第28話 友の目覚め


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)



泣き虫ドラゴンは、三日三晩、飛び続けました。

背中の翼は、石のように硬くなり、やがて、しびれてきました。


こんな風に、ただ、ひたすら、身を粉にして、突き進んで行く。……

世界中どこを探しても、そんなドラゴンは、見あたらないでしょう。

そう、泣き虫ドラゴンをのぞいては。


でも、泣き虫ドラゴンが何か特別な存在なのではありません。

泣き虫ドラゴンは、きっと、自分に価値あるものを、

探し当てることが得意なだけなんです。


泣き虫ドラゴンは、ついに、ライオンさんを探し当てました。


それは、満月の夜でした。


お腹を膨らませたバオバブの木が、月明かりに照らされて、

草原の上に浮かんで見えました。


泣き虫ドラゴンは、近づいていき、

木の下で倒れているライオンさんに声をかけました。何度も何度も。


ライオンは、どんなに呼んでも、返事をしてくれませんでした。

遅すぎたのでしょうか。


泣き虫ドラゴンは、あふれてくる涙を、こらえられませんでした。


「ジョルディ~ル。ジョルディール」


泣き虫ドラゴンは、鳴き続けました。


かつて、カバさんが死んでしまったときのように、

泣き虫ドラゴンの鳴き声は、サバンナ中に、響き渡りました。



~月明かりに浮かぶ


君の面影


ここに君はもう


いないんだね



鳴き声は、いつしか、泣き虫ドラゴンの歌声に変わりました。




~どこへ行ったのだろう


君への気持ちが


あふれてくる


君に会いたくて


ここまできたんだよ


失うためじゃあ


ないんだ




~願わくばせめて


君にこの美しい


月明かりの時間を



泣き虫ドラゴンの歌は、月明かりに照らされたバオバブの木を、揺さぶりました。

信じられない光景でした。あの太いバオバブの木がゴンゴン首を振るんですから。



~分かち合いたいんだ


バオバブの木の下で


月明かりに照らされて


尽きぬ歌を


君に聞かせたいんだ………




「なんだか、いい歌だよな……」


バオバブの木の下から、声が聞こえました。


泣き虫ドラゴンは、目を見張りました。


ライオンが首を持ち上げて、

泣虫ドラゴンを見ているではありませんか。




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