19ぽめ
吾輩はポメである。名前はテンだ。
吾輩は今膝掛である。否、膝掛けの中の発熱源である。冬も近づき寒がりのお嬢さんは吾輩の毛皮に目を付けた。吾輩は食後の微睡の中お嬢さんにより連れ去られ、お嬢さんの体にかかっている毛布の中に入れられてしまった。
うむ。熱い。
毛が頭にしか生えていないお嬢さんたち人間は寒いかもしれないが、吾輩には立派な毛皮が生えているのだ。しかも前世よりも長く、体を三倍に見えるほどの豊かな毛量である。
吾輩は、毛布から這い出た。
ふう。やっとこさ出れたぞ。
この辺でお暇させていただこう。
ガシっ
お嬢さんの上から床へ飛び降りようとした途端、吾輩の尻尾はお嬢さんの手の中にあった。
やられた・・・
前前世からお嬢さんは吾輩どもの尻尾をなんと心得ておるのだろうか。なんという瞬発力。吾輩どもの尻尾を捕まえることにかけてはこの世で並ぶものなどないのではなかろうか。
動きを制限されてしまった吾輩は、自由になることを諦めお嬢さんの膝の上にある毛布の上に寝転んだ。
まあ、仕方ないだろう。
壮麗なる前世の体では、お嬢さんの上に乗ることなどできなかったが、可憐なる今世の体は非常に軽く、上に乗っていても重さなど感じないらしい。
このような矮小な体になってしまったのは、不本意ではあるが、お嬢さんの体を温めるのに一役買っていると思うと満更でもない。
吾輩は、できるだけ体を薄くのばし、なるたけ広い範囲を温めるように努力するのであった。
吾輩はポメである。名前はテンだ。
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