第16話 地の響(リズム)
主人公=泣き虫ドラゴン
(アフリカで生まれて、サバンナで暮らす若いドラゴン)
「いま、歌っていたのは、誰だ? 」
クジラの大きな口が開きました。
「わたしです。泣き虫ドラゴンです」
「泣き虫ドラゴン? そうか、お前が泣き虫ドラゴン。
お前のことは、キリマから聞いているぞ。
その、泣き虫ドラゴンが、どうして、空の子守歌を知っているんだ? 」
「知りません。私は、ただ、内からあふれてくるメロディを口ずさんでみただけなんです」
「なんと!空の子守歌は、鳥獣たちの魂を安らかにする歌なのだ。
お前が歌えるとは、キリマの言うことも、あながち間違ってはいないな」
氷の姿をしたクジラは、頭から、氷の柱を吹き上げながら、
ハッハッハと、笑いました。
クジラの頭から飛び散る氷のシブキが、盛んに顔に当たるので、
泣き虫ドラゴンは三歩後ずさりました。
「さあて。泣き虫ドラゴンよ。ここを通ってキリマ山の頂上へ行くためには、
この湖の氷を溶かさなければならない。それが、決まりだ」
「こんな大きな湖の氷を、どうやったら、とかすことができるんです?」
泣き虫ドラゴンは、首を長くして、ため息をもらしました。
「なあに、地の響(リズム)を体得すれば簡単さ。
地の響は、地底深くのマグマを揺さぶり、氷を溶かしてくれるだろう。
さあて、レッスンタイムだ。夜明けまでには、ものにするんだぞ」
氷クジラの、有無を言わせぬ口ぶりに、
泣き虫ドラゴンは、なすすべもなく、地の響を学び始めることになりました。
夕陽は、いつの間にか、泣き虫ドラゴンの肩ごしをすり抜けて行き、
夜空には数えきれないほどの星たちが、あふれていました。
そんな夜空を見上げると、泣き虫ドラゴンの胸は高鳴りました。
氷クジラが、星空の下、悠々と氷の湖を泳いで、
泣き虫ドラゴンのそばにやってきました。
いよいよレッスンが始まります。
泣き虫ドラゴンは、氷クジラが、深く深く湖の底まで潜って行ったのを、
かたずを飲んで、見守りました。
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