【今ごろになって何を言ってるのだ!!ふざけるな!!】

時は、6月8日の夕方4時半頃であった。


ところ変わって、今治市宅間しないたくまの溶剤会社にある昭久あきひさの個室にて…


デスクの上に、大量の書類が置かれていた。


昭久あきひさは、書類の右上にある捺印欄なついんらん印鑑はんこをついていた。


この最近であるが、自分勝手な申し出の書類が目立つようになった。


男性従業員さんの育児休暇申請いくきゅうしんせい


挙式披露宴の費用で足が出た(不足した)から少したしてください…


気持ちがしんどくなったから、休職させてください…


……………


なんじゃあいよんぞ!!


どいつもこいつもグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダ…


従業員わかいもんは、グダグダグダグダ言うことはいっちょ前で、仕事はなまける…


この時、男性従業員さんの育児休暇申請いくきゅうしんせいの書類に印鑑はんこそうとしたが、すのをやめた。


このあとも、育児休暇申請いくきゅうしんせい出産休暇申請さんきゅうしんせいの書面が数枚あったが、昭久あきひさ印鑑はんこさずに放置した。


そこへ、総務の人が書面を取りに来た。


総務の人は、昭久あきひさに対して『育児休暇申請いくきゅうしんせい出産休職申請さんきゅうしんせいの書面を取りに来ました…』と言うた。


それを聞いた昭久あきひさが怒鳴り声をあげた。


「なんやオドレ!!今なんて言った!!」

「ですから、従業員さんの育児休暇申請いくきゅうしんせい出産休職申請さんきゅうしんせいの書面を取りに来ました…」

「あれはてた!!」

てたって、どう言うことですか!?」

従業員なまくらどもは育休いくきゅう産休さんきゅうだとウソついて休もうと考えているからてた!!」

「ウソじゃありません!!本当ですよ!!」

「だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだーーーーーーまーーーーーれーーーーーーーーー!!オレがだめと言うたらダメだ!!」


ブチ切れた昭久あきひさは、従業員さんたちが申請した育児休暇いくきゅう出産休暇さんきゅうの申請書をズタズタに破いて破棄したあと個室内で暴れ回った。


その後、昭久あきひさは勝手に個室から出ていった。


時は、夜7時過ぎであった。


ところ変わって、宮下町みやしたちょう豪邸いえにて…


大広間のテーブルの上には、高級食器類がたくさんならんでいた。


ダイニングキッチンには、エプロン姿の菜水なみがいた。


菜水なみは、かおるから頼まれて料理を作っていた。


この時、志桜里しおりは料理をさせてもらえなかったので部屋の片すみでしょぼくれていた。


しばらくして、大広間にかおると健一郎と榎戸夫婦きょうじゅふうふが入った。


かおるは、過度にやさしい声で健一郎に言うた。


「はーい、健ちゃん帰ったわよ。」

「(健一郎、コンワクした表情で言う)えっ?」

「きょうの夕食は、菜水なみさんの手作りのローストビーフよ。」


健一郎は、ひどくコンワクした声でかおるに言うた。


「ぼく、家に帰ります。」


かおるは、つらい声で健一郎に言うた。


「どうして?」

「おかーさんが家で帰りを待っているんです。」


(ジリリリリリン…)


この時、黒のダイヤル式の電話機のベルが鳴った。


かおるは、やさしい声で健一郎に言うた。


「ああ、健ちゃんのおかーさんから電話かもしれないわよ…おばさんが出るね。」


かおるは、受話器を手にしたあとお話をした。


「もしもし、宮下町みやしたちょう神谷こうのたにでございます…健ちゃんのおかーさんですね…今夜はここで夕ごはんとおふろ…えっ?…もしもし、どちらさまでしょうか?…梶谷かじたに…すみません…梶谷菜水なみさんのニクシンでしたね…榎戸を出せ…どう言うことでしょうか…分かりました…変わります。」


電話は、菜水なみのニクシンの女性からであった。


かおるは、榎戸きょうじゅに受話器を渡した。


受話器を受け取った榎戸きょうじゅは、ケーソツな声で言うた。


「はい、代わりました…榎戸はわたしですが…私は、健一郎くんと菜水なみさんの結婚の仲人を務めています…ニクシンさまにごあいさつしたがったのです…」


受話器ごしにいる菜水なみのニクシンの女性は、ものすごくあつかましい声で榎戸きょうじゅに言うた。


「榎戸さま!!きょうは榎戸さまに不満があるのでお伝えいたします!!…すみませんけど、ゴハイリョ願います!!」

「ゴハイリョ願います?…それはどう言うことでしょうか?」

「(ものすごくあつかましい声で言う)ですからゴハイリョ願いますといよんよ!!」

「(榎戸、困った声で)ゴハイリョしてますよ…」

「(ものすごく怒った声で)辞書ひらいて『ハイリョ』の意味を調べなさいよ!!」

「いや、辞書引かなくても意味は分かりますよ〜」


榎戸きょうじゅがものすごくいいかげんな声で言うたので、菜水なみのニクシンの女性はものすごく怒った声で言うた。


「あんたいいかげんにしなさいよ!!梶谷うちの家族で女の子は菜水なみしかいないのです!!手塩にかけて一人娘むすめを育てた両親おやの気持ちが分からないようね!!」

「分かりますよ〜」

「分かったような口で言わないでください!!菜水なみにきょうだいはいるけど、男の子ばかりだから女の子は菜水なみしかいないのよ!!…上の男の子は42と40だけど、独身パラサイトシングル…下の男の子は、29と28で同じく独身パラサイトシングル…自立できんクソバカ4人を抱えているので、うちらはヒーコラヒーコラヒーコラヒーコラヒーコラヒーコラヒーコラヒーコラヒーコラ…いよんよ!!うちら両親おやが亡くなったら4人のクソバカは誰が世話するのよ!!分かっているのだったらハイリョしてください!!ケーソツクソッタレボケジジイ!!セクハラキョージュ!!」


(ガチャーン!!ツーツー…)


菜水なみのニクシンは、榎戸きょうじゅに対してボロクソに言うたあと電話をガチャーンと切った。


ガチャーンと切られた榎戸きょうじゅは、ボーゼンとした表情を浮かながらつぶやいた。


なんで…


なんでワシが怒鳴られなきゃいかんのだ…


ワシらは、菜水なみさんにハイリョしているんだよ…


それなのに…


ゴハイリョ願いますって…


どう言うことぞ…


わけが分からん…

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