03 バオとウェルウィチアと“森”
中心街のほうに宿を移してから丸一日過ごした次の朝。ニキアスは途方に暮れていた。惨敗だったのである。
それもそのはず、彼は人探しをするときに持っておきたいものを何も持っていなかったのだ。情報。名前も人相も年齢も性別でさえもわからない。誰かを探そうというのにそれでは何も始まらない。たったひとつのヒントは存在するかも未確定のギルド統括組織のトップだということだけ。それではどんなに親切な人に声をかけたところで欲しい情報が手に入ろうはずもない。どころかあやしい人物として目をつけられてしまいそうだ。
だから彼は人探しの一歩手前の情報探しから始めなければならなかった。名前だ。それがわかれば一気に聞き込みがしやすくなる。道端の、家屋に併設された石造りの花壇に腰を掛けて考える。高さがちょうど座りやすかった。
(ギルドの統括をしてる人のことならギルドに入ってる人が知ってそうだな)
そう単純に考えてニキアスは歩き出した。中心街なだけあってそこらじゅうに看板が出されている。レストランにパン屋、花屋、鍛冶屋、大工店。ざっと見たって店の数は挙げたこれらを優に上回っている。もちろん道を一本入っていけばそこにも店はたくさんあるだろう。ニキアスにとってそれは初めての経験だった。村での経験ではお店なんてものは特定のものがぱっと浮かぶのが自然で、こんなふうに多くの種類の店に囲まれるというのは想像の埒外にあるものだった。いっそ楽しいと言い換えても問題ないくらいだった。
きょろきょろとあたりを見回してみるが、ここがギルドですよ、と看板を出してはいないらしい。とはいえギルドが組織なのは知っている。であるならば少なくとも構成員が集まれる場所がどこかにあるはずだ。さてそうなるとその場所を探し出さねばならないが、このパターンだと自分の勘は役に立ちそうもないなと思ったニキアスはやっぱり人に尋ねることに決めた。
行くあてを決めずに歩きながら品定めを始めて二〇分ほど、やっとニキアスの勘にピンと来る人物が彼の目に留まった。痩せぎすの若い男で、神経質そうな目をしている。早歩きのせいでずれるのか、しきりに眼鏡の位置を直しているのが印象的だ。
「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
歩く速度を合わせて声をかけると、長い首がしなって顔がこちらを向いた。次第に足の動きがゆっくりになって、そして止まる。
「構いませんよ、なんでしょう」
「俺、この街に来たばっかりでさ、ギルドの人と話がしたいんだけどどこか会える場所知らない?」
「はあ、なるほど。どちらのギルドをお探しですか?」
男はまた眼鏡の位置を直した。
「何も知らないからいろいろなトコから話を聞いてみたいんだけど、難しい?」
「……とりあえず港に行けば海口会などの港湾系ギルドがいくつかあります。あとは依頼で仕事を受け付けるタイプのギルドですか。西区に看板を出していますから探してみてください」
「わかった。急いでたっぽいのに教えてくれてありがとう」
「いえ、これくらいは」
そう言うと男はさっさとどこかへ行ってしまった。もしかすると本当に急ぎの用事があったのかもしれない。
さて、と一息ついてニキアスはもらった情報を整理した。現時点で目指すべき場所は港か西区。それなら西区のほうへ行ってみようかというのが彼の考えだった。あの街を眺めたときの印象も手伝っているが、ニキアスの中で港はあまり大きな存在ではない。そのうえかなり距離があるものだから気が進まないのが正直なところだった。
歩いてみると西区もずいぶんと遠かった。途中で昼食休憩を挟んだにしろ、三時間もかけてやっと入口というありさまだ。出発のときには馬車に乗る選択肢もあったのだが、同じ街なのだからと高をくくったのが失敗だった。疲労はそうでもないが足の裏が痛い。石畳のよくないところだった。
行き交う人々はどこか切迫した表情をした人が多い。中心街の人々と比べて余裕がないような気がする。ニキアスは面白くなさそうに視線を下げた。
少し進んだだけでさっきの痩せぎすの男の言うようにいくつも看板が目についた。すべてが店構えとして大きいわけではないが、それと依頼解決能力に単純な関係はないだろう。関係があるとすれば抱えている人員の数だけだ。人海戦術を取れるという利点はあるかもしれない。ニキアスは適当に目をつけたギルドの扉を開けた。看板に書いてあった名前には目もくれなかった。
「どうも、お邪魔します」
一分も経たないうちにニキアスは放り出されていた。依頼がないのなら客ではないという筋の通った論理で追い出されたのだ。反論はできない。彼らは常に客を待ち続けているのであり、そうでない者に用はない。それ以外で入れるとするなら、少なくとも知り合いがいないとならないのだろうが、ニキアスはどちらの要件も満たしていなかった。
また一歩後退した。そしてその一歩は彼からすると崖の端のものにしか思えなかった。ギルドの流儀に従って依頼を持っていけばいいのかもしれないが、ニキアスにはその依頼が思いつかない。当面の問題は人探しだが、まさかその依頼を投げるわけにもいくまい。何も情報を持っていないけどギルド統括組織のトップを探してくれ、なんて言ってもまた放り出されるだけだ。どうにか動かなければいけないのだがその手が思い浮かばない。また途方に暮れてしまった。
足取りからも力は抜けて、背中がすこし丸まった。すぐにうまくいくとは思っていなかったにしろ、ここまで門前払いにされれば元気もなくなろうというものだ。顔を上げても目に入る情報がどれも有用には思えなくなっていた。看板に出ている文字を読んでも二秒あとには頭から抜けていく。いっそちょっと面白くさえあった。
手が詰まればやる気もなくなるもので、ニキアスはさっさと中心街まで馬車で戻ってきた。文字が頭から消えていく奇妙にハイな時間も終わってしまって、別の方策を考えるのにもまずは落ち着きたかった。店頭に並んだ商品を冷やかしながらぶらぶら歩く。もうじき夕方だ。心なしかカゴに入ったリンゴがしなびているように見えた。
具体的なことを考えずに、どうしようかなあ、とだけ頭に浮かべてしばらく時間が経った。足もまだ痛い。あまり面白くない種類のため息をつくと、向こうからバオがやってきた。しかしひとりではない。なにか小さいのにまとわりつかれている。
「ニキアス! よかったあ。ほら、この子だよ、相棒」
「だーからそういうことじゃないって言ってるじゃないですか! 別にどこでどんな活動をしようが誰も文句言いませんよ! ただたまには実家に顔出せってだけで!」
かなり押しの強いというか、ほとんど怒っているような口調でまくしたてているのはどう見ても十歳前後、もしそれ以上の年齢だとするとあまり背の伸びない成長曲線をたどるのだろうと思わせる見た目の少女だった。しかし態度あるいは使っている言葉を考察材料に加えると、ニキアスは少なくとも自分と同年齢程度の人生経験をイメージせざるを得なくなる。勢いのパワーはあるにせよ、バオが押されている姿は彼にとって新鮮な気持ちを吹き込んだ。
バオがわざとらしいへろへろな足取りでニキアスのもとへ走ってくる。朝と違って手には杖と、なぜか花束が握られている。その後ろはもちろんぎゃあぎゃあ言いながら追いかけてくる少女、これも杖を持っている、だった。場所が中心街ということもあってひどく目立つ。周りの目は明らかに彼らに集まっていた。
「バオ、何が、どういうことなの?」
「いや人探しが難航しててうろうろしてたらこの子に見つかってね。めちゃめちゃ怒られてしまったわけだよ」
「何したの?」
「むしろしてないから怒られたんだよ。実家に顔を出せって」
「何年も何年もほったらかしにしてたらそりゃ言われますよ! あなたもそう思いませんか!?」
足が止まって相手にニキアスが加わっても少女の剣幕は鳴りを潜めはしなかった。バオを指をさしてぷんぷん怒っている。いわゆる家庭の事情というやつだろうか。だとすればニキアスに口を挟める余地はない。そんなところで話を振られても困ってしまう。
「え、あ、はい」
「ほら! 彼もそう言ってますよ!」
「ちょっと待って、ちょっと待ってよ。何も帰らないなんて言ってないじゃないか。いまは生活の基盤を整えようとしてるところなんだよ。今日で三日目だっけ、ほんのちょっと前にこの街に来たばっかりなんだ」
両の手のひらを少女のほうへ向けて、まあまあとどうにかなだめようとする。右手に握られた花束がばさばさと揺れて、花びらが数枚落ちた。小さな少女に高身長のバオが立場弱そうにしているのは奇妙な光景だった。若くして地位を手に入れる人間がいることはないわけではないが、それにしたって彼女は若い。若いどころか幼いという形容が許されそうな年代だ。
帰らない意思があるわけではない、という旨の発言があってやっと少女は落ち着きを取り戻したようだった。腕組みをして目を閉じる。思考を走らせていることが読み取れる。ニキアスはそんな少女の姿を見て、仕草が堂に入っているなんて感想を抱いていた。
「生活の基盤、ですか。具体的に何を?」
ギルドの話をすると返ってきたのはため息だった。言わずもがな、見通しが甘いというのが少女の言いたいところだった。先ほどのまくしたてるやり方で、今日一日でニキアスが体験してきたことをそのままなぞるように問題点として挙げていく。最後に、そういうのは決定打を持って始めるものであってそれ以外は夢物語とそう変わらないと釘まで刺された。こうまで言われると反論したくなりそうなものだが、残念ながらそんな要素が見当たらない。一から十まで彼女の言う通りだった。
「バオ、この子すごいけど誰?」
「知らない。うちの実家絡みなのは間違いないけど、今日が初対面だよ」
「嘘でしょ? あんなバチバチに詰められてたのに」
「本当さ。ちょっと風変わりな家でね」
ぱちん、と軽くウインクをしてみせるが、状況を鑑みるとあまり決まっていない。
「バオバブ。あなたまさか何も話していないんですか?」
「ちょっと。そう呼ぶのはやめてくれ」
あまり面白くなさそうにバオが要求した。いつもへらへらして余裕があるというか気の抜けている感じがする彼女と比べると印象が違う。さっき見つけたときに弱っていた様子も合わせて考えると知らない一面が見られる日ということなのかもしれない。
ニキアスの頭には小さな疑問がひとつとふつうの疑問がふたつ、よく晴れた日の雲のように浮かんでいた。しかしだからといってすぐに口を挟めそうな流れでもない。いまはバオと少女のやり取りを見るのが正解だろう。自分が入ればごちゃごちゃするだろうことがニキアスにはわかっていた。
「なんでですか、せっかくもらった名前でしょう」
「それはそうだけど全部読むと野暮ったいというか、かわいくないし」
「……まあそれは構いません。で、そこの彼が相棒とのことですが?」
「順を追って説明させてくれないか。別に状況が逼迫してるわけでもないだろう」
また一歩詰め寄られて、また手のひらを向けて一歩下がる。あまり変わっていないように見えるが、先ほどよりは会話に落ち着きが出てきた。いい兆候だ。なによりもまず会話だ。そうでなければどうしてこんな複雑で繊細な器官と機能が人間という生き物に備わっているのかわかったものではない。
こほん、と咳払いをしてバオが背すじを伸ばした。
「なぜさっきのギルドの話をしたかってことなんだけど、定期的な収入のあてが欲しいというのが眼目だ。このあいだ山狩りの仕事の報酬があって、さいわいしばらくは生活できるけどそれもずっとってわけじゃないしね」
「なるほど。理解します」
「それでいま言った山狩りの際に組んだそこの彼が優秀だったから相棒に誘ったんだ。つまり出会ってそんなに経ってない。たしかに彼には何も話してないけど、いろいろ話すのは落ち着いてからのほうがいいと思うんだよ」
ニキアスはちらっと視線を外して、そのすぐあとに聞こえてきた言葉を頭の中で繰り返した。そのまま取れば話すべきことがいくつかあるということだ。ヒネって取るべきなのかもしれないが、しかしその場合の意味が何になるのかはニキアスにはわからない。とりあえず重要なこととして置く必要があるのは、バオには秘密があるということだ。
「ちょっとずるいような気もしますが、まあ」
「何もずるくなくない? まあいいよ、これでやっときみに話を移せる」
「ええ? 私ですか?」
「そりゃそうだよ。こっちはきみの名前も知らないんだよ?」
自身の行動を振り返っているのか、視線を上にあげると少女はきまり悪げに頷いた。思い当たるフシというか、持っている情報と立っている状況の違いを見比べたのだろう。事情はあるにせよ、少女が軽く頭を下げたのは当然の反応だった。
「失礼しました。私はウェルウィチア。“森”からやって来ました」
「“森”?」
「私たちの実家の総称だよ。さっきも言ったけどちょっと特殊なんだ、いったん流してくれると助かる」
ニキアスは素直に頷いた。気になったことを端から聞いていったら果てしなく脱線しそうだという予感がはたらいたのだ。いまはとにかく彼女が誰なのかを知っておきたい。目的、立場、手段。ぱっと思いつくだけでもこれだけある。考えるまでもないが、言葉を交わせばきっともっと増えるに違いない。
「立場としてはバオバブの後輩にあたります。とはいえ今日が初対面なので他人に近い感じではありますけどね。あと強制的に彼女を連れ戻す役割を背負っているわけではありませんのでご心配なく。見かけたら顔見せするよう伝えておけと言われてるくらいです」
口早なのはどうやらクセのようなものらしく、調子が落ち着いてもウェルウィチアの話すスピードは落ちなかった。詰まったりしないところを見ると頭の回転が速いのかもしれない。ニキアスは嘆息した。大したものだ、どちらかといえば彼はゆっくり考えて言葉少なに話すタイプだった。それがやっととも言う。
「私のことはバオと呼んでくれ。それとウェルウィチア、聞く限り私を探していたわけじゃなさそうだけど、この街にたまたま住んでたのかな?」
「そうです。びっくりしましたよ、聞いてた通りの人が歩いてたんで」
バオは一度首をひねって何かを考えているような間を取った。自身がそんなに目立つだろうかと悩んだのかもしれないし、違うことなのかもしれない。ニキアスには見当もつかなかった。
腑に落ちないことがあるといった表情を少しだけ残してバオは視線をウェルウィチアに戻した。
「長いの? ここ」
「そこそこですよ。月明りさえあれば迷わず家に帰れるくらいです」
「あのさ」
「馬鹿言わないでくださいよ? あなたたちのギルドうんぬんのために私の人脈は使いませんからね?」
言い出すことを予想していたのか、本題に触れさせることさえさせずに甘い希望をぶった切った。食い気味ではあるが正当性はウェルウィチアにある。彼女が彼女自身として培ってきた付き合いをはじめましての相手のために使えというのも変な話だ。人脈を使う、とまで言われるような頼み事はたいがい人間関係に大小を問わずに影響を及ぼすもので、できることなら誰だって知り合いにそんな頼みごとはしたくないというのが自然な考え方だった。
ある程度はわかっていたのだろうが、あまりに反応が早すぎてバオはけらけら笑っていた。
「はははは、ケチだなあ」
「だいたいですね、あなたがさっき言っていた統括組織は私だってウワサにしか聞いたことないんですよ。話が行くのは決まってギルドの長。それもある程度の規模じゃないとダメだって」
「でもそれはウワサが立つ程度には本当に存在してるってことだよね」
「まあ、それはそうです。そもそもこの街は一元化した運営組織が生まれにくい構造ですから納得がいく面はありますが……」
ウェルウィチアはバオの確認を肯定した。しかし後半はもごもごと言いよどむような口調だった。街に住んでわかる不都合や不具合があるのだろう。ニキアスもバオも宿暮らしをしているぶんにはまだそんな困りごとに出会ってはいない。
それとは別にニキアスが首をひねった。
「イチゲンカした、ってどういう意味?」
「一元化した運営組織、でセットです。ええと、街のリーダー的組織とでも言えばいいんでしょうか」
「なるほど。それが生まれにくいのはなんで?」
「ええと、このナウサの街には人もギルドも多すぎて、誰が偉いかでケンカになってしまうんですよ」
そこまでの説明は理解したということなのか、ニキアスは二度うなずいた。偉さを争うという表現は彼によく馴染んだ。村でも子どもが自分のほうが偉いという主張を通すためにいろいろと画策していたことが思い出される。それの規模がケタ違いになってしまったということなのだと彼は理解した。
「じゃあこの街はどうしてるの?」
「ここからはウワサの領域ですから安易に信じないでくださいよ? それで、人ならまだしもギルド同士がケンカとなると街が壊れてしまう可能性が出てきます。だから街で力のある人、この場合は有力ギルドのトップを代表者にして、ケンカ禁止をルールにした話し合いの場を作ったらしいんです。様々な角度からの意見を入れつつ、街の運営をしていくために。仮にそれが本当にあるなら、あとは特定の組織の暴走を防ぐ意味合いもありそうな気もします」
「どこにもずいぶん優秀な連中がそろっているように聞こえるけれど」
「それはどうだか。ケンカ腰だらけだって聞きますけどね」
ニキアスもバオもどんな光景になるのかをなんとなくイメージしていた。出てきた結果はあまり楽しそうなものではなかったらしく、ふたりは同時にため息をついた。現実を背景にしたパワーゲームは想像して楽しい類のものではない。演劇などなら話は変わるのだろうが、誰もそんな話はしていない。飛び道具、工作、腕力。野生の獣に比べて知恵をつけてしまったぶん、縄張りに対する意識が飛躍したのだ。
話し始めより日が傾いた。太陽が沈み切るまでそれほどかからないだろう。西の空が赤い。周囲の人の流れは街路の両端で対照的なふたつに分かれていた。酒場に繰り出す流れと家に帰って食卓につくのだろう流れ。立ち話をしている彼ら三人は異質なものだった。
時間とお腹の空き具合、こちらが大きな理由だ、を鑑みて三人は酒場を訪れていた。運良くテーブルにつけたと言っていいほど混み合っており、店内はすさまじく騒がしい。酒が入って気が緩んだのかもしれないし、解放感に任せているだけなのかもしれない。誰も文句を言っていないのを見るにこれが日常なのだろう。
ウェイトレスがテーブルについたのが三人であることを確認すると注文も取らずに奥に引っ込んでいって、すこし待つと大皿がいくつかと飲み物、それとバスケットにパンが詰められて運ばれてきた。初めから出す品物が決まっていて、個別に食べたいものがあればそのあとで注文するらしい。初めて見る形式にニキアスはこっそり感動していた。
それぞれ口に合っていたようで一同はしばらく食事に集中していた。パンと飲み物の消費がふだんより早かったのは味付けが多少濃かったせいだろう。まわりの騒がしさのおかげで行儀を気にする人は誰もいなかった。まさか両手に食べ物を抱えて交互に食べるような真似はしなかったけれど。
「さっきの話、アドバイスだけはしてあげますけど、ふつうのやり方じゃ探してる人には会えないと思いますよ。たぶん誰に聞いても無駄ですね」
「きみが協力してくれるのが一番ラクなんだけど、ダメなんだろう?」
「ダメですね」
「じゃあニキアスとも話して考えることにするよ」
「ああ、あなたニキアスっていうんですね。やっと名前がわかりました、よろしく」
「よろしく」
こうして夜は更けていった。
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