吾輩はポメである。

18ぽめ

　吾輩はポメである。名前はテンだ。

　吾輩にはゆーちゅーばーという仕事がある。お嬢さんから拝命した重要な職務だ。

　吾輩がゆーちゅーばーとして売れっ子になればお嬢さんは不労所得などというものを手に入れることができ、優雅に暮らせるそうなのだ。

　三度の犬生においてお嬢さんに忠誠を誓っている吾輩は、お嬢さんがやりたいということを一緒にするのは吝かではない。

　しかし、この吾輩の職務を邪魔する輩がいるのである。

　それはお父上だ。

　お嬢さんが我輩を撮影し、吾輩はお嬢さんの期待に添えるようにポメラニアンらしく可憐さを全面に押し出す。庭の茶卓に腰掛け、お嬢さんの言う、アリスの登場する動物になったり、風に毛を靡かせて鳥の音に耳をすませたりだ。

　そんな吾輩とお嬢さんの共同作業を、お父上が急に咳払いをしたりして邪魔をするのである。無論わざとではないのではあるが。

　そうすると動画の一部を消さねばならなくなるそうでお嬢さんは非常に困っている。

　吾輩も非常に遺憾である。

　願わくば、吾輩たちの仕事を邪魔しないでいただきたいものだ。

　壮麗なるハスキーの頃のようにお嬢さんの伴奏に合わせて歌うことはまだできないが、吾輩も真剣なのである。

　吾輩は今日も華麗なる売れっ子ゆーちゅーばーになるべく尻尾を振る。尻尾を盛大に振りお嬢さんに近づき可憐に座ってポーズをとるのだ。

　壮麗なハスキーの姿も残して欲しかったがこればかりは仕方がない。

　吾輩はポメである。名前はテンだ。