第18話 深く、モグラのように


主人公=泣き虫ドラゴン

(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)



君は、泣き虫ドラゴンが、

シッポを振ってリズムをとる姿を、想像できますか?


なかなか想像できないかも知れませんね。

何しろ泣き虫ドラゴンにとっても、これが初めての経験でした。


おやおや、ちょっと耳を澄ませてみて下さい。

泣き虫ドラゴンのシッポを打ち鳴らす音が、だんだんと大きく響いてきましたよ。


だいぶ様になってきたようです。

氷クジラの先生もシッポに大粒の汗を流しながら、大声を張り上げます。



『どん ダ!


ダダン どん ゴン!


バン ババン !


どん ダダ だだン!』



いいぞ、泣き虫ドラゴン! お前のシッポが火を噴いてきた。

その調子だ。波に乗れ、地を揺るがすリズムを刻め!


はじめは無我夢中でシッポを振っていた泣き虫ドラゴンでしたが、

今は、肩の力が抜けて、シッポを振るのが楽しくて仕方がありません。


不思議なことに、泣き虫ドラゴンの頭の上では、

流れ星が絶え間なく、流れはじめました。


星屑が散りばめられて白く明るい夜空に、

シッポ振る泣き虫ドラゴンのリズムが響く瞬間(とき)、

まるで、空という弦を奏でるように流れ星が飛び交います。


「ウムッ、空が共鳴している。

よし、お前のリズムは、空高く昇り切って、空をつかんだぞ。

今度は、地に潜れ。深く深く。モグラのように深く。もぐっていけ! 」


氷クジラ先生が、口から氷のツバを飛ばします。

泣き虫ドラゴンは、休みなく、シッポを振り続けました。

深くもぐっていくために。


実際にもぐっていくのは、本人ではなく、『たましい』なんだそうです。

それに、地の底までもぐっていくためには、

地響きするほど大きく地面を揺すらなければいけないそうです。

そう氷クジラの先生が教えてくれました。


泣き虫ドラゴンは、シッポに、ありったけの力を込めました。

風を切り、ムチのようにしなるシッポ。ズシン、という音が、辺りに響きます。


もう一回。


更に、一回。


地を這うような、地響きが、だんだんと大きくなっていきます。



『いいぞ、泣き虫ドラゴン。今度は、シッポに【タマシイ】をこめて打て。

そして、打った瞬間に、シッポからお前の【タマシイ】を解き放つんだ。

深く、深く、もぐらせろ! 』


氷クジラ先生は、興奮して、頭の氷を溶かしながら、叫びます。




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