24ぽめ

吾輩はポメである。名前はテンだ。


今吾輩は寝不足が決定したところである。


矮小なるこの身に転生して幾星霜……。この身の無力さに日々嘆いてはいるが、今日も吾輩はこの体の小ささに振り回されている。


本日も吾輩はお嬢さんと一緒に寝ている。ベッドを半分ずつ分け合い寄り添いあって寝ているのだが、お嬢さんには無意識で吾輩の至高なる被毛を愛でる癖がある。

それはいいのだ。偉大なるハスキーだった頃もお嬢さんの添い寝は吾輩の仕事だった。あの頃は吾輩の滑らかなる極上の毛皮と、包容力あふれる屈強なる体によりお嬢さんを夢の世界へ誘っていた。

添い寝をすることに何も抵抗はない。

だが、しかし、


お嬢さん……何故吾輩の尻尾を握りしめているのですか?


吾輩の蒲公英の綿毛のような尻尾はお嬢さんの手に握り込まれている。お嬢さんを起こさぬように、そっと、手から抜き取りたいのだが、如何せん、吾輩の尻尾は可憐に巻かれているのだ。


尻尾を握られることは慣れている。屈強なるハスキーであった頃もお嬢さんは吾輩を枕にし、吾輩の尻尾を弄んでいたからだ。しかし、あの頃は真っ直ぐな尻尾だったため、そっと手から抜き取ることができたのだ。


嗚呼……こんなところにもポメになった弊害があるなんて…


今夜もお嬢さんは吾輩の被毛を堪能する。いいのだ。吾輩はそのために毛を伸ばしているのだから。


ただ……前世からお願いしているのだが、尻尾だけはご容赦いただきたい。

この尻尾の大きさでは満足いただかないだろうと油断していたのだ。


嗚呼……吾輩は今日も今日とて無力である。




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