22ぽめ

 吾輩はポメである。名前はテンだ。


 今、吾輩は机の上に燦然と輝く食べ物を見つめている。伊達巻というらしい。伊達巻とは本来、新年に食べる食べ物であるそうだが、お嬢さんの大好物であるため年末の我が家の食卓にも並ぶのである。


 嗚呼、なんと美しい形をしているんだ。螺旋状になった伊達巻が並ぶ皿の上を見つめる。

 食べ物が乗っている机の上には吾輩は登ってはいけない。

 吾輩は、精一杯背伸びをし、机の上を覗き込んだ。


 嗚呼、隣に並ぶ肉の塊の輝きよ。はむというそうだが、赤い宝石のようではないか。


 吾輩はより一層背伸びをし、鼻の先を机の端にくっつける。かすかにこの宝石のような食べ物たちの匂いが漂ってくるようだ。


 吾輩が机上の宝石たちを見つめていると、お嬢さんが一つ手にとって食べた。


 あ!吾輩の伊達巻!


 吾輩の目線は机上の皿から、お嬢さんの手へとうつる。


 あ、黄色の巻きが解かれ、どんどん小さくなっていくではないか。


 お嬢さん!吾輩にも一口!


 吾輩はお嬢さんに擦り寄り、精一杯の可愛さを見せつける。


 この可憐なるふわふわボディの威力を見せつけてやろう。


 吾輩は黒曜石のようなつぶらなひとみをより一層輝かせ、お嬢さんに訴えかける。


 あ、あと一口でなくなってしまう!


 吾輩はお嬢さんの膝に飛び乗り、お嬢さんの口へと突撃した…。


 やっとのことでお嬢さんから伊達巻のかけらをいただくことができたのだった。


 吾輩はポメである。名前はテンだ。

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