6ぽめ

 吾輩はポメである。名前はテンだ。



 今、吾輩はだいにんぐてーぶるの上にある、ささみフライを発見した。

 矮小なる我が身なれど、運動神経、特に跳躍能力には自信がある。

 椅子の上にさっと登り、だいにんぐてーぶるの上に乗る。一瞬の隙をつき、ささみフライを強奪する。


 ふっ、吾輩にかかれば、この程度の障害は朝飯前だ。


 むしゃむしゃむしゃ


 うむ、美味である。

 母上の作る飯は美味い。なぜ、吾輩には作ってくれぬのか。

 いや、障害があるからこそ、より一層うまく感じるのかも知れぬ。


 しかし、胃にくるな。

 かつての体であれば、この程度の揚げ物などペロリであったのに。

 この脆弱な体では、油ぎったささみフライを吸収することができぬのか。


 うっ…我慢できぬ。


 せっかく食したのに、腹の中に留めることができなかった。

 無念だ。


 お母上、次はもう少しあっさりしたものを所望する。


 きゅうりでも良いぞ。



 吾輩はまた、だいにんぐてーぶるへ向かった。

 さっと椅子の上に乗り、だいにんぐてーぶるの上を物色する。

 お、あそこに何かあるぞ。

 吾輩は、お母上の隙をつき、だいにんぐてーぶるに肉球を置く。

 その時、吾輩が感じたのは浮遊感。


 あ、何をする!


 次の瞬間、吾輩はお嬢さんの腕の中にいた。

 やられた。こうなっては吾輩は動けない。あとは非力な我が身を恨むばかりだ。




 嗚呼、吾輩はポメである。名前はテンだ。

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