9ぽめ
吾輩はポメである。名前はテンだ。
吾輩の朝は早い。夜が明け小鳥が囀り始める頃に目が覚める。
しかし、吾輩にはお嬢さんに添い寝するという至上命題があるのでしばらくは布団の上で待機だ。
むむ。そろそろ限界だ。
すまぬ。お嬢さん、お手数をかけて申し訳ないがドアを開けてくださらぬか?
吾輩はきゅんきゅんと情けない声を上げながらドアをカリカリする。
お嬢さんは深い眠りの中にいるようだ。
嗚呼、情けない。これがかつての体だったなら、立ち上がるだけでドアを開けることができたものを。矮小なるこの身ではドアの取手に手が届かないのである。
吾輩は、物は試しと跳んでみた。
トトン。
無理だ。届かない。
もう少しで届きそうな気がするのだが。
トトン
吾輩は再度跳んでみた。
うむ。難しそうだ。
カチャ
お嬢さんを起こしてしまったようだ。申し訳ない。
お嬢さんがドアを開けてくれたので、吾輩は一目散に階下へと階段を駆け降りる。
間に合った。おめおめと生き恥を晒さずにすんだのである。
朝の清涼な空気を肺いっぱいに吸い込み、朝の体操をする。屈強な体を取り戻すためには1日たりとも怠惰な暮らしをしてはならないのだ。
庭を駆け回り一通り運動したあと吾輩はお嬢さんの部屋へと戻った。
お嬢さんはまだ寝ている。今しばらくお嬢さんの眠りの守り人となろうではないか。
吾輩はお嬢さんの足元に丸くなった。もうしばらくしたらお嬢さんの起きる時間だ。今世では丁寧に手入れされている肉球で心地の良い目覚めを提供しようではないか。
吾輩はポメである。名前はテンだ。
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