第26話 うーん、重たいです
主人公=泣き虫ドラゴン
(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)
泣き虫ドラゴンの歌声は、風に乗って空を飛び、キリマ山をめぐって、
木々を伝って森を越え、水に流れて、遠くサバンナの果てまで、響き渡りました。
「ジョルディ~ル」
不思議なことに、今まで一度も、晴れたことのなかったキリマ山の頂きに、
雲間から、太陽の光が射し込みました。
そうして、厚く覆われていた雲が、切れ切れに散らばり、
やがて、空に透けて、見えなくなりました。
見渡す限りの青空の中に、太陽がまぶしいほど輝いています。
そして、とうとう、氷ついた精霊キリマが、溶けはじめました。
泣き虫ドラゴンは、キリマの体がすっかり溶け終わるまで、待ちました。
待っている間に、泣き虫ドラゴンは、いつの間にか、眠ってしまいました。
どれくらい時が過ぎたことでしょう。
泣き虫ドラゴンが目を覚ますと、一匹の光り輝くチーターが、
泣き虫ドラゴンのお腹の上にのっているではありませんか。
「もしもし、キリマさん。どうしてわたしのお腹の上にのっているんですか?」
「どうして? お前が気に入ると思ってね。お気に召さなかったかね」
「う~ん。おもたいです」
「やれやれ、これくらいで何だ。お前は、空と大地の響きを手にいれた。
それはつまり、空の精霊、大地の精霊、その他あらゆる精霊の力をあやつることができるということじゃ。お前はもう、ただの泣き虫ドラゴンではないのだぞ」
「わたしは、泣き虫ドラゴンです」
「まあ、お前のそんな普通なところが、ワシは好きだがな」
そう言うと、キリマは、泣き虫ドラゴンのお腹からひょいと飛び降りました。
そして、泣き虫ドラゴンに背をむけたまま、言いました。
「そうそう、泣き虫ドラゴンよ。住みたい沼なら、今のお前さんなら、すぐに見つけられるさ。心配せんでも良い。ワシは、もうゆくぞ」
キリマがそう言い終えた時、
不意にキリマの体が神々しいほどに輝きを増しました。
泣き虫ドラゴンは、まぶしくて、前を見ることができませんでした。
しばらくすると、その輝きが、だんだんと小さくなっていきました。
そして、もうどこにも、キリマの姿は見あたりませんでした。
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