12ぽめ
吾輩はポメである。名前はテンだ。
今吾輩は箱の中にいる。お嬢さんのお洋服が入っていた、だんぼーるの中だ。
お嬢さんは吾輩をすぐ箱や籠の中に入れる。そして机の上に置いて満足するのだ。だから吾輩もお嬢さんが箱や籠を出してくると、尻尾を振って近づいていく。
また吾輩を箱に入れて遊ばれるのですか?と。
そうするとお嬢さんは嬉しそうに吾輩を抱き上げ、吾輩を箱や籠に入れる。そうして写真を撮るのである。
しかし、お嬢さん、吾輩はぬいぐるみではござらんよ?
写真を撮って満足したのか、お嬢さんは吾輩を箱から取り出し吾輩を右腕に乗せ籠を片付ける。
矮小なるこの身であるが、お嬢さんの好きに持ち歩くことができるのは利点である。
そう言えば、前世でも、前前世でも、お嬢さんは幼体の吾輩を持ち歩き、吾輩を鞄の中に入れ満足されていた。
あの頃も満足そうなお嬢さんを見て、吾輩も自尊心を満たしていたものだ。
かつての過ぎ去りし日を思い出し、吾輩は目を細める。
あの頃の吾輩は、すぐに大きくなり何処にも入って差し上げられなくなった。今世は体の成長が遅いようなので、お嬢さんの満足がいくまでお相手して差し上げられそうだ。
お嬢さんの気が済んだようなので、吾輩は庭の警備でもしようと思い立つ。
吾輩はそっと立ち上がり扉へと向かった。
む、扉が閉まっている。仕方ない。窓から出よう。
吾輩は網戸の間を無理やりすり抜け外へ出て、庭から外を眺める。
うむ。今日も我が家は平和である。
「テンちゃんってポメじゃないよね。」
遠くからお嬢さんの声が聞こえる。
よくお分かりで。さすが我が主。ご慧眼である。
吾輩は、お嬢さんの忠実なるハスキー、レディでありますぞ。
しかし、
吾輩はポメである。名前はテンだ。
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