【大雨特別警報発令96時間前】

(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…)


7月2日のことであった。


この日の予報は、雨で夜のはじめから翌日の未明にかけて雷を伴って非常に激しく降る…であった。


午前11時頃に大気の状態がより不安定になったと同時に、地盤の状態がより危険な状態におちいった。


午後3時を過ぎた頃であったが、山よりの地区(浅川の北よりの校区と旧越智郡の陸地部の地域)を中心に雷を伴って1時間に50〜70ミリに相当する非常に激しい雨が降り出した。


この時、豪邸いえがある地区は切迫した状態におちいったようだ。


そんな中であった。


豪邸いえに健一郎の実姉あね塩塚真利佳しおづかまりか(34歳・バツイチ)がたずねてきた。


大広間のテーブルに、かおると真利佳まりかが座っていた。


テーブルの上には、志桜里しおりがいれたダージリンティーが入っている白い磁器のティーカップが並んでいた。


志桜里しおりは、外に干していた洗濯物をかごの中に入れたあと中に入れた。


洗濯物はぐちょ濡れになっていたので、付近にあるコインランドリーで洗い直すことにした。


そんな中であった。


真利佳まりかは、ものすごくあつかましい声でかおるに言うた。


「おくさま!!」

「なんでしょうか…」

「なんで健一郎はここで暮らすようになったのですか!?」

「なんでって…」

「それは健一郎の意思で始めたのですか!?」

「えっ?」

「おくさま!!」


真利佳まりかは、あちらこちらをキョロキョロとしていたかおるを怒鳴りつけた。


「おくさま!!へら見しないでうちの話を聞いてください!!」


かおるは、ものすごく困った声で真利佳まりかに言うた。


「ごめんなさい…ちょっと…外に干していた洗濯物をお手伝いさんが取り込んでくれたかどうかが気になって…」

「洗濯物はどーでもいいからうちの話を聞いてください!!」


まりかは、ものすごくあつかましい声でかおるに言うた。


「もう一度おたずねしますが、健一郎がここで暮らし始めたのは健一郎の意思で決めたのですか!?…それとも、奥さまが強引にここへ移したのですか!?」

「だから、健ちゃんがここで暮らしたいと言うたからうちは了承したのよ。」

「それでは、奥さまのご家族のみなさまは了承なされたのですか!?」

「しました…ご家族のみなさまも了承してますよ。」


かおるは、真利佳まりかに対してテキトーに言うてごまかした。


真利佳まりかは『そうですか…』と怒りを込めながらかおるに言うた。


それから20秒後に、真利佳まりかはものすごく怒った声でかおるに言うた。


「健一郎の意思でおたくに申し出たと言うことはよく分かりました…健一郎が自立したい気持ちはよく分かりましたが、うちとしては健一郎がおたくで暮らすことは猛反対です!!」


思い切りブチ切れた真利佳まりかは、手提げバッグの中から一枚のパンフレットを出してテーブルの上に置いた。


それから数秒後に、真利佳まりかは怒りを込めてかおるに言うた。


「これ、健一郎に渡してください!!」

「このパンフレットは?」

「自衛隊の入隊案内です!!」

「自衛隊…」

「健一郎が自立したいと言うたので、きょう市役所へ行って(入隊の)手続きを取りました。」

「入隊の手続きを取った…」

「試験の日は、もうすぐ決まりますと言うてください。」

「お姉さま、それだったら…」

「うちはおんまく怒っているのよ!!」

「分かってます…ですが…」

「奥さま!!男子の入隊制限は32歳なんですよ!!それまでに入隊させないと健一郎がダメになるのですよ!!」

「おねえさまがおっしゃることはよく分かりますが、健ちゃんと1対1で話し合った方が…」

「話し合いなんかできないわよ!!」


真利佳まりかは、よりし烈な声で叫んだあとものすごく泣きそう声でかおるに言うた。


「健一郎がちいちゃい時から今までの間におくさま方の家にお世話になったのはよく分かりますが、少しは自重じちょうしていただけますか!?」

「ジチョウって…」

「辞書ひらいて、【自重】と言う字を調べてください!!」

「おねえさま…」

「なんでしょうか!?」

「少しは落ち着かれた方がよろしいのでは…」

「うちはものすごくあせっているのよ!!…健一郎が自立したいと言うから、うちは知ってる人に頼んで陸上自衛隊ジエータイに入隊のお願いをしたのよ!!自衛隊ジエータイ入隊はいったら健一郎は自立できるのよ!!お金が貯まるのよ!!仕事に必要な資格を取りたいと申し出たら取らせてくれるのよ!!運転免許証も摂らせてもらえるのよ!!除隊後の再就職先も選んでくれるのよ!!ギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャー!!」


真利佳まりかがギャーギャーと叫び声をあげたので、かおるは『お引取りください!!』と言うて真利佳まりかに帰るように言うた。


(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!ドスーン!!ドザーーーーーーーーーーー!!ドザーーーーーーーーーーーーー!!ドザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!)


夕方5時過ぎであった。


この時、雷を伴って1時間に100ミリ前後の猛烈な雨が降った。


同時に、今治市に土砂災害警戒情報・愛媛県に記録的短時間大雨情報が発表された。


その頃、志桜里しおりは北日吉町のセブンイレブンの敷地内にあるコインランドリーにいた。


非常に激しい雨でぐちょ濡れになった洗濯物が洗い終わるのを待っていた志桜里しおりは、ものすごく不安な表情で外の様子を見ていた。


この時、旧道に沿って流れている浅川の水がまもなくあふれるおそれが出た。


海禅寺橋かいぜんじばしからマルマストリグ(建材屋)付近の交差点までの間の道路で川の水が少しずつあふれ出した。


特に、浅川の北より(近見校区より)の地区では水がたくさんあふれていたどころがあった。


志桜里しおりがいるコインランドリーの近くにある茶堂橋ちゃどうばしが水浸しになって渡れなくなった。


同時に、道路の片側に水があふれ出た。


(ゴォー!!)


この時、小さい地鳴りが響いた。


山方町やまかたちょうにある土石流危険渓流どせきりゅうきけんけいりゅうになっている場所から響いたと思う。


志桜里しおりは、ものすごくおたついた様子であたりを見渡した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る