【北海道胆振東部地震】

(ツクツクホーシ、ツクツクホーシ…)


9月5日頃であった。


この日の予想最高気温は39度と報じられた。


9月3日頃に志桜里しおりは出発準備を完了させた。


9月5日から7日の午後まではいつも通りに働く…


実家の家族たちと一緒に出発する予定時刻は、9月7日の夕方頃であった。


あのとき、所長さんは志桜里しおりに『つづきがあるのよ…』とやさしく言うた…


しかし、志桜里しおりは北海道へ帰郷かえって両親が選んだ相手とお見合い〜結婚で専業主婦で通すことを選んだ…


『あなたはクビです…』と言うておいて『つづきがあるのよ…』なんて聞こえがよすぎるわ…


志桜里しおりの気持ちは、心のどこかでやり場のない怒りを抱えていた。


話は戻って…


この日の午後2時過ぎであった。


豪邸いえの大広間に、かおると西路見夫婦さいろみふうふの3人が話し合いをしていた。


西路見夫婦さいろみふうふは、かおるに対して30年前(1988年)に山方町やまかたちょうで発生した惨殺事件サツジンジケンの被害者遺族のみなさまとのジダンコウショウのテーブルにつくようにとセットクした。


「かおるさん、ご遺族のみなさまはかおるさんに対して早くジダンコウショウに応じてください…と呼びかけているのですよ。」

「15年前(2003年)にジコウがセイリツしたと思っていたら大きなまちがいよ!!」


西路見夫婦さいろみふうふの呼びかけに対して、かおるは首を横にふって拒否した。


西路見夫婦さいろみふうふは、ものすごく困った声でかおるに言うた。


「かおるさんが拒否したら困るのはご遺族の方だよ!!」

「あつこちゃんとてつやくんの実の両親を殺して、ふたりの人生をズタズタに壊した…あつこちゃんとてつやくんにもうしわけないと言う気持ちはないのね…ああ…なさけないわね…」


西路見夫人おくさまは、ハンカチで目頭をおさえながら泣いた。


さて、その頃であった。


気持ちがひどくつかれていた志桜里しおりは、外へ散歩に出ていた。


ところ変わって、山方町やまかたちょうの集会所の裏にある借家にて…


志桜里しおりは、空き家になっている借家の玄関の前で花束はなをお供えしたあと手をあわせてお祈りをしている女性に声をかけた。


「あの〜」

「はい。」

「家の前に花束おはなをそなえてお祈りしていましたね。」

「ええ。」

「この家で暮らしていた方が亡くなられたのですか?」


志桜里しおりの問いに対して、女性は心苦しい声で答えた。


「今から30年前に、ここで惨殺事件サツジンジケンが発生したのよ。」

惨殺事件サツジンジケン…」

「ええ…この家で暮らしていた当時28歳の夫婦が殺されて…当時2歳の女の子と生後3ヶ月くらいだったか…男の子の赤ちゃんが連れ去られたのよ…原因は、おくさまの元カレにあるのよ。」

「夫婦を殺したのは、おくさまの元カレでしょうか?」

「そうよ…おくさまの元カレは札付きの極悪人よ…おくさまの元カレは、ダンナさんにおくさまとやり直したいからリコンしてくれとコンガンしたのよ…ダンナは、おくさまの元カレに対してものすごく怒った…それで大ゲンカになった…おくさまは…出刃包丁ほうちょうでリスカして命を絶った…おくさまの元カレがダンナさんを…」

「ナイフで刺して殺した…」

「うん。」

「それで、ふたりのお子さまを連れ去った犯人は?」

宮下町みやしたちょう神谷こうのたにの嫁よ!!」

「それじゃあ、亡くなった奥さまの元カレは…」

西路見さいろみ夫婦のクソバカよ!!」

「それって…」

「30年前の惨殺事件サツジンジケンは、西路見夫婦さいろみふうふ神谷こうのたにの嫁がグルになって、西路見さいろみクソバカに指示したのよ…そして、警察官であった雑賀さいかが事件のインペイ工作をしたのよ!!」

「そんな〜」

「他にもグルになっていた人間は知ってるわよ!!」


女性は、よりし烈な怒りを込めて惨殺事件サツジンジケンのゼンボウを志桜里しおりにしゃべりまくった。


この時、建物の死角にてつやが隠れていた。


てつやは、女性と志桜里しおりの会話を聞き耳立てて聞いていた。


話を全部聞いたてつやは、よりし烈な怒りに震えた。


女性は、このあとも志桜里しおりに対してあることないことをペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラとしゃべりまくった。


日付が変わって、9月6日の深夜0時過ぎであった。


ところ変わって、共栄町きょうえいちょうにあるピンサロ店の前にて…


ピンサロ店の前に、黒いキャデラックが停まっていた。


店の中から、榎戸きょうじゅが出てきた。


榎戸きょうじゅは、ヘラヘラした表情で車に乗り込んだ。


それから1分後に、車が店の前から出発した。


車は、旧道を通って延喜えんぎにある自宅へ向かった。


事件は、その途中で発生した。


車は、旧道にかかる海池橋をこえたあと阿方あがた方面に向かって走行した。


この時であった。


山路口やまじぐちのバス停から200メートル先の道路でてつやが両手を広げた状態で立っていたのを見た運転手が大急ぎでブレーキをふんだ。


「危ない!!」


てつやは、大急ぎでその場から離れた…


それからすぐに車が通過しようとした…


その時であった…


(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)


てつやは、運転手に向けて拳銃じゅうを発砲した。


(キーッ!!ドカッ!!…ドスーン!!グシャ!!)


榎戸きょうじゅが乗っていた車は、ガードレールを突き破って浅川へ転落した。


転落した車は、川の石垣にゲキトツして大破した。


大破した車からどす黒い煙があがった。


それから数分後に、大破した車から恐ろしい炎があがった。


事件を起こしたてつやは、その場から逃走した。


それから1時間後であった。


てつやは、北日吉町にある西路見夫婦さいろみ夫婦の家に押し入った。


「助けてくれ〜」


(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)


てつやは、西路見夫婦さいろみふうふ拳銃じゅうで撃ち殺した。


その後、家から立ち去った。


午前3時前であった。


場所は、高地町こうちちょうにあるゆきたか公園にて…


「殺さないでくれ〜…てつやくん…殺さないでくれ〜」


(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)


てつやは、拳銃じゅうで健一郎を撃ち殺した。


その後、健一郎はその場から立ち去った。


その頃だった…


(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ…)


北海道胆振東部地方で最大震度7の巨大地震が発生した。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


志桜里しおりの実家が巨大地震で倒壊した。


中にいた実家の家族全員が死亡した。


時は、午後3時過ぎであった。


ところ変わって、豪邸いえの大広間にて…


志桜里しおりは、大広間にあるテレビを見ていた。


テレビの画面にNHK総合テレビの午後3時のニュースが映っていた。


北海道胆振東部地方で発生した巨大地震のニュースを見た志桜里しおりは、ものすごく不安な表情を浮かべていた。


(ピンポーン…)


この時、玄関の呼鈴ベルが鳴った。


新居見志桜里にいみしおりさま!!電報ですよ!!」


電報の配達員が電報を届けに来た。


志桜里しおりは、玄関へ向かった。


配達員から電報を受け取った志桜里しおりは、電報を読んだ。


ジッカカイメツ…


ジッカノカゾク…


ゼンイン…


アッシ…


電報を読んだ志桜里しおりは、震える声で泣いた。


実家が壊滅した…


実家の家族全員が…


ぺちゃんこにつぶれて…


亡くなった…


「くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」


どうしたらいいのよ…


帰る故郷ふるさとがなくなった…


おとーさんとおかーさんとおにいさんたちが亡くなった…


うち…


これから先、どうすればいいのよ…

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