【増長してダメになって行く健一郎】

時は、6月1日の朝7時半頃であった。


ところ変わって、豪邸いえの桐だんすが置かれている和室にて…


かおるは、桐だんすの中から取り出したJAバンクの預金通帳と銀行印を勝手に持ち出そうとした。


かおるが持ち出そうとしている預金通帳は、あつことてつやの将来のために必要な費用等が貯蓄されていた。


この時、昭久あきひさが和室に入った。


昭久あきひさは、あつことてつやが将来のために必要な費用が貯蓄されている預金通帳を持ち出そうとしたかおるに対して怒った声で言うた。


「おい、それはあつことてつやが将来のために必要な費用が貯蓄されている口座だぞ!!」

「分かってるわよぉ〜」

「分かっているのであれば、勝手に持ち出すな!!」


昭久あきひさから怒鳴られたかおるは、つらい声で昭久あきひさに言うた。


「分かってるわよぉ〜…だけど健ちゃんのおとーさんとおかーさんから頼まれた…」

「いいわけ言うな!!ドロボー!!」

「ドロボーしてないわよ…うちは健ちゃんのおとーさんとおかーさんから健ちゃんの結婚準備のための費用を少したしてくださいと頼まれたのよ…きちんと返すから…」


(ドカッ!!)


ブチ切れた昭久あきひさは、かおるを右足でけとばして倒したあと、桐だんすの真ん中の引き出しを強引にあけた。


引き出しに入っていた高価な琉球絣りゅうきゅうがすり5点とあつこが七五三の時に着用していた女児和服など…


昭久あきひさは、家族の思い出がたくさん詰まっている高価品を強引に取り出した。


かおるは、泣き叫ぶ声で昭久あきひさに『あなたやめて!!』と言うた。


「あなたやめて!!やめて!!」

「うるせー!!」


かおるが『やめて!!』と言うてるのに、昭久あきひさは引き出しの中に収納されていた高価品を強奪した。


かおるは、泣き叫ぶ声で昭久あきひさに言うた。


「あなたやめて!!家族の思い出がたくさん詰まっている高価品しなものを持ち出さないで!!」

「ふざけんな!!オドレが雑賀よそのいえの家の子息クソバカに対して過剰に愛情を注いだから強制没収ぼっしゅうするゾ!!」

「あなたやめて!!」

「オドレはあつことてつやよりも雑賀よそのいえ子息クソバカがかわいいと言うた!!」

「言うてないわよ!!」

「いいや!!言うた!!」


昭久あきひさは、あつことてつやの授業料の支払い専用の預金口座の通帳と銀行印も強奪した。


かおるは、悲痛な声で昭久あきひさに言うた。


「あなたやめて!!それはあつことてつやの授業料を支払うための預金口座よ!!」

「やかましい!!だまれ!!」

「あつことてつやがガッコーに行けなくなるからやめて!!」

「だまれ!!あつことてつやがコーコーに行かんなったから必要なくなった!!」

「あなたやめて!!」

「うるせー!!オレはあきらめた!!」

「あきらめたって、どう言うことよ!?」

「あつことてつやがコーコーに通っている姿を見ることが楽しみだったが、もうあきらめた!!」

「あなた!!」

「あつことてつやが私立高校メートク退学やめると言うて家出したから不要になったんや!!」

「あなたやめてお願い!!」

「どけオラ!!」


ブチ切れた昭久あきひさは、右足でかおるをけとばしながら健一郎の両親とあつことてつやが私立高校メートクのスイセン入試を受験した時からかかわりがある西路見さいろみ八重やえの兄にあたる人・健一郎のおじにあたる人)と西路見さいろみ親類縁者しんるいたちの悪口をボロクソに言いまくった。


その後、昭久あきひさは強奪した高価品を持って家から出ていった。


昭久あきひさから暴行を受けたかおるは、メソメソメソメソメソメソメソメソと泣いていた。


午前11時59分頃であった。


またところ変わって、今治新都市クリエイティブヒルズにある製造工場にて…


健一郎は、いつも通りに工場内にある倉庫で周りにいる従業員さんたちと一緒に作業をしていた。


(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)


構内に正午ひるやすみを告げるサイレンが鳴り響いた。


倉庫で作業をしていた従業員さんたちは、休憩室へ向かった。


健一郎も従業員さんたちと一緒に休憩室へ行こうとしたが、上の人に止められた。


「健一郎さん!!」

「なんでしょうか主任…」

「健一郎さん、どこへ行くのだよぉ!!」

「どこって、休憩室ですよ~」

「健一郎さんは、先月の8日からお弁当は別の場所で食べると決まっているんだよ!!」

「主任!!主任はぼくにどうしてほしいのですか!?」

「健一郎さん!!きょうは神谷こうのたにの家に菜水なみさんが来ているんだよ!!菜水なみさんは、お前のために温かい手料理を作っているんだぞ!!」

「主任はぼくにどうしてほしいのか言えよ!!」

「なんやオドレ!!」


健一郎と上の人は、お昼のお弁当のことをめぐってひどい大ゲンカを繰り広げた。


ところ変わって、宮下町みやしたちょう豪邸いえにて…


豪邸いえのダイニングキッチンにかわいいエプロン姿の菜水なみがいた。


菜水なみは、健一郎のために温かい手料理を作っていた。


その頃、志桜里しおりは家の前で竹ぼうきを使ってはきそうじをしていた。


そこへ、右ななめ向かいの家の奥さまが志桜里しおりのもとにやって来た。


奥さまは、志桜里しおりに対して変な声で言うた。


「お手伝いさん。」

「あら、島内の奥さま。」

「ちょっと、話があるけどかまん?」

「えっ?話?」

「さっき、あんた方の豪邸おやしきに30前の女性とご年輩の男性の方が入って行ったけど…どちらさまなの?」

「ああ、(JA)おちいまの本所の女性職員さんと上司の方ですけど…」

「家の中でなんしよんで!?」

「ですから、女性職員さんは健一郎さんに手料理を作っているのですよ…奥さまはなにが気に入らないのですか!?」

「気に入らないわよ!!あんた方の豪邸おやしきは、いつからいらんことをしよんかしら!!」

「きょうは、雑賀さいかの家のご夫婦から場所を提供してくださいと頼まれたのよ…」

「あんた方の豪邸おやしきの家族がいらんことした結果、健一郎バカセガレがチョーシに乗った…と言うことに気がつきなさい!!」

「健一郎さんがチョーシに乗った…それはどう言うことでしょうか!?」


そこへ、おとなりの家の奥さまが回覧板を持ってやって来た。


「島内さん。」

「あら、波佐見はさみの奥さま。」

「回覧板を持って来ました。」

「ありがとうございます。」


回覧板を受け取った奥さまは、右ななめ向かいの家の奥さまにこう言うた。


「あっ、島内さん。」

「なあに波佐見はさみさん。」

「さっき、高架下の麺小町めんこまち(喜多方ラーメン屋)の前を通った時だけど、作業服姿の男たち15人がいたところを見たわよ。」

「ああ、たしか雑賀さいか子息バカセガレが勤務している製造工場の従業員さんたちよね。」

「従業員さんたち15人は、ぎょうざをさかなにビールのんでいたみたいよ。」

「ああ、やっぱりね。」


端で聞いていた志桜里しおりは、奥さまふたりにわけをたずねた。


「あの〜」

「なによ!!」

「ちょっとおたずねしますけど…健一郎さんが勤務している製造工場の従業員さんたち15人は、麺小町めんこまちで昼間からビールをのんでいたとおっしゃいましたね。」

「ええ。」

「それはどう言うことでしょうか?」


となりの家の奥さまは、変な声で志桜里しおりに言うた。


「あんた知らなかったの?」

「知らなかったの?って…」

「15人の従業員さんたちは、ストライキを起こしたのよ。」

「えっ?ストライキ?」


右ななめ向かいの家の奥さまは、怒った声で志桜里しおりに言うた。


健一郎バカセガレがチョーシに乗っていることが原因で一部の従業員さんたちが反発したのよ!!」

「そんな…」

「(JA)おちいまいちの美人の女性職員とお見合い〜婚約したので、健一郎バカセガレは鼻がテングになったのよ!!」

「テングになったって…」

「聞いた話しによると、15人の従業員さんたちは健一郎バカセガレのせいで結婚相手と出会う機会を奪われたといよったよ!!」

「ウソでしょ…」

「彼らは、むしゃくしゃしているからこのあと(キスケ)パオ(パチンコ)へ行こやとも言うてたよ…」

「ウソでしょ!!」

「あの様子だと、15人の従業員さんたちはさらに過激な行動を起こすかもしれないわよ…」

「奥さま!!恐ろしいことを言わないでください!!」


志桜里しおりは奥さまたちに対して『やめて!!』と言うたが、奥さまふたりはなおも恐ろしいことを言うた。


「もうあかんね。」

「あの様子だと、そのうちに大規模なストライキが発生すると思うわよ。」

健一郎バカセガレのお見合い結婚のせいで、全従業員さんたちはガマンの限度を大きく超えていると思うわよ。」

「そうね~」


ふたりの奥さまは、健一郎の悪口をボロクソに言いまくった。


たまりかねた志桜里しおりは、豪邸いえの中へ逃げ込んだ。


健一郎さんひとりのせいで…


職場の従業員さんたちが大規模なストライキを起こすかもしれない…


ウソでしょ…


ウソでしょ…


奥さまたちは、なにをコンキョにペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ…としゃべりまくるのよ…


こわい…

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