4ぽめ

 吾輩はポメである。名前はテンだ。


 今、吾輩はだいにんぐてーぶるの上に乗っている。前世は足が悪かったので、だいにんぐてーぶるに乗るのは前前世ぶりだ。


 嗚呼、この高さ、なんと素晴らしいことか。今世は地べたに這うがごとく下から見上げていて、気が滅入っていたのだ。


 さて、何か食べるものはないか。大きくなるためには沢山食べなばならぬ。

 お、あれはこーひーではないか。先ほどお母上が飲んでいたものだな。


 ぴちゃぴちゃ


 うむ。うまい。この芳醇な香り、五臓六腑に染み渡るようだ。豆乳が混ざっているおかげで少し甘く感じる。


 むむ、何奴だ!何をする!?吾輩を片手で持ち上げるなど乱暴ではないか!


 ガァ!


 はっ!お嬢さん!吾輩は何もしておらぬ。かつてのように屈強な体になるためには沢山食べねばならぬのだ。それもこれもお嬢さんを守るためである。離してくれ!


 …嗚呼、この貧弱な我が身。お嬢さんに軽く運ばれ抱きしめられてしまった。元より吾輩、ハスキー時代であってもお嬢さんに逆らうことはないのだが。


 お嬢さんのされるがままになる吾輩、この貧相な肉球に何かが塗り込まれていく。ハスキーと違ってポメラニアンは色々手入れをされて大変だ。すべすべにされる肉球、直後に歩くと滑るのでもう少し乾かさねばならさない。


「てーんちゃん」


 今日もお嬢さんは吾輩のふわふわの毛皮を満足そうに撫でている。お嬢さんの膝ぐらいしか温められない吾輩だが、せめて膝掛けの役割は立派にこなしてみせようぞ。



 吾輩はポメである。名前はテンだ。



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