第17話 シッポがモノを言う時


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)



氷クジラは、湖の底をゆっくりとマワリはじめました。


大きな円を描いたかと思うと、その内側へつむじを描くように、

円を縮めて行きます。そして、円の中心まで来た時、ぐんと勢い良く上昇して、

湖面の上に飛び上がりました。


その拍子に、ズシンと地響きが鳴りました。


「よく見ているんだぞ、泣き虫ドラゴン」


そう言うと、氷クジラは、シッポを振り上げ、

湖面の氷に向かって、打ちつけはじめました。


『 たたん ・ とん


たん ・ ととん


たたむ ・ たや


たん ・ だん ・ だだん


たん ・ とん


たたん ・ とん ・ とん


ふ 』



吹き抜けてゆく風の音に、大地の鼓動に、耳を澄ませ。

樹や、草や、水や、土の香りを嗅いで。


大地の高鳴りや、その静けさを。

歓声や、悲鳴やその息吹きを。


ただ、ただ、味わうだけでいい。

全てを味わい、感じて。


さあ、泣き虫ドラゴン。

お前のシッポを打ち鳴らしてみろ!


産み出せ、リズムを。


葉のゆれるように。

鳥が飛ぶように。


インパラたちが走り抜ける足音、

ほら、聞こえるだろう。


俊敏なチーターが草原を飛ぶように駆ける姿、

ほら、見えるだろう。


川を渡る水牛たちの行進、水しぶきに、

ほら、頬濡らせ。


見つめてみろ。

真っ赤な太陽が沈む地平線を。


叫ぶのもいい。

ケモノの雄叫びを。


そして、シッポを、大地に、打ち鳴らせ。


アゴを、ハラを、

足を、全部を、


地面につけて、根を生やせ。



お前は、大きな樹だ。


お前は、大きなゾウだ。


お前は、輝く太陽だ。


お前は、大地そのものだ。



全部を呼吸して。



打ち鳴らせ、火をつけて。

水に濡らせ、シッポ振れ。


リズムを感じて。

さあ、やってみろ!



泣き虫ドラゴンは、湖の氷の上で

豪快にシッポを打ち鳴らす氷クジラをマネして、

岸辺の土の上で、シッポを振り上げ、鳴らしてみます。



『 てん てこ てん てん


てん すか てん


て てん とん


てん とん てん てん 』



そうだ、泣き虫ドラゴン。

感じるままに、打ち鳴らせ。


氷クジラは、シッポを振るのをやめ、

泣き虫ドラゴンのことを見守ります。



『 とん とん たった


てん た てん とん


とん すか てん てん 』



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