第6話 森の中へ

主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)




「お前のしたことは許さぬぞ、泣き虫ドラゴン。

お前はカバをだました。そして、ワシを裏切った。

もう友達なんかじゃない。お前はこの土地から出て行くんだ。二度と戻ってきてはならぬ。百獣の王の名にかけて、お前を追放する!」


ライオンは泣き虫ドラゴンのシッポを踏みつけたまま、そう言うと、

満月に向かって、遠く吼(ほ)えました。

そして、高らかに跳躍すると、勇ましい足音と共に、月明かりの向こうに、消えて行きました。


残された泣き虫ドラゴンは、とぼとぼと、サバンナを引き返しはじめました。

もう、この沼では、暮らせなくなってしまったのです。

夜が明ける前に、ここから離れて、できるだけ遠くへ行かなければなりません。

ライオンに見つかったら、きっと、食べられてしまうでしょう。


泣き虫ドラゴンは、東に向かって、飛び立ちました。

夜が明ける頃、泣き虫ドラゴンは、とうとうサバンナの東のはずれに着きました。


そこから東へは、果てのない深い森が続いています。

そして、森の奥深くには、真っ白な雪をかぶった大きな山があり、

その山の頂きが、雲の中まで、伸びていました。


泣き虫ドラゴンは、森の中へ、入って行きました。


辺り一面には、見知らない背の高い草が生えていて、

泣き虫ドラゴンの鼻を、しきりにくすぐります。

泣き虫ドラゴンは、こらえきれずに、思わず、


「ジョルディ~ル」


と、鳴きました。


すると、突然、頭の上を覆う、木の枝が揺れ出しました。


泣き虫ドラゴンが見上げて見ると、

三匹の猿たちが枝にぶらさがって、体を揺らしています。


「なんだ、コイツは」


「何しに来たんだ」


「危険だよ。早く追い出そう!」


猿たちは、しきりに声をあげます。


「待って、僕は泣き虫ドラゴン。僕は住めそうな沼を探しているだけなんだ。

決して、危険なんかじゃないよ。この声に誓って」


「ジョルディール。ジョルディール」


それを聞くと、猿たちは、不思議と信じてみようという気持ちになりました。


木の上で、何やら相談が始まりました。


泣き虫ドラゴンが、三匹目のハチを口にくわえて飲み込んだ時、

木の上からサルの声が聞こえました。


「泣き虫ドラゴン。この森は、果てしなく深いよ。

このまま行けば、たちまち迷ってしまう。だから、森の精キリマに会うといいよ」



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