07 交渉

「もう、忘れ物ですかあ? すぐ戻ってくるのは協や……」


「夜分遅くに失礼、ちょっといいかな」


「ぅわっ」


 ぬう、という擬音がはまるほどに、まずは頭だけを差し入れる。このときバオは唐突に入り込んでは威圧的な態度と取られるかもしれないと危惧して顔だけを見せたのだが、どうやらそれが逆に扉の向こうの女性に恐怖を与えたらしい。

 どたどたと不器用に後ずさる。一歩踏み違えたらしりもちを打ってしまいそうだ。足元がおぼつかないのも無理はない。こんな深夜まで会議を行っていたのなら多少はふらつきもするだろう。間延びした声での応対だったのも当然だ。

 ずれてしまった大きな眼鏡の位置を直して、その奥の瞳がゆっくりと自分の領地に入ってくるバオとニキアスのふたりをまじまじと眺めた。まるで物珍しいものを見たときのように。たしかに一般的な常識に照らして考えれば、こんな時間に訪客は珍しいかもしれない。


「ど、どちらさまで?」


「あなたに用があって来た。聞きたいことがあってね」


 バオは投げかけられた質問を無視した。自分の用事だけを告げるその厚顔ぶりにニキアスは驚いていた。こういう交渉というか、やり取りがあるのかと。

 眼鏡の若い女性は言葉を失ってただただバオの顔を見ていた。口は軽く開いていて、呆然としていると表現して問題はないだろう。少なくともニキアスにはそう見えていた。街の運営に関する重要な会議のあとに突然知らない客が来て一方的な要求を突きつけようとしているのだから、やはりそれにも無理はないという理解があった。しかしニキアスのこの状況把握は外れていた。眼鏡の女性が口を開く。


「……実力行使だけはやめてもらえますか?」


「ふふん、話が早い。いい傾向だ」


 諦めたように背中を向けて彼女は歩き出した。中は古めかしい造りの大きな館を人の頭からそのまま持ってきたような印象を受ける。深いつやのある木製の家具がよく似合う。明かりの点いていないほうの廊下に目をやると、外よりもよほど暗かった。なんとなく、吸い込まれてしまいそうな暗闇。そこから血の気のない手が伸びてきて人をさらってしまうとおどかせば、子どもは近づかなくなるだろう。大人だっていい気はしないくらいに不気味だ。しかしだからといってガタがきているわけではない。時期をみては修繕していそうだな、とニキアスは思った。

 そんな感想なんて知らぬげに、眼鏡の女性は室内用のカンテラを持ってかすかに明かりの点いている廊下を進んでいった。

 ついていった先は長辺に三人ずつ、短辺に一人ずつの、計八人が座れるテーブルがいくつも並んだ部屋だった。ここで児童たちが食事をするのかもしれないし、勉学に励むのかもしれない。もしくはその両方か。眼鏡の女性は持っていたカンテラをすぐそばにあったテーブルに置いて、ふたりに座るように手で促した。バオとニキアスが席につくと、その対面に眼鏡の女性が座った。

 木製の椅子に座ったニキアスは気になっていたことを聞こうとバオに声をかけた。しかしそれは、まずは彼女と話がしたい、と後回しにされてしまった。


「あのー、それで、ご用件は?」


「まあまあ、そう先を急がないでほしいな。私はバオ、こっちはニキアス。君は?」


「……イザベルです」


 あまり言いたくなさそうに彼女は自分の名を口にした。


「イザベルか、よろしく。ところでここは孤児院だそうだが、長いのかな」


「いえ、その、申し訳ないのですが、よろしくする義理はありません。それと質問についてですが、ここはそれなりに続いています」


 おどおどしたような話し方に反して、言葉の内容は明確に否定的な反応を示している。当然と言えば当然だが、いや、ここで親切さを見せていたら逆におかしいのかもしれない。手が出ていないのは力尽くをやめろと言った手前、それができないだけの話とも取れる。とても簡単にまとめるなら、ふたりは歓迎されていなかった。

 仲良くする気はないと言われ、質問にはどうとでも取れる答えを返され、取り付く島はないらしい。これでは本題に入らざるを得なくなってしまう。どうにか態度を軟化させようというバオの企みは失敗に終わったようだった。机の上に無造作に置かれた自分の花束を一瞥してから正面に座るイザベルへと視線を移した。


「わかったよ、じゃあさっさと話を進めようか。さっきまでここで会議をやってただろう。その中身」


 言った途端にイザベルの目が鋭くなった。先ほどまでの緩い雰囲気を忘れてしまったのかと思えるほどの変容ぶりだ。話題には気を付けろ、などというレベルではない。それ以上を口にするな、と圧力を発している。押しのけられるようなものではなくて、その場に留まれと命令されているような上からの圧力。重さを感じるわけではなく、動こうとするとそれにだけ反応して強烈に抑え込まれるような種類の圧力だ。ニキアスが受け取ったことのない種類のもの。しかし何かすさまじい状況を経験していることを確信させる力だ。まさかいきなりケンカを始めないだろうなと彼がバオに視線を送ると続きが始まった。


「……については気にしない。私たちが知りたいのはこの場を仕切る存在だ。場所を貸して、取りまとめているやつがいるだろう。まずはそれが知りたい。そしたら次はできればそいつと話したい」


「あの、ずいぶんと要求が多いようですが。そもそもあなたの話の根拠は?」


「根拠? 私たちがここにいることに驚いた人間のセリフじゃないな、イザベル」


 イザベルは黙り込んだ。バオの言葉に反論が思いつかないのだろうが、それを隣で聞いているニキアスにはその理由がわからない。彼にとって自分たちがここにいるのは結果であって、そのことを根拠にするのはニキアスにはできそうもなかった。まさかここにいるからここにいるのだ、などという哲学なる不思議なものを持ち出すわけにもいかない。口を挟めないからだろう、ニキアスはつまらなさそうに背もたれに身を預けた。ぎ、と軽く軋んだ音がした。


「先に言っておこうか、イザベル。私は脅しちゃえとかそういうつもりはないんだ。どちらかと言えば協力の提案をしに来たんだよ」


「状況はお見えです? その、ちっとも笑えませんけれど」


「正論。だからまず話を聞いてくれない?」


 固い表情を崩さないままのイザベルと、絶えず微妙に表情を動かすバオのふたりがテーブルを挟んで向かい合っているのはどうにも場違いな感じがあった。テーブルを真ん中で切って、それぞれ別の人物を相手にさせたほうがぴったりくるだろう。

 黙ったままの彼女の反応を是と取ったのか、バオは自分の話を始めた。


「まず、私はここに孤児院以外の側面があると踏んでいる。おそらくは組織的なものなんじゃないかな。しかし私はその組織については興味がない」


 興味がない、の部分に強弱さえつけずにさらっと流してしまったあたり、バオにはまったく意味のない要素であることが窺えた。一般にはウワサ程度、それは確証がないから情報として扱えないものという意味だ、にしか捉えられていないものの決定的な証拠を捕まえたというのに、どうやら交渉にすら使わないらしい。


「ただその役割は重要だ。簡単に言えばギルドひしめくこの街の運営。規模の大きい街だからね、統治者の存在がなくとも維持は義務に近くさえある。そしてそれを壊す気なんてひとつもない。私たちはこの街に住むつもりだから、そこはぜひ知っておいてもらいたい」


「えーと、話がまったく見えませんね」


「せっかちさんなのかな、まあわからなくもないけれど。さて我々としてはこれから住む街だから良い街であってほしい。そこでそのお手伝いができればいいと考えた。この街のギルドを統括する組織のトップが個人的に秘密裏に動かせる人材がいればそれはさぞ有用だろうと思ってね」


 興が乗ったのかバオはいつもよりも雄弁だった。どこか作り物めいた、台本でも読んでいるのかと思いたくなるような語り口には、あいだに口を挟ませない一種の閉じた完全性のようなものがあった。

 少しの沈黙はイザベルに思考と発言を促す時間だった。しかしおそらく彼女の頭の中では前向きな対応というよりは、どうすればより被害を抑えられるかといった方向に考えが進んでいるはずだった。そしてそれが自然だった。余裕が消え去った。


「……あなた、バオでしたか、私を相手に話し過ぎでは?」


「いいや? そうは思ってないけど」


「どう見ても私は重要な立場にある年齢ではないでしょう」


「ははは! 自分が若いから、だって? なかなか聞かない言い訳だなあ。面白い。そのうえ無意味だ」


 愉快そうに笑うバオにイザベルはさらに態度を固くした。


「何が仰りたいのですか」


「まず優秀であることに年齢は無関係だ。老いも若きも優秀なやつは優秀だし、その逆も然り。だから言い逃れとして成り立ってない。そしてイザベル、どう見ても君は重要な立場にあるよ。どれだけ低く見積もっても上から三番目くらいの位置だ。もしそれより低いんだったらヤバいよ、この組織」


「どうして?」


 ひとりで理解してひとりで話を進めていく彼女についていけずに思わずニキアスが疑問を呈した。置いてけぼりなら彼がここにいる理由はない。交渉役でないことはわかっているが、しかし中心的な関係者ではある。ただただ腕を振るうだけの存在になってしまうほど世の中に絶望しているわけではないし、目の前のやり取りを聞いただけですべて理解できるほどの賢者でもない。

 声をかけられて不意を打たれたようにニキアスのほうを向いて、バオはにっこりと笑んだ。いつものわずかに下品さの混じったものとはすこし違っていた。


「どうして、というのは彼女の地位が高いことに対してかな?」


「それもそうだし、イザベルさんの地位が低いとヤバいってのもわからない」


「よろしい。まず、彼女が組織において重要なポジションにあるのは簡単なことだ。さっきまで行われていた会議に出席していたと思われるから、だよ。街の運営なんて大きな話をするんだ、トップが出てくるのは自然だろう?」


「自然って言うけど、俺はそこからわかってない」


「これは単にメンツの問題だね。ギルドの長たち相手に格下を出してごらん、みんなナメられたって怒り出すだろう。だから普通に考えるなら一番エラい人が出てくる。もしくは前から助手とかをやってて誰からも不満が出ない人ならその下でもアリだ」


「……その助手にも格が求められるってこと?」


 満足そうに頷いて、バオは次に行こうか、と話を続けた。


「今の話とも連動するんだけど、イザベルの立場が低かった場合は統括組織が総出で取り掛からないといけない問題が発生していることが想定される。そうでないのならその組織がギルドに対して支配的な立場を築いているかのどちらかかな」


「ヤバいの意味合い全然違くない?」


「それは複数の意味を持ってしまった言葉そのものに文句を言うしかないな」


 自分に非などまったくないとばかりにからからと笑う。しかしニキアスに向けたそんな時間はすぐに終わって、彼女はまたイザベルに向き直った。ニキアスはまったく気付いていなかったが、体の向きこそ違っていたものの、いまバオが話した内容は、明らかに彼女をターゲットに語られたものでもあった。バオがどういった推測に基づいて彼女の立場を定めたのかの大筋が説明されている。イザベルにとって厄介だったのが、二人の問答に割り込む理由がないことだった。それは違う、とやり取りを遮ってしまえば痛いところを突かれたと告白するのと変わりない。どこまで考えてやっているのかはわからないが、ニキアスとの会話になって以降、バオは断定の言葉を使っていない。

 その内心の歯噛みを察したのかどうだかわからないが、流れるように問いに答え続けたバオは小休止とばかりに余裕をもってイザベルに視線を送っている。そして見せつけるように、ふう、とひとつ息をついてまた舌を回し始めた。


「というわけで提案だ。我々を雇ってくれないか、イザベル」


 彼女がすぐに返答できなかったのは当然だ。よろしくと握手を求めるには心情的に難しいものがあったし、断ればどうなったものか知れたものではない。もしかしたらこの場で暴れるかもしれない。孤児院の別の側面について吹聴するのかもしれない。わがままが許されるのならイザベルはいますぐベッドに飛び込んで趣味の悪い夢ということにしてしまいたかったが、残念ながら現実だった。

 たっぷり五分は黙って考えて、やっとイザベラは口を開いた。その五分のあいだ、闖入者である彼らは落ち着き払っていた。やけに背の高い女はすっかり身を後ろに倒していたし、いまひとつ立場のわからない少年は机の上に手を出してそれを眺めていた。どちらがここの住人なのかわからなくなるほどだった。


「……私個人を相手に話をしていると考えてよろしいですか」


「それが最善だと考えてる」


「いいでしょう。あなたたちを私直属の部下とします」


 バオにもニキアスにも彼女の思考の過程はもちろんわからないが、提案が通ったかたちになった。案外為せば成るもので、まずはふたりの目標が達成された。

 肩の荷が下りて表情が一気に緩んだニキアスと違って、バオはまだ話の続きがある顔をしていた。目はまだイザベルをしっかりと捉えている。それを見てニキアスはどきりとした表情を浮かべた。効果のほどは定かではないが、気付かれないように顔と姿勢を引き締める。


「じゃあ条件の話をしよう。あ、悪いけど敬語とかそういうのは期待しないでくれ」


「ではまず最低ラインの話ですが、私の許可がない状態で我々の話をしないこと。これを破れば即刻クビです。指名手配まで考慮してください」


「いいよ。でも例外的にやむを得ない状況だってあるよね?」


「その判断の権限がない、という意味です」


 ボールを投げたら壁に当たってそのまま返ってきたような反応だった。ぴしゃりと余地を潰してくる。立場の違いを強調する意味もあるのかもしれない。この言い方を延長して考えると、どうやら彼女が想定しているのは飼い犬と飼い主の関係らしい。判断の権限がない、とはそういう意味だ。しかも何度でも使える。

 そんな冷たい意味の説明を受けてもバオは穏やかな表情のままだった。


「わかった。まあ妥当だものな。いいよ、好き勝手にやらない」


「他にも我々の不利益につながる行為はすべて禁じられます。それと報告義務。些細であれ異変があれば私に報告を。隠し事はこれも許されません」


「従おう。私もニキアスもあなたのために働くよ。それとそちらの条件は後出しのかたちになっても構わない。どうせ一度に言えるものじゃないだろうし」


「バオ、それはダメじゃないの? なんでもアリになる」


「たぶんならないよ。変な条件はどこかで矛盾を生む。大前提として私たちの役割はこの孤児院、というかイザベルの役に立つことだ。それを念頭に置くと意外と厳しい条件はつけにくいものなんだよ」


 はあ、とため息が聞こえて、その出所はイザベルだった。控えめに見ても厄介ごとを抱え込んだようで、すこし体が縮んだような気さえする。眼鏡の奥の目は机の上の手元に送られている。ニキアスは腕を組んで視線を外した。バオの言ったことをまずは自分で考えてみるつもりなのかもしれない。

 こつこつと指が机を叩く。リズムは一定ではない。それはまるである種の鳥が海に潜って魚を獲るように長く短く間隔は揺れて、そのことが逆に彼女の集中を強調しているようだった。余計な音が何もないせいで、粒立って聞こえる。


「そちらの要求は?」


「雇われるんだから給料をもらうのは当然としてだ、家があれば、と思ってるんだ。いつまでも宿暮らしというわけにもいかない」


「宿暮らし、ですか」


「宿代を払ってくれるならそれでも構わないよ」


「却下です。余計な出費になります」


 どこか嚙み合わない感じのする会話だった。おそらくバオが軽い冗談で言葉を投げたのに対して、イザベルが実際の問題への対応として真面目に返答したからだろう。ニキアスはこのやり取りに笑っていいのか、それとも聞き流したほうがいいのかがわからなかった。大人の会話にはときおりこういう判断に困るものがある。おそらくはこれでも程度で言えば軽いものなのだが、ニキアスにはわからない。苦手だった。


「……とりあえず心当たりがあります。その件については明日に」


「いいよ、時間は?」


「日の出ているあいだであればいつでも」


 それを聞くとバオはニキアスのほうを振り向いた。それでいいかい、と目で問いかけている。明日の予定なんて何もない。予定とされるものはいまここにいることで解決されている。ニキアスは迷わずうなすいた。


「じゃあ一休みしたらまた来るよ」


「あ、あの、あなたたち何者なんですか。ここまでたどり着くし半ば脅迫するし」


 先ほどまでの毅然とした態度が突然にすっかり消えて、扉を開けたばかりのころのゆるっとした雰囲気と言葉遣いに戻っている。大事な話は終わったと考えたのか、あるいは別の理由があるのかはわからない。すくなくともこちらのほうが日常的に会話をするのなら相手をしやすいと思う人が多いだろう。


「何者、と言われてもね。流れ者だよ」


「来たばっかりでいったいどうやってこの孤児院にたどり着くんですか……」


「それについては話さないほうがお互いのためだと思う」


「まあ、その、深くは聞きませんけど……」


 バオとニキアスは孤児院を後にした。


 太い街路に枝のように道が生えて、そのせいで風が不思議な渦の巻き方をした。やけに強く吹いたかと思えば、二歩先ではすっかり風が止んだ。そんな帰り道を歩いて背にした孤児院から明かりがきっと消えたころ、はっと何かを思い出したようにニキアスが口を開いた。


「ねえ、さっきあそこに入ったばっかのとき、実力行使だけはやめてって言われて、なんでいい傾向だって思ったの?」


「ん、ああ、そうだったね。話が早いと思ったからさ」


 人差し指を立てて、これは説明だ、とポーズで示す。ニキアスの身長はまだバオの肩をすこし超えるくらいしかないせいで、わずかだが見上げないとその人差し指を見ることができない。

 そして彼女のその言葉はわかりやすく説明不足だった。これでわかるのなら先ほどの交渉もだいたいは理解できただろう。しかしニキアスにはそんなことはできない。こう返すしかなかった。


「もう少しわかるように説明してくれない?」


「つまり、イザベルは何も言わなくても状況の把握ができていたんだよ。私たちがあの場にいたということは見張りが突破されたということであり、そんな連中が二人も目の前にいる。これが彼女の理解だ」


「ええ、じゃあ俺もいるだけで脅迫になってるじゃん」


「そうだね」


 花束が大事なのだと言っていたわりには、彼女はそれをあまり大事に抱えない。歩くときに何も持っていなければ手を下げるように、多くの場合彼女の手の先で花束は下を向いていた。

 ニキアスはそんな花束をちらっと見て、何も気に留めない彼女を変なひとだと思った。関心の置きどころ、興味の対象、価値観、そういったものが自分とはずいぶんと違う。そんなふうに思った。


「俺たち、イザベルさんにしばらく怖がられるのかな」


「初めはそうかもしれない。でもいずれ信頼してもらえるさ」


「バオってけっこう楽観的だよね」


 すぐに何らかの返しがあると思っていたニキアスは、バオが複雑そうな顔をしたのを見て驚いた。軽口をたたくのが大好きな彼女にこれしきでダメージが入るとは思えなかったし、仮に痛いところだったのだとしてもすぐ立ち直るはずだからだ。彼女は相変わらず花束を雑に握って歩きながら、すこし空を見上げて考えた。


「どうだろう、難しいね」



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