第21話 氷クジラがとける時


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)



土の中で、泣虫ドラゴンの【たましい】は、

オレンジ色に輝くモグラの姿に変わり、掘り続けました。


途方もない闇の中を、ひたすら掘り続けるなんて、

それはもう、何度もくじけそうになりました。


弱音だって、10万回は、吐きました。

それでも泣虫ドラゴンは、掘るのをやめませんでした。


泣虫ドラゴンは、世界で一番忍耐強いドラゴンだったのかもしれませんね。

そして、とうとう、根気よく掘り続けているうちに、

地底のマグマまで、たどり着くことができました。


きっと、君の応援がなかったら、泣虫ドラゴンは、くじけてしまったかもしれません。


泣虫ドラゴンは、オレンジ色に輝くモグラの姿で、

その輝きが見えなくなるほど、泥まみれになりながら、

果てしなく続いていた土の壁を突き抜けました。


崩れ落ちていく土と一緒に泣虫ドラゴンは宙に放り出されると、

落下していくその先には、広大な赤い海が見えて、

凄まじい熱気が、立ち昇っていました。


落ちていくスピードに目がマワリ、気を失いかけた泣虫ドラゴンは、

最後に一声鳴きました。


「ジョルディ~ル」


気がついた時、泣虫ドラゴンは、湖の岸辺にいました。


そして、目にしたものは、朝焼けに染まった湖が、溶けていく光景でした。


氷クジラの先生も、シャーベットみたいに溶けてしまうと、

代わりに湖を泳いでひょっこり現れたのは、

一頭の背が高くて、逆三角形のゴリラでした。


ゴリラは、岸に上がると、泣虫ドラゴンの前にやってきました。


『泣虫ドラゴンよ。本当によく頑張ったな。

今まで誰も身につけることができなかった地の響きを、

お前は、ものにしたんだ。胸を張るがいい。

私は長い間、キリマの呪文で氷の湖から出られぬ氷クジラとして、生きてきた。

いつか私を解放してくれる者が現れることを信じて』


ゴリラの目に、涙が浮かびました。


『泣虫ドラゴンよ。さあ、いけ!

最後の試練に挑むんだ。これだけは、忘れずにおくがいい。

お前は、もう、全部(すべて)を持っている。さらばだ! 』


ゴリラに戻った先生は、ウッホッホッと、ドラミングしながら、

泣虫ドラゴンを見送ってくれました。


泣虫ドラゴンは、最後の試練に向けて、山を登りはじめました。



太陽は、ちょうど泣虫ドラゴンの鼻先を、越えて行こうとしていました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る