」


右ななめ向かいの奥さまは、右手で志桜里しおりのスカートをまくりあげながらものすごく変な声で言うた。


「あのね…先週の木曜日のいつだったか覚えてないけど…宮下町みやしたちょうの3丁目にある山林の入口で…制服姿の婦警さんが…60過ぎのジジイと一緒に入って行くところを…みちゃったのよ…」

「(おびえた声で)制服姿の婦警さんと一緒に山林に入ったジジイって…」

「(ものすごく変な声で)そう…そのまさか…よ。」

「(おびえた声で)奥さま…ダメ…」


右ななめ向かいの奥さまは、右手で志桜里しおりが着ているスカートをくしゃくしゃにしながらものすごく変な声で言うた。


「そのジジイの正体は…雑賀さいかの家のご主人だったのよ。」


右ななめ向かいの奥さまからえげつない話を聞いた志桜里しおりは、思わずさけびそうになった。


しかし、さけぶことができなかった。


ちょうどその時であった。


同じく家出したあとブラブラとしていたてつやがふらりと家に戻ってきた。


てつやは、家の庭にこっそりと入ったあと大広間にいる志桜里しおりと右ななめ向かいの奥さまの会話を聞き耳たてて聞いた。


右ななめ向かいの奥さまは、おんまく変な声で志桜里しおりに言うた。


「それでね…うち…雑賀さいかのご主人と婦警さんがいる場所から200メートル手前まで行ったのよ…そしたら…雑賀さいかのご主人…婦警さんの制服のスカートに手首をいれてストッキングとショーツを強引に脱がしていたのよ…」

「(おびえた声で)それからあとは…」

「(ものすごく変な声で)あとは言わなくても分かるから言わない…けど、雑賀さいかのご主人の悪行あくぎょうはまだまだあるわよ…」

「(おびえた声で)どう言うことでしょうか?」

「(ものすごく変な声で)他にも…雑賀さいかのご主人は女がらみのトラブルを起こしていたのよ…婦警さんだけではなく…留置所に収監しゅうかんされている容疑者の若い女に対してゴウカンしていたと言ううわさも聞いたのよ…だから健一郎バカぼっちゃまが女がらみのトラブルを起こすようになったのよ~」

「(おびえた声で)奥さま、そう言えるコンキョはどこにあるのですか…」

「(ものすごく変な声で)コンキョがあるから言うたのよ。」

「(ものすごくおびえた声で)もうやめてください!!」

「分かったわよ…それじゃあここでやめとくわよ…だけど最後にもうひとつだけいわして…」

「もうひとつだけって?」

「あのね…うち…健一郎バカぼっちゃまのヒミツを知っているのよ。」

「健一郎さんのヒミツって?」

健一郎バカぼっちゃまが高校1年の時に、退学の危機にひんした事件のことよ。」

「健一郎さんが…退学の危機にひんした事件って…なんでしょうか?」


右ななめ向かいの奥さまは、ものすごくおびえた表情を浮かべている志桜里しおりに対してものすごくえげつないことを話した。


「あのね…健一郎バカぼっちゃまね…授業中に生徒からヤジられたことに腹を立てて暴れたのよ…その際に、ヤジった男子生徒をボコボコに殴りつけたのよ…」

「その男子生徒は、どうなったのですか?」

「死んだわよ。」

「死んだ?」

「うん…亡くなった男子生徒は…健一郎バカぼっちゃまかたいもので頭を殴られたあと出血多量で亡くなったのよ…亡くなった男子生徒は…新居浜のヤクザ組織の親分くみちょうひとつぶだねだったのよ…」

「ウソでしょ…」

「ほんとうよ。」

「それで…その後、どうなったのですか?」

「そうね…学校側は、健一郎バカぼっちゃまに対してケーサツに刑事告発こくはつをしようと思っていたけど、しなかったのよ。」

「なんで学校側は刑事告発こくはつしなかったのですか?」

「だ〜か〜ら…雑賀さいかのご主人が真っ先に行動に出たからよ。」

「ですからそれはどういうことでしょうか?」

雑賀さいかのご主人は、ことの次第を解決するために、今治市内しないで暮らしている知人に頼みに行ったのよ…たしか…元プロボクサーの男だったかしら…ヘビー級の元チャンプだったと聞いたわよ…」

「その…元チャンプの男に…」

「その通りよ…雑賀さいかのご主人は、元チャンプの男の知人の知人を通じて、そのまた知人の男である田嶋組たじま組長おやぶんを紹介していただいたのよ…」

「それで事件をもみ消したと言うこと…」

「そう言うことよ…だけど、学校側は健一郎バカぼっちゃまに対して退学に相当すると言う結論を出したのよ。」

「退学に相当する…」

「うん…退学するかどうかは本人次第と言うことで、本格的な処分は下さなかったのよ…本当にふざけているわよ…学校側が健一郎バカぼっちゃまに甘いからいかんのよ…だから治安が悪い学校だと言われるのよ…もうやめておくわ…」


右ななめ向かいの奥さまは、志桜里しおりのもとから離れたあとものすごく変な声で『きょううちが話したことを人にしゃべったら恐ろしい目に遭うわよ…』と言うて立ち去った。


志桜里しおりは、ぼうぜんとした表情でたたずんでいた。


この時、時計のはりは夕方4時半をさしていた。


いつもなら、夕飯の食材を買いに行く時間であったが志桜里しおりはきれいに忘れてたしまった。


…ので、また出前てんやものを取ることになった。


時は、夕方6時50分頃であった。


家の大広間に、トメとかおると健一郎と志桜里しおりの4人がいた。


昭久あきひさとあつことてつやは、家にいなかった。


竜史たつしは、残業中なので家にいなかった。


テーブルの上には、重松飯店の特製のやきぶたたまごめしのセットが並んでいた。


トメは、ものすごく怒った声で志桜里しおりに言うた。


「あんた!!また買い出しに行く時間を忘れたみたいね!!これで何度目なんべんめになるのか数えなさい!!」

「すみませんでした〜」

「すみませんとあやまってすむと思ったら大間違いよ!!」


たまりかねたかおるは、ものすごくつらい表情でトメに言うた。


義母おかあさま、やめてください〜」

「かおるさん!!」

志桜里しおりさんは、この最近つかれているみたいよ。」

「(ものすごく怒った声で)つかれているからどないせえ言うねん!?」

「少しの間だけ休ませたらどうですかと言うてるのですよ~」

「ますますはぐいたらしい嫁ね!!うちにメイレイする気なの!?」


かおるは、トメに対して怒った声で言うた。


義母おかあさまがお手伝いさんイビリしていたから志桜里しおりさんがイシュクしたのよ!!」

「やかましい!!クソナマイキな嫁ね!!」

「あんたこそクソナマイキなババァね!!」


かおるとトメは、よりし烈な声でバトウを繰り広げた。


端で聞いていた健一郎は、女々しい声でワーワー泣いていた。


志桜里しおりは、キーッと怒り狂ったあとトメとかおるに殴りかかって行った。


神谷家こうのたにけの家族は、この日を境になかよく暮らして行くことがコンナンになった。


この瞬間に、家庭崩壊へのカウントダウンが始まった。

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